やさしい異世界転移

みなと

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第2章 マジックフェスティバル

【75話】 ユウトVSクラック

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 ユウトとクラックが今出せる最大の力で対面をする。

 一方は灰色の刀を携えたユウト、もう一方は黒い鎧を纏い盾と剣を構えるクラック。

 先に動いたのはユウトだった。
 刀を構えてクラックに仕掛ける。
 それを防ぐためにクラックは盾で攻撃を防ぐ構えをとる。

 クラックの盾と俺の刀がぶつかる。
 だが次の瞬間には黒い盾が灰色の刀によって後ろへとクラックごと飛ばされていたのだ。

 後ろへと飛んでいったクラックに追い打ちをかけるために一歩踏み込む。
 クラックも読んでいたか、体制をすぐに立て直して黒い剣を振り下ろす。

 今度は刀と剣がぶつかり合い拮抗状態になる。
 拮抗している間にもクラックは再び盾で俺に殴りつけてこようとしてくる。

 一瞬、灰刀から右手を離した。
 そんな事をしたら、クラックの剣に力で潰されるだろう。
 けれど、ただ一瞬だけでいいのだ。

 自由になった手に魔力を集める。

「突風!」

 風の魔法をクラックに向けて放つ。
 放った魔法はクラックの腹部付近の鎧に当たる。

「ぐふっ……」

 予想してない攻撃にクラックの体制が崩れる。

 そこを狙って俺はクラックに攻撃を仕掛けに行った。

 攻撃して、攻撃されて、ダメージを与えては受けて反撃しては仕返されての一進一退の攻防が始まる。
 お互いに相手を倒す為の攻撃を仕掛け、2人の周りには強い衝撃波が生まれていたのだ。

 そんな中で観客達は

『ニャニャ!!すごい衝撃ニャ!吹き飛ばされないようにするだけで精一杯ニャ!』

『こ、これが互角の実力を持つ強者同士の戦いって訳ですね。』

 実況席にいた2人はユウト達の戦闘を見ながら実況をしている。
 ただユウト達の戦闘の衝撃波が観客席、実況席にと伝わってきており話すのが難しそうだ。

 一方観客席の方では多くの観客が戦闘の衝撃波により戦闘の観戦する事が出来ない人が多かった。
 実際まともに観戦出来る人物はかなりの実力者と限られており、観客席にいる騎士団関係者や個人で仕事を請け合っているプロそして審判用の通路にいてトハク達を拘束しているディーオンとチャーチス。

 そして……

 なんて戦いだよ……

 観客席にいたデイは2人の戦闘を見て自分の弱さに打ち拉がれる。
 昨日とはさらに強くなったユウト、それと同等に戦える2人の戦闘をデイはなんとか見ることしか出来なかったのだ。

 そんな時に

「凄い事になってるな」

 デイの横方向から声が聞こえてデイはその方向を向く。
 そこにいたのは……今日決勝戦であったバリオンであったのだ。
 彼は2人の戦闘を余裕そうな表情でデイの隣で観戦していたのだ。

「なんで……ここに……?」

 その言葉にバリオンはデイの方を向く。

「こっちの方はもう優勝したからな。一応こっちも見ておかないと」

 さも当然のように自分が優勝したと伝えるバリオン、服や顔には傷がついておらず苦戦せずに終わったのがうかがえる。

「そうですか……それにしても、凄い衝撃……こんなのが続いたら……」

 2人が出す衝撃に顔を隠しながら心配をする。こんなのが長時間続くとなると、一般人にも被害が出そうだったのだ。

 けれど

「いや……もう終わる」

 バリオンは2人の方に顔を向けながら冷静に言う。
 そして……次の瞬間、さっきまで続いていた衝撃波が一旦止み戦闘の状況が見えるようになっていた。

 2人の様子はというと、両者既に体中が傷だらけであり息も上がっていた。
 クラックを守っていた黒い鎧も全て剥がされており、生身の体が出ていたのだ。

 そして互いの魔力量はさっきと比べると低くなっていた。
 それでも両者は魔力を高めて攻撃の姿勢を取る。

 両者の残り魔力量、そして今出している魔力からして……これが最後の一撃になるだろう。
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