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しおりを挟む(ああ、またか。)
ハロルドと買い物をした翌日。出勤するとすぐに他の侍女たちに取り囲まれたソフィアは、小さく息を吐いた。
「ソフィア、昨日ハロルド様と何をしていたのよ?」
「旦那様から頼まれたお使いに行っただけです。」
「何で貴女が行くのよ!」
「それは旦那様に聞いて下さい。」
ハロルドファンに絡まれるのは、五年前は日常茶飯事だった。ソフィアが、公爵へ相談してからはかなり数は減ったものの、それでも難癖を付けられることはたまにある。
「いいこと?次、旦那様にハロルド様との用事を頼まれたなら、私たちに回しなさいよ!」
ソフィアは心底うんざりした。公爵からの依頼を、勝手に他の侍女に頼むことなど無理だと、何故分からないのか。だが、それをそのまま伝えると火に油を注ぐことになると、ソフィアは経験上学んでいた。どう答えるべきか、迷っていた、その時。
「貴女達!下らないことしていないで、持ち場に着きなさい!」
後ろから侍女長がやってきて一喝すると、ソフィアを取り囲んでいた侍女たちは慌ててそれぞれの持ち場へと走り出した。
「侍女長……申し訳ありません。ありがとうございました。」
「貴女は悪くないでしょう。後お礼は私ではなくて。」
侍女長は後ろをちらりと見た。柱の陰に人がいる。
「ハロルド。」
仕事に行くのは少し話をしてからで良いわよ、と侍女長はソフィアの背中を押した。
◇◇◇◇
「ソフィア……ごめん。」
眉尻を下げたハロルドは、怒られた後の子犬のようにしょんぼりとしていた。
「慣れているから大丈夫ですよ。ハロルドが侍女長を?」
「ああ。本当は俺が助けたかったけど、俺が行くと余計ソフィアが絡まれると思って。」
確かにハロルドがあそこへ割って入っていけば、ソフィアはより彼女たちに恨まれただろう。ソフィアが頷き、ありがとう、と伝えるとハロルドは首を振った。
「俺のせいでソフィアが嫌な思いしているのに……ごめん。」
どんどんしおれていくハロルドを見ていると、ソフィアは何だか可笑しくて頬が緩んだ。どうして、絡まれていないハロルドがこれほど落ち込むのか。そしていつも冷静沈着なハロルドが、どんな風に侍女長に助けを求めたのか。想像すると笑ってしまう。
「ハロルド。」
ソフィアの目の前の子犬は、悲しそうな瞳でソフィアを見つめた。
「ミルフィーユで許します。」
ソフィアの目には、子犬がぶんぶんと尻尾を振るのが見えた。
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