蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

33. 暴走する力

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 青白い光が瞬く間にキリロスの身体からだを包み、宝石も不気味に脈動し始めた。
 キリロスの身体がびくりと震え、次の瞬間、信じがたい速さで後方へ跳び退いた。

「な、何だ……今の……」
 使用人のひとりが、呟いた。

 キリロスの瞳からは焦点が失われ、まるで夢遊病者のような顔つきになっていた。
 青白い光が彼の体を包み、不自然なほど筋肉が盛り上がっていく。

「これは、身体強化魔法……!? いや、キリロスが唱えた魔法じゃない!」
 アレクシオスが険しい表情で声を漏らす。

 その瞬間、キリロスの姿が一瞬、かき消えた。

「――っ! カテリーナ、上だッ!」

 アレクシオスの叫びに、カテリーナは咄嗟に身を引いた。

――ドシンッ!

 わずかに髪をかすめて、キリロスの剣が地面に突き刺さっていた。
 その動きは、先ほどまでのキリロスとはまるで別人だった。
 ありえないほど速く、重い。
 そして、明確な殺意をはらんでいた。

「……これは、キリロスの意思じゃない!」

 カテリーナはそう確信し、剣を構える。

「キリロス、めろ――っ!」

 アレクシオスは審判のため、剣を持っていない。
 自らの身体をして止めようとしたが、ひらりとかわされてしまった。
 キリロスの目には、カテリーナしか映っていなかった。

――ビュン、ビュン、ビュン!

 キリロスは怒涛の連撃を仕掛けてきた。
 明らかに子供の域、いや、大人の域をも超えた速度と破壊力だった。
 常人であれば、一太刀でも致命傷を負いかねない攻撃の嵐。

 だが、カテリーナは冷静だった。

――シュッ、キィン、キン!

 鋭い突きを織り交ぜながら、鍛えられた体幹と柔軟性を活かしたさばきで、最小限の動きでキリロスの攻撃をかわしていく。

 キリロスの激しい攻撃とは対照的に、カテリーナの心は静かだった。
 焦りも恐怖も無い。
 ただ、冷静に攻撃を見極めていく。

「あれは、キリロスじゃない。暴走した力が、彼の身体からだを支配しているだけ。
 どんなに速くても、すきができるはず。落ち着いて……せんを取る」

 心の中で自らに言い聞かせながら、カテリーナはその機会をうかがっていた。

 キリロスの激しい攻撃が続く。
 カテリーナはその攻撃をかわしていく。
 そのやりとりは、練習試合のものではない。
 キリロスの攻撃は、明らかに殺意のこもったものだった。

 異様な姿、凄まじい速度、そして、圧倒的な力。
 それを目にした周囲の者たちは、声も出せず、ただ固唾を呑んで見守ることしかできなかった。

 一秒が永遠にも思える濃密な時間の中、わずかに均衡が崩れた。

――ガキィン!

 鋼がぶつかる音とともに、カテリーナの剣がキリロスの剣をわずかに弾いたのだ。

 その瞬間。

――今!

 カテリーナは半身で踏み込み、胸元にあるネックレスのチェーンを切り裂いた。
 空中でレックレスはバラバラとなり、宝石がキリロスの身体から離れていく。
 ふたりの身体が交差し、キリロスは全身から力が抜けたように崩れ落ちた。

――チャリン、チャリン……

 わずかに遅れて、地面に転がる宝石が音を立てた。
 その直後、ネックレスから外れた宝石は、一瞬だけ青く光を放った後、砕け散った。

「キリロス!!」
 アレクシオスが駆け寄る。

 キリロスは意識を失い、静かに地面に横たわっていた。
 あれほどの力を振るったとは思えないほど、ただの十一歳の少年に戻っていた。

「……終わった」
 カテリーナはそっと息を吐いた。

 使用人たちからは歓声が起こらなかった。
 誰もが、尋常ならざるこの出来事に、呆然としていたのだった。
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