蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

38. 団長会議

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 本日、王都では軍事、魔物討伐、治安維持に関する定例会議が開かれていた。
 各騎士団や魔導師団の団長が参加することから、通称「団長会議」と呼ばれていた。

 カリスティア王国において、騎士団や魔導師団の団長は将軍級の待遇を受け、それぞれ軍事・治安維持と魔法全般を管轄している。
 この会議では情報共有や防衛計画、魔物討伐の担当決定、方針の策定が行われていた。
 また、総騎士団長と総魔導師長が出席し、彼らは大臣を兼任しているため、事実上、国防や治安維持に関する重要な決定が下される場にもなっていた。

 今回の会議に出席した将軍級以上の者は以下の通りである。

・総騎士団長:コンスタンティオス・ストゥラトス

・近衛騎士団団長:ドメティオス・ティモクリアス

・神聖騎士団団長:テオファネス・シンケリノス

・炎の騎士団団長:アンドロマクス・フレガオン

・風の騎士団団長:フィロクラトス・エオリアス

・剣の騎士団団長:マルキアノス・ファレグス

・槍の騎士団団長:エウスタティオス・スティラクス

・盾の騎士団団長:オレスティス・フォロス

・総魔導師団長:リュカディオス・カリュグノス

・青の魔導師団団長:イオアニス・マントロス

・紫の魔導師団団長:ネオフィトス・エレウテリオス

 騎士団は全団が参加する一方、研究職としての役割も持つ魔導師団は一部の団長のみが出席することが多かった。

 会議は進み、最後に治安維持を担当する盾の騎士団の番が回ってきた。

「それでは、王都内の治安に関する懸念について報告いたします。ここ一ヶ月で、魔道具に支配された者による強盗・窃盗事件が二十件以上発生しました」
 盾の騎士団副団長パウロス・ケレティオンが口を開く。

「……支配魔法?」
 風の騎士団長フィロクラトス・エオリアスが低く呟いた。

「はい。支配魔法が付与された魔道具により、市民が突如犯行に及び、終了後には意識を失います。捕らえた者たちは例外なくその間の記憶を失っており、尋問も意味がありません」

 報告が終わると、会議室には静かなざわめきが広がった。

「盗まれた品の行方は?」
 剣の騎士団長マルキアノス・ファレグスが問う。

「運送担当の別の仲間に渡されておりました。その者たちも含め、犯罪に関わっている者たちが全員支配されていたため、残念ながら真犯人までたどり着けておりません」

「魔道具はどうなっていますか?」
 青の魔導師団団長イオアニス・マントロスが尋ねた。

 パウロスは、神聖騎士団のアレクシオスに目配せを行った。
 アレクシオスは立ち上がり、報告を始めた。
「その件につきましては、神聖騎士団が調査をしておりますので、私の方から報告させていただきます」

 皆の視線がアレクシオスに集中した。
「魔道具に付与された術式は非常に高度なものです。身体強化をした上で、本人を操り一定の行動を強制します。
 発動を終えたり魔道具が外されると、魔道具自体が破壊され、術式の痕跡までも消滅する仕組みになっています」

 団長たちの間から、「うーん」という低いうなり声が漏れる。

「……一般市民を踏み台にしているな。魔道具の入手経路はどうなっている?」
 槍の騎士団団長エウスタティオス・スティラクスが尋ねる。

「自由市場で安価で購入された宝石やネックレスなどが多いようです。中には道端に落ちていた指輪を拾った者などもおりました」

「肝心の魔道具も消滅してしまうとは……。何か予防策でもあれば良いのですが」
 紫の魔導師団団長ネオフィトス・エレウテリオスが渋い顔で呟いた。

「クソッ! 誰が持っているかもわからず、何に付与されているか分からず、いつ発動するかも分からなければ、事実上防げないではないかっ!」
 炎の騎士団長アンドロマクス・フレガオンが怒気を含んだ声をあげた。

「商人の抜き打ち検査は?」
 近衛騎士団団長ドメティオス・ティモクリアスが提案する。

「物理的に難しいでしょう。時間も検査できる人手も足りません。また、実際に販売していた商人を探したこともあったのですが、遺体となって見つかった例もありました」

 アレクシオスが答え、さらに場の空気が重くなる中、神聖騎士団団長テオファネス・シンケリノスが口を開いた。

「我らは術者に焦点を当てて捜査を進めています。これほど複雑な術式を施せる者は、我がカリスティア王国といえども限られています。そこで貴族など身分に関わらず、自白魔法を使う許可を、陛下にお願いしていただきたいのですが……」

 皆の視線が、総騎士団長コンスタンティオスと総魔導師長リュカディオスに集まった。

「分かった。陛下に上奏しよう」
「私もだ。二人でご裁可を仰ごう」

 自白魔法は貴族の権利侵害に抵触するため、正当な理由がない限り、むやみに使うことはできない。
 そのため、アレクシオスは事前にテオファネスらと根回しし、この場で許可を得る段取りを整えていたのである。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 会議が終わり、皆が退出した後、テオファネスとアレクシオスだけが残った。

「……出席者の中に怪しい者は?」
「いいえ、おりませんでした。ただ、完璧に隠している可能性は否定できません」

「あれほどの術式だ。残念なことだが、魔力に長けた貴族が関与している恐れがある」
「はい。小さな魔石に複雑な術式を何度も施すには、高度の教育を受けた者でなければ不可能です」

「ただ、かつて我が国に災厄をもたらした支配魔法が、地下ギルドでは伝承されているとの噂もある」
「陛下のご裁可が下り次第、自白魔法を駆使し、必ず犯人を見つけ出します!」

「これだけ高度な術式を扱える犯人が、単なる窃盗を目的としているとはとても思えん。……何かの実験か陽動だろうな」
「私も同感です」

「もし高官が操られれば、王国に危機が訪れる。皆に負担をかけるが、頼んだぞ」
「はい、お任せください!」

 会議室を後にし、帰路につく途中、アレクシオスは心の中で呟いていた。

――身内に関わる者がいなければ良いのだが……。

 アレクシオスは、頭の中で直感と反する思いが、何度も駆け巡っていた。
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