【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ

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 カフェからの帰り道。ソフィアは以前からハロルドに聞こうと思っていたことを、思いきって尋ねた。



「・・・・・・ハロルドは、どうして私に声を掛けるのですか。」



「ソフィアが好きだからだよ。」



 いつも通りの綺麗な笑みを浮かべて、ハロルドは真っ直ぐ伝えてきた。いつものソフィアなら、ここで面倒になって話を切り上げてしまう。だが、今日はまだ帰り付くまで時間がある。正直ソフィアは、ハロルドの好意をあまり信じ切れてはいない。揶揄われている、それくらいの捉え方だ。好き、の言葉は流して、更に質問を重ねる。




「・・・・・・ご家族から結婚するように言われたりしません?」



「うーん、俺は三男だからね。好きにしていいって感じかな。」



「・・・・・・そうですか。ハロルドには結婚願望は無いのですか?」



「あるよ。」



 ソフィアは一筋の光を見つけ、目を光らせた。そんなソフィアを見て、ハロルドは笑みを溢した。



「ソフィアとの結婚願望だけ、ね。」



「む・・・・・・。」



 ソフィアの顰めっ面に、ハロルドは吹き出した。眉間に皺を寄せた顔すら、可愛らしい。ハロルドはソフィアの表情を楽しんだ後、ハロルドからソフィアに聞きたかったことを尋ねた。




「ソフィアは結婚願望って」

「ありません。」



 ソフィアは食い気味に答えた。




「どうして?」



「・・・・・・ハロルドも家の家系が美形揃いなのは知っているでしょう。」



「ああ。」



「それで幼い頃は、婚約話が相当来ていたんです。だけど、私が美形ではないと分かって顔を見ては断られて、悪態をつかれて。」



「・・・・・・。」



「それから、婚約とか、容姿のこととか、もう嫌になってしまったんです。」




「・・・・・・。」




「ハロルド?」


 つい話しすぎてしまっただろうか。ハロルドは立ち止まり、俯いて黙り込んでしまった。ソフィアが、ハロルドの顔を覗き込むとハロルドの顔が怒りで塗れていたーーーいつもの、薄汚いことをするハロルドよりも、ずっと恐ろしい表情だ。




「・・・・・・ハ、ハロルド?」



「・・・・・・せない。」


「へ?」




「許せない。ソフィアを傷付けたのは、どこの家の者ですか?全員教えてください。」


 いつもの落ち着いた口調とは違い、早口でソフィアに迫ってきた。



「ちょ、ちょっと、ハロルド、そんなこと聞いて、どうするのよ?」



「然るべき処置を施します。」



 ハロルドの処置、それは恐ろしい報復を意味する。当時、婚約話を持ってきた者は、ソフィアの家と関係が深い家も多い。どうにかこの冷徹執事を止めなければ。ソフィアは全身の血の気が引いた。




「ハロルド、もう当時のことは良いんです。傷付いてもいないです。」



「だって、そいつらのせいで、ソフィアは俺の言うことを信じてくれないじゃないか。俺は、ソフィアのこと、本当に可愛くて、好きだって!本当に思っているのに!」


 ソフィアは、ハロルドが声を荒げる様子を初めて見た。ハロルドは、仕事中は冷徹だし、ソフィアを口説いている時は甘い王子様のようだ。こんな風に感情的になることはなかった。





「ふふっ。」



 ソフィアは笑い声を漏らした。ハロルドは驚きの余り、怒りを忘れた。




「ハロルド、ありがとう。」



 ソフィアの容姿を手放しで褒めてくれたのは家族だけだった。ハロルドはいつも褒めてくれていたけれど、ずっと信じられなくて聞き流していた。


 だけど、今日のハロルドの叫びはソフィアの胸に響いた。ふわりと笑ったソフィアに、ハロルドは目を奪われていた。


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