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しおりを挟むハロルドから逃げ回る日々が一週間過ぎた頃。
「ねぇ。ソフィア?」
「はい。お嬢様。」
王子妃教育を終え、帰宅の途中、シャーロットの要望で行きつけのカフェに寄る。通常であれば、侍女は主と同じ席に着くことはあり得ないが、ソフィアを大事に思っているシャーロットがハワード公爵へ直談判し、ソフィアだけは許されていた。
「ソフィア、ミルフィーユが嫌いじゃなかったかしら?」
「……。お嬢様、申し訳ありません。実は……。」
ソフィアは以前ハロルドがシャーロットについた嘘をすっかり忘れてミルフィーユを注文してしまい、シャーロットが怪訝な顔をする。あれはハロルドがソフィアとカフェに行きたいがために、シャーロットへ嘘をついていたことをソフィアは説明した。
「まぁ!ハロルドはソフィアが大好きなのね。」
気まずそうにしているソフィアへ、可笑しそうにころころと笑うシャーロットが更に追い詰めてくる。
「ねぇ、ソフィアはハロルドのどんなところが好きなのかしら?」
「……ッ!コホッ、コホッ!」
大好きなミルフィーユをのどに詰まらせ、咳き込むソフィアに、シャーロットは謝りつつもソフィアの答えを期待しているようで瞳をキラキラさせてソフィアの言葉を待っている。
「お願い!聞かせてほしいの。」
「あまり……よく分かりませんが……。」
シャーロットは大きく頷きながら聞いている。
「先日、私の友人が婚約のお祝いパーティーを開いてくれたのですが、私の友人夫婦に愛想よくしてくれて……。」
「まぁ!あのハロルドが?」
「はい、頑張って交流してくれていました。」
「ソフィアはそれが嬉しかったのね。」
シャーロットの方が嬉しそうに相槌を打った。そう、馬車の中では失態を犯したが、ソフィアにとってはあの時のことが嬉しく、だからこそ馬車の中で上機嫌になっていたのかもしれない。
「え、ええ、そうなのかもしれません……。」
「ふふふ、良かった。」
顔を綻ばせるシャーロットを、ソフィアは不思議そうに見つめる。
「ソフィアがハロルドと婚約した時も聞いたけれど、やっぱり心配だったの。ハロルドは冷たいところがあるし……だけど、ソフィアには違うのね。仲が良さそうで安心したわ。」
「……っ、お嬢様、ありがとうございます。」
”仲が良さそう”という言葉に反応したソフィアだったが、流石に主の前では堪えた。ソフィアは先日の失態からハロルドに合わせる顔が無く未だに悩んでいた。
お知らせ:
新作『婚活写真、お撮りします。』
本日より公開しております。ライト文芸大賞エントリー中です。いつもと少し違うテイストになっておりますが、お読み頂けたら嬉しいです!
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