蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

29. 支配魔法の使い手

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 神聖騎士団と神官の仕事を終え、アレクシオスが一週間ぶりに帰還した。

「お帰りなさいませ、お兄さま!」
「カテリーナ、無事だったのか! ケガはないか?」

「はい、私は大丈夫です。でも……衛士の方が一名、亡くなってしまいました」
「気にしてはいけないよ、カテリーナ。魔物との戦いは命がけだ。こういうことは、どうしても起こりうるのだから」

「でも、もし私が別の判断をしていれば……」
「……君まで命を落としていたかもしれない。それは『過信』というものだよ、カテリーナ」

「過信……ですか?」
「ああ。僕たちは未来が見えているわけじゃない。その時その場所で、今いる人間で、最善を尽くすしかない。カテリーナもそうしたのだろう?」

「けれど、亡くなった方が……」
「村を放置していたら、もっと多くの人が犠牲になっていたかもしれない」

――確かに、そうだった。
 あのとき、ニキタス村からの救援要請があったから、私は行動したのだった。

 カテリーナは、ふと考え込んでしまった。

「カテリーナは勇気を持って、今できることに全力を尽くした。実際、村の人々は君に感謝しているんだろう?」
「……はい、それはそうなのですが……」

「だったら、悪い結果ばかりを見つめず、良い結果にも目を向けよう。そうしなければ、これから誰かのために行動する勇気すら失ってしまうよ」

 悪い結果を恐れすぎると、次第に行動そのものが起こせなくなってしまう。
 カテリーナは、亡くなった衛士とその遺族のことばかりに思いを寄せていたが、今回の魔狼討伐で救われた人々の存在に、ようやく思い至ったのだった。

「……ありがとうございます、お兄さま!」

 兄の言葉に、カテリーナは救われたような気がした。
 涙をこぼしながら、張りつめていた気持ちが少しずつほどけていくのを感じていた。
 まだ十五歳のカテリーナにとって、自らの判断で誰かが命を落とすという現実は、重すぎるものだった。

「それで、魔狼のことだけど、様子を詳しく聞かせてくれるかな?」

 カテリーナは、魔狼に支配魔法の痕跡があったこと、戦い方があまりに知的であったことなど、細かく語っていった。

「魔狼の死骸は残っているかい?」
「はい。ただ、もうかなり腐敗が進んでいます……」

 アレクシオスはカテリーナたちと共に、魔狼の死骸が安置されている場所へと向かった。
 そこで彼は、支配魔法の痕跡をたどるため、神聖魔法を発動した。

「……神の御名の元、正義と倫理に基づき、この魔狼を操った者の証をお示しください」

 ――ブシューッ……

「……これは、やられたな。支配魔法の痕跡を消去する術式が組み込まれていたみたいだ。この魔法をかけた者、只者ただものではない」

「やはり、支配魔法が使われていたんですね?」
「ああ、それは確かだよ。ただし、これほどの術式を扱える者となると、候補はかなり限られてくる。犯人の絞り込みは、かえってしやすくなるかもしれない」

「心当たりが、あるのですか?」
「……まったく無いわけじゃない。ただ、支配魔法は地下ギルドなどの裏社会で発展してきた魔法だ。表に情報が出てくることはほとんどないんだ」

「そうなんですね……」
「うん。この件は、神聖騎士団としても調査を進めていくつもりだよ」

 アレクシオスには、ある人物の顔が脳裏に浮かんでいた。
 しかし、その人物の名を、アレクシオスが口にすることはなかった。
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