蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

文字の大きさ
10 / 67
第一部 王立宮廷大学を目指そう!

9. 兄アレクシオス・ルクサリス

しおりを挟む
 皆からないがしろにされていた私だったが、兄アレクシオスだけは誰よりも優しく、私を大切に扱ってくれた。
 ただ、大切にしすぎるあまり、私は兄に悩み事の相談ができなかった……。

――以前、このようなことがあった。

 ちょうど、義母からの教育が厳しくなり始めた頃、私は使用人たちから、小さな嫌がらせを受けていた。

 そう高くはないが、小物がいつの間にか無くなっていたり、入浴を終えると下着だけ準備がされていなかったり、朝に用意されていたタオルが、前日に使ったものであったりなど、嫌がらせとしては、些細なものではあった。

 しかし、それらも積み重なると、心の負担は大きくなっていく。

 ある日、魔物討伐から帰ってきた兄に、そのことで悩んでいると打ち明けてしまった。
 すると、兄はすぐさま立ち上がり、男性と女性の侍従長を呼び、屋敷にいる使用人全てを、ただちに大ホールに集めるように命じた。

 使用人たちは「いったい何事なのか?」という感じで、ざわついていたが、最後の使用人が揃ったところで、兄の演説が始まった。

ガッデーオー・トン・ーーーム!ディアヴォロン!
「この中に、我が愛するカテリーナの私物を盗んだ者がいるッ!」
「心当たりのある者は、一歩前に出よ!」

――えええーーーっ!
 カテリーナは、些細な嫌がらせが、今、まさに大事件に変化しようとしている事に驚いていた。

「……誰も前に出ないのか? 今、正直に前に出れば、軽い罪で許すッ!」

 集まった者たちは、皆一様に困惑の表情を浮かべながら、きょろきょろとお互いに周囲を見渡している。

 焦ったカテリーナは、慌てて兄に近寄った。
「ちょ、ちょ、ちょっと、お兄さま、そこまで大ごとにしないでくだしあぁくぁwせdrftgyふじこ!」

「……そうか、誰も前に出ないのだな」

 すると兄は、神聖魔法の詠唱を始めた。
「……心にやましき思いを持つ者よ、神の名の元に、その真実を明らかにせよ」

 ホールの中が、白い聖なる光に包まれていく。


「ビンタァー!」


 兄の掛け声と共に、バチンという大きな音が響き、数人の使用人が吹き飛んでいた。

――こ、こんな事に高レベルな神聖魔法を使ってしまうなんて……

 兄は、正義や導きの女神と呼ばれるユースティリア神を信仰する聖騎士で、同時に高位の神官でもある。
 母譲りの膨大な魔力量を持ち、その範疇にある自白の魔法は、得意中の得意だった。

「……副メイド長。本来、監督すべき地位でありながら、お前まで加担していたのだな!」

 吹き飛んだ者たちは、皆、顔面蒼白になっていた。

「皆に伝えておく! もし、カテリーナに嫌がらせをした者は、即刻解雇する! それだけでなく、もしそれがカテリーナの身体を傷つけるようなものであった場合には、絶対に容赦しない! 二度とこのような事をするなっ!」

 その後、嫌がらせを自白させられた5人の使用人は、即日解雇され、屋敷から追放された。

「もうこれで安心だよ、カテリーナ。お前は何も心配することは無いんだよ」
「あ、あ、ありがとうございまふ・・・」

 一連の顛末に、カテリーナ自身も顔面蒼白になっていた。
――ひぃぃぃぃ、お兄さま、やりすぎですぅぅぅ!

 ちらっと、使用人たちの方を見てみると、皆が一斉に目を背けた。
――あー、これで私は、恐怖の対象になったのね……

 心の優しいカテリーナは、嫌がらせをされたことよりも、むしろ使用人のことを心配していた。
 そんな性格ゆえに、「お兄さまにだけは、もう、いじめの相談は出来ないな……」とカテリーナは思うのだった。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 その後、これら一連の顛末は、実家の用事で不在だった義母カリスタたちにも伝えられた。

「……アレクシオスさまが屋敷に帰ってきているときは、控えるようにしなさい」

 カリスタのこの一言で、兄の滞在中は、カテリーナへの嫌がらせがピタリと止むようになった。
 義妹や義弟すらも、嫌みの言葉を発しなくなり、ただ睨みつけるだけになった。

 兄が帰ってきている日は、カテリーナにとって、心が休まる日となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~

きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。 しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。 地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。 晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...