【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ

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 シャーロットに贈る万年筆が無事決まり、ルームフレグランスもすぐ決まった。配達を依頼し、商会を出たソフィアとハロルドは公爵家に戻るだけになった・・・・・・筈だった。




「ソフィア。この前のミルフィーユが美味しいカフェ、ここからすぐ近くなんだ。行こう?」



「う・・・・・・。」



 今の今まで、ハロルドはそんな空気を出していなかったから、すっかり油断していた。それに、この前テイクアウトしてくれたミルフィーユは蕩けるほど美味しく、ハロルドの誘いに思わず心が揺れた。




「ソフィア、お腹空いているでしょう。」



「な・・・・・・貴方、もしかして。」


 商会にいる間は、シャーロットへの贈り物探しに集中していて気付いていなかったが、言われてみるとお腹が空いている。ソフィアは昼食のことを思い出し、眉間に皺を寄せた。というのも使用人は、交代で昼休憩を取る。今日のソフィアは、他の侍女が休憩を取ってから、後半の時間帯に休憩を取る予定になっていた。だが、侍女の一人が昼休憩に入る前に、急に公爵に呼ばれ、休憩を交代し早い時間帯に昼食を摂ったのだ。



「・・・・・・ハロルド、貴方、休憩時間が交代になるように仕組んだわね。」



 ハロルドは、首を傾げて惚けている。よくよく思い出すと、シャーロットだって「今日は戻らなくていい。」と繰り返していた。公爵だけでなく、シャーロットにまで協力依頼をしたということか。自分とカフェに行くために、主を動かし、休憩時間まで操作する同僚に、ほとほと呆れたが、空腹には抗えず、しぶしぶカフェに行くことにした。





◇◇◇◇





 嬉しそうに案内するハロルドに連れられてきたのは、落ち着いた雰囲気のカフェだった。スイーツ自慢のこのカフェは、入店するとすぐにふんわりと甘い香りに包まれた。



 まだ早い時間のため、客が少ないことにソフィアはホッとした。この美丈夫はどこに行っても女性の目を引く。そして隣にソフィアがいると、嫉妬の炎を燃やした眼差しで見られるのでうんざりするのだ。




「ソフィア。どれがいい?」


 ハロルドは、甘ったるい笑顔を浮かべながら、色とりどりのケーキが描かれたメニューを見せた。



「私は、ミルフィーユとアイスティーにします。」



「一つでいいの?」



 ソフィアは、返答に迷った。空腹でケーキなら三つくらいなら食べられそうなのだ。だが、三つどころか二つでも、異性の前で頼むのは流石に気が引ける。



「だ、大丈夫です。」



「そっか。じゃあ、注文するね。」



 ハロルドは店員を呼ぶと、ミルフィーユとアイスティーを二つずつ注文した。暫くすると、苺とカスタードクリームたっぷりのミルフィーユと、アイスティーがテーブルに並べられた。形を崩さないように、慎重にフォークを入れた。


「美味しい・・・・・・。」



 ソフィアの頬が緩む。それを見た、ハロルドもまた頬を緩めた。



 美味しいミルフィーユは、あっという間に無くなってしまう。ソフィアは満足しつつも名残惜しく感じていた。




「ソフィア。」


 手を付けられていない、ハロルドのミルフィーユが差し出される。



「貴方、一口も食べてないじゃない。」



「うん。ソフィアを見ているだけでお腹一杯になった。」



 何だか自分がすごく食いしん坊になったようで、恥ずかしくなる。だが、目の前に置かれたミルフィーユは、ソフィアを誘惑する。ソフィアは陥落してしまい、ハロルドのミルフィーユを自分の方へ寄せた。




「マスカットの時と言い、貴方といたら私、太ってしまうわ。豚さんになったらどうするの。」


 ミルフィーユで心が緩んでいたのだろう。冗談混じりでそう言ったソフィアに、ハロルドは美しく笑った。




「そしたら俺の家に来て。大切にするから。勿論、豚さんにならなくても、家に来て。死ぬまで愛するから。」




 なぜ自分は、この執着の激しい男に隙を与えたのだろう。ソフィアは、自分で自分が心底嫌になった。



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