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しおりを挟む「ソフィア……今日何だか可笑しくない?」
ハロルドはソフィアが自分の部屋に訪れてからずっと抱いていた違和感をぶつけた。
「別に私はいつも通りです。」
「いや、何かあったでしょ?」
「……っ。」
ソフィアの脳裏に二人の主であるハワード公爵の顔が浮かぶ。ハロルドが職務中もソフィアへの想いを撒き散らしふわふわしているため困っているとソフィアに泣きついてきたことがそもそもの発端である。
「ほら、話してごらん。」
ハロルドの笑顔は、いつもソフィアに向けられる甘ったるいものでは無くて、獲物を逃さない獣のようだった。形勢逆転し、ソフィアは渋々公爵の話を伝えた。
「あいつ……。」
主の公爵へとは思えない言葉を吐く、その表情は恐ろしいものだった。ソフィアはハロルドが公爵へしょっちゅうそんな顔をしているので見慣れており怯むことは無いが……。
「だけど、旦那様のお話はただのきっかけに過ぎないのです。」
「うん?」
「え、っと……。」
珍しく言い淀むソフィアの顔を見て、ハロルドは目を見開いた。顔を赤く染め、目には薄っすら涙が溜まっている。こんな彼女の表情を見るのは初めてだった。
「ソフィア?」
「……ハロルドの婚約者になってから、ずっと落ち着かない想いでした。ハロルドがしてくれることが多すぎて、私はハロルドにしてあげられることは無かったからです。」
「それは……、ソフィアが誠実な人間だからだよ。」
ソフィアはふるふると頭を振った。
「初めは私も似たようなことを考えていました。私の性格上、貰い過ぎるのは申し訳なくなるのだと。だけど、最近は……いえ、もう随分前からそうでは無かったのです。」
ハロルドは自分の手に重ねられたソフィアの手が震えているのを感じた。
「……っ、ハロルドに何かしてあげたい時、私はハロルドに喜んでほしいと、笑った顔が見たいと考えているんです。」
「ソフィア。」
「ハロルドが私へ想ってくれている気持ちとは大きさも質も違うのかもしれません。ですが、私は……自分の気持ちはハロルドと同じものだと思っているのです。」
ハロルドは優しくソフィアを引き寄せ、抱き締めた。ソフィアは恐る恐るハロルドの背中に手を回すと、耳元でハロルドの笑う声が聞こえた。
「ハロルド?」
「ソフィアは固いな~と思って。そこがソフィアの良いところなんだけどね。」
「え?」
「こういう時にはね、大好きって言えばいいんだよ。」
「……っ!」
ソフィアはこれ以上無いくらい顔を真っ赤にし、ハロルドの胸に顔を埋めてしまう。消えてしまいそうなほど小さく囁かれたその言葉にハロルドは満面の笑みを浮かべた。それは、ソフィアがずっと見たいと望んでいた宝物のように輝く素敵な笑顔だった。
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