蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

26. 刹那

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――今は、目の前の敵に集中しなきゃ!
 魔狼の雄叫びが、かえってカテリーナを戦闘へと集中させた。

 カテリーナは大きく息を吐き、目の前の敵の目をしっかりと見つめた。
 かつてのオドオドしていたカテリーナとは違い、そこには、剣士としてのカテリーナが存在していた。
 カテリーナは、普段の訓練のときと同じように、隙をうかがう構えを続けた。

 すると、魔狼は横に二回ステップし、威嚇をするという動作を何回か繰り返してきた。
 カテリーナもそれに合わせて、相手の動く方向に剣先を向ける。

 その動きが繰り返されたあと、魔狼は一回のステップの後に、突如、カテリーナの左足に向かって低い姿勢で突進してきた。
 カテリーナは咄嗟にジャンプをしてかわし、ギリギリの所で、魔狼の牙から左足首を守ることに成功した。

――フェイント!?
 わざわざ何度かステップを見せてから、突如、違うパターンで攻撃してきた!?
 しかも、今までは腕だった衛士たちへの攻撃と異なり、初めて足を狙ってきた。
 これは、油断できないわ!

 その動きは明らかに、通常の魔狼の動きとは違っていた。
 通常の魔狼は、狼が魔素により侵され、魔物と化した存在だ。
 そのため、基本的な動きは狼と同じで、そこに魔力による身体強化が上乗せされているだけのはずだった。

 しかし、今回のステップからの攻撃は、明らかに訓練された犬のような動きだった。
 この魔狼の動きにより、カテリーナの心に迷いが生じた。

――牽制の攻撃をすべき?
 いや、この敵は静から動の瞬発力が凄い。
 そこに合わせる方がいいわ!

 今までのカテリーナの練習量による成果が、初めての敵との戦いにも関わらず、より良い答えを導きだそうとしていた。

 魔狼も自らの攻撃がかわされたことで、カテリーナに対する警戒心が強くなった。
 不用意な攻撃はせず、距離を保ちながら、ゆっくりとカテリーナの周りを回る。
 お互いに攻撃を仕掛けない時間が、1分間続いていた。

 カテリーナは集中を欠かしてはいなかったが、その1分間の間に、兄と訓練をしていたときの様子を思い出していた。

「攻撃のときのすきはどのように見つけるのですか?」
「ほとんどの相手は、攻撃前に準備動作が入る。例えば剣を振り下ろす前に、一瞬剣を引く動作だね」

 アレクシオスは、構えた剣を一瞬引いてから、力を込めて振り下ろす動作を、スローモーションのようにゆっくりと見せた。

「この振り下ろしてきたときに、先にこちらの攻撃を当てて倒す。これをせんというんだ」
「なるほど、そのせんを取れるようにしていけばいいのですね!」

「いや、違う。剣士は、この一つ上のせんせんを目指すんだ」
せんせん?」

「そう、これこそが剣の奥義ともいうべき無敵の攻撃なんだ。相手の攻撃に合わせたカウンターではなく、相手が攻撃を仕掛けようとした刹那せつなに、こちらの攻撃で相手を倒す。これが、せんせんだよ」
「どうやったら、そんなことができるんですか?」

「相手の目と動きをよく見るんだ。経験を重ねていけば、それが分かるようになる。それは人間だけでなく、魔物も全て一緒なんだよ」

 カテリーナに命の危険が迫ったため、カテリーナの脳がその危機を回避するために、過去の記憶から対策を探し出したのかもしれなかった。

 魔狼の集中力と忍耐力が限界に近づいた頃、カテリーナは相手の目から、攻撃の「起こり」の瞬間を見抜いた。

――いまっ!
 
 勝負はほんの一瞬だった。
 攻撃を仕掛けようとする「起こり」の動きと同時に、カテリーナの突き出された剣が、魔狼の胸骨を通り抜け、心臓を貫いていた。

「キュウゥ……」
 小さな鳴き声とともに、魔狼の力がガクンと抜け、カテリーナの剣に重さがかかる。

 カテリーナは呆然としていた。
 剣にかかった重さから、相手を倒したことだけは分かった。
 ただ、あまりにもピタリと自分の攻撃が決まったことに、自分でも驚いていた。

「これが、せんせん……」

 あまりにも見事なタイミングでの突きで、まさに会心の一撃だった。
 魔狼は攻撃に入る前に、絶命したのだ。

――はっ!
 カテリーナは一瞬我に返った。

「みんなは無事なのっ?」

 カテリーナは、すぐさま仲間の衛士たちの元へ駆けつけていった。
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