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しおりを挟む「姉さん。」
「イアン。時間を作ってくれてありがとう。」
ハロルドとソフィアは、ソフィアの弟イアンへ入籍の報告をするためにイアンの暮らす学園の寄宿舎までやって来た。両親へはまだ会えないが、弟へは報告に行きたいとソフィアが願ったのだ。
「姉さん、ハロルドさん。結婚おめでとうございます。」
「ありがとう。」
「父さんと母さんのことは気にしないでよ。俺に任せて。何かあればハロルドさんにも相談させてください。」
「勿論、こちらこそ相談させてほしい。」
「イアン……あなたに負担を掛けてごめんなさい。」
ソフィアはイアンに両親のことを丸投げしてしまう罪悪感から目を伏せた。元々、ソフィアの実家はイアンが継ぐことになっておりその為の教育は幼い頃から行われていた。そうだからと言ってソフィアが何も手伝わなくて良いと言う訳ではない。
「こんなこと負担でも何でもないよ。それに……子どもの頃、姉さんを守ってあげられなくてごめん。」
「そんな……。あの頃あなたはまだ小さかったんだし……。」
幼いソフィアが傷ついていた時、イアンもまた胸を痛めていたのだ。ソフィアはイアンに対して申し訳なさでいっぱいになるが、心のどこかでは幼い自分を心配してくれていた人が少なくとも一人はいたということに安堵していた。
「それでも、だよ。だから今出来ることはさせてよ。」
「ええ。イアン、ありがとう。」
それからイアンは、ハロルドとソフィアから新生活のことやハロルドの実家のことを聞いた。ハロルドがソフィアを溺愛していることは以前ばったり会った時から気付いていた。イアンがソフィアの弟で無ければ、命は無かっただろうと思えるほどハロルドはイアンに対して敵対心を剝き出しにしていたからだ。
だが、甘い雰囲気なのはハロルドだけではない。ハロルドへ微笑むソフィアの温かい穏やかな表情を見て、イアンはホッとしていた。幼い頃からずっと感情を抑えられてきた姉が、漸く心を許せる人ができたのだ。
「何か、当てられちゃうな~。」
「え?」
「ねぇ、ハロルドさん。姉さん。俺の婚約者が必要になったときは二人が探してほしいな。あの二人が探して来たら面倒だからさ。」
不思議そうに自分を見つめる新婚夫婦へ、イアンは快活に笑った。
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