【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ

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  数日後。



「では、行って参ります。」



「ソフィア、気を付けてね。今日は戻らなくていいからね。」



 シャーロットには、公爵より業務を言い付けられた、ということにして、業務時間途中に抜け、これからハロルドと共に商会へ行く予定だ。



 公爵は、あの後も「女の子一人だと危ないから!ねっ!」と、いつもの威厳を捨てソフィアにすがっていたが、ソフィアは(もう女の子という年齢でもないのだけれど。)と冷めた目で見ていた。

 大体、ソフィアは自分の買い物も一人で行っているのだ。ソフィアは内心うんざりしていたが、主の願いとなればどんなことでも受けなければならない。





「ソフィア!」


 ソフィアが使用人出入口に着くと、ハロルドが嬉そうに駆け寄ってきた。まるで忠犬のようだ、と一瞬思ったが、よく考えれば忠犬の皮を被った悪魔だ。ソフィアは、ハロルドをちらりと睨む。



「お疲れさま。行こうか。」


 ソフィアの睨みも、嬉そうに受け入れるハロルドは、歩き始める。公爵家が懇意にしている商会は、歩いて十五分ほどの所にある。今から十五分も、ハロルドと二人きりで歩くと思うと、ソフィアは気が重かった。また、何かアプローチしてくるだろうと、警戒を強めた。



「ソフィア。」


 ほら、きた。ソフィアはハロルドの出方を待った。




「お嬢様への贈り物、何が良いと思う。」



「え、ええと、そうですね。・・・装飾品は必要な際に随時購入しているので、それ以外が良いと思います。お嬢様は、最近公務も増えてきているので、万年筆などの文具は如何でしょう。」


 ソフィアは拍子抜けしながら答えた。



「ああ、それはいいね。上質な万年筆は、長い間使えるからね。お嬢様が長く使ってくだされば、公爵もお喜びになるだろう。」



 ソフィアは頷いた。王子妃候補は三名いるが、恐らくシャーロットで内定だろうと言われている。王子妃となれば、公爵ともなかなか会えなくなってしまう。そんな中で、父親から贈られた物と共に王宮に上がることが出来れば、シャーロットの心の支えになるだろう。



「後は・・・公務が増えてきているということは、お嬢様はお疲れではないかな。最近、流行しているリラクゼーションに関するものはどうだろう。」



「リラクゼーション、ですか。」


 ソフィアは、シャーロットの顔を思い浮かべた。王子妃候補らしく、いつも凛々しい顔で過ごしているシャーロットだが、自室では時折、疲れた顔をソフィアにだけ見せることが増えてきた。



「マッサージやヘアケア用の香油はあると思うけど、今はルームフレグランスと言って部屋を良い香りにして気分転換できるものもあるらしいよ。それに、ハンドクリームやボディクリームにも香りつきの物が増えているらしい。」



「そうですか。」


 ソフィアは、無表情のままだったが、少し驚いていた。

 ハロルドと買い物に行くのは不本意だったのは、巫山戯たアプローチをされたくないのもあるが、シャーロットの誕生日のことを大して考えていない相手と贈り物探しをしたくない、という理由もあった。


 ソフィアは公爵に命じられてから、シャーロットに何が喜ぶか色々と考え、リサーチしていた。しかし、ハロルドも同じように考えてくれていたとは思わなかったのだ。ハロルドの提案は、シャーロットを喜ばせたい思いが感じられた。



「良いと思います。」



「良かった。じゃあ、それにしよう。」


 ハロルドの笑顔を睨み付けなかったのは、随分と久しぶりだった。

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