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第一部 王立宮廷大学を目指そう!
58. 受験者選抜トーナメント
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三日前、カリスティア王立宮廷大学の掲示板に、毎年恒例の受験生選抜トーナメントの参加資格者が発表された。
このトーナメントに参加できる者は、魔術師コースと騎士コースの実技試験において、それぞれ上位十六名となっている。
つまり、記述試験と面接試験で基準異常の点数を取れていれば、宮廷大学に合格するということになる。
そのため、掲示板に自分の受験番号が載っていた者は、名誉と安堵の両方から喜びに溢れるのだった。
カテリーナはドキドキしながら、掲示板を薄目からそっと見上げた。
そして自分の番号を見つけたとたん肩の力が抜けて、ホッと息をつき、胸をなでおろすのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ついに、受験者選抜トーナメント当日を迎えた。
「いよいよ最後だね。仕上がりも万全だし、自信を持って臨めば大丈夫だよ」
「はい!」
「では、行こうか」
カテリーナとアレクシオスたち一行は宿を出て、宮廷大学へと向かった。
カリスティア王立宮廷大学・受験生選抜者トーナメントの試合は、今や市民にとって年に一度の一大イベントとなっていた。
大学の周囲には市が立ち、多くの屋台が並び、たくさんの人々で賑わっている。
「ん? あれは何を売っているのかしら?」
「……カテリーナ、今日は試合に集中だよ」
「……あ! はい」
アレクシオスにたしなめられ、カテリーナは祭りへの興味を抑え、まっすぐ大学の門へと向かった。
門の前で兄たちと別れ、選抜者専用の入口へと進む。
担当者の指示に従い、受験票を水晶にかざして本人確認をしたのちに、少し離れた場所にある参加者専用の個室の控室へと通された。
対戦相手は直前まで秘密となっていた。
もし対戦相手が分かってしまうと、対策を立てたり、貴族などが身分を利用して圧力をかけたり、交渉を持ちかけたりできるため、それらをさせないようにするための制度だった。
――この部屋で、出番までひたすら待つのね。お兄さまの言った通り、本を持ってきてよかったわ。
カテリーナは兄のアドバイスを思い出していた。
兄アレクシオスも母アナスタシアも、この騎士コースのトーナメントで優勝をしているのだ。
その重圧を悟られまいと、兄は決して「家の名誉」には触れようとしなかった。
――でも、周囲はきっと意識する……。聖女アナスタシアの娘として。聖騎士アレクシオスの妹として。
そんな思いを払うかのように、カテリーナは兄の言葉を胸に刻んでいた。
――雑念は捨てて。考えすぎず、本でも読んで待っているといいよ。
カテリーナは静かに本を開いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――コンコン。
ドアをノックする音が響く。
「試合の準備をお願いします。十五分後にお迎えに参ります」
「承知いたしました」
カテリーナは持参した袋を開き、戦闘の装備を整える。
十五分後、担当者が迎えに来ると、そこには騎士としての自信と覚悟が顔にあらわれているカテリーナの姿があった。
担当者の誘導のもと、暗くて長い通路を抜ける――。
すると、眩しい陽光とともに、スタジアムを包む大歓声が伝わってきた。
――ワァァァァァ!
光に目を細めながらも、その熱気にカテリーナは一瞬たじろいだ。
試合場の中央へ誘導され、すでに並んでいる他の受験生たちの列に加わる。
「……なんだお前、十六位以内に入れたのかよ」
声の方を向くと、そこには見知った顔があった。
「テオフラストス!」
「端っこで俺の隣ってことは、初戦の相手はお前かよ! こりゃラッキーだな!」
「私もです!」
カテリーナは受験の受付での出来事を思い返し、静かな怒りが胸の奥からこみ上げてきていた。
「お前、俺に棄権するなって言ったこと、忘れてないよなぁ?」
「ええ、はっきりと憶えていますよ」
「ふん、吐いた唾は飲み込めねぇからな。覚悟しておけよ」
「……これで戦争を回避できます。ああ、女神さま、このお引き合わせに感謝いたします」
「あん? お前は何を言っているんだ?」
「我がルクサリス家とアヴァリオス家の戦争を、未然に防げたことに感謝しているのですよ」
「戦争??? この試合のことを言っているのか?」
「頭の血の巡りが悪いあなたのために分かりやすく説明すると、ここであなたと戦わなければ、我が兄がルクサリス家の名誉をかけて、あなたのアヴァリオス家に宣戦布告をするところだったのですよ」
「!!!」
「つまり、これは家の名誉をかけた、ルクサリス家とアヴァリオス家の代理戦争でもあるのですよ」
「なっ、実家の力で圧力をかける気か! 卑怯だぞ!」
「まったく逆です。この試合をもってお互いの遺恨は終わり。勝てばいいだけです」
「ふん、なら簡単だ。衆目の前でルクサリス家のお嬢さまを叩きのめせばいいわけだ」
「一切容赦はしません。……覚悟しておいて下さい」
カテリーナが横目で睨むと、その迫力にテオフラストスは一瞬ひるんだ。
「全員、注目っ! 陛下からのお言葉だ」
その声が響くと、場内のざわめきが静まった。
国王陛下の言葉を聞きながら、カテリーナは静かに闘志を燃やすのだった。
このトーナメントに参加できる者は、魔術師コースと騎士コースの実技試験において、それぞれ上位十六名となっている。
つまり、記述試験と面接試験で基準異常の点数を取れていれば、宮廷大学に合格するということになる。
そのため、掲示板に自分の受験番号が載っていた者は、名誉と安堵の両方から喜びに溢れるのだった。
カテリーナはドキドキしながら、掲示板を薄目からそっと見上げた。
そして自分の番号を見つけたとたん肩の力が抜けて、ホッと息をつき、胸をなでおろすのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ついに、受験者選抜トーナメント当日を迎えた。
「いよいよ最後だね。仕上がりも万全だし、自信を持って臨めば大丈夫だよ」
「はい!」
「では、行こうか」
カテリーナとアレクシオスたち一行は宿を出て、宮廷大学へと向かった。
カリスティア王立宮廷大学・受験生選抜者トーナメントの試合は、今や市民にとって年に一度の一大イベントとなっていた。
大学の周囲には市が立ち、多くの屋台が並び、たくさんの人々で賑わっている。
「ん? あれは何を売っているのかしら?」
「……カテリーナ、今日は試合に集中だよ」
「……あ! はい」
アレクシオスにたしなめられ、カテリーナは祭りへの興味を抑え、まっすぐ大学の門へと向かった。
門の前で兄たちと別れ、選抜者専用の入口へと進む。
担当者の指示に従い、受験票を水晶にかざして本人確認をしたのちに、少し離れた場所にある参加者専用の個室の控室へと通された。
対戦相手は直前まで秘密となっていた。
もし対戦相手が分かってしまうと、対策を立てたり、貴族などが身分を利用して圧力をかけたり、交渉を持ちかけたりできるため、それらをさせないようにするための制度だった。
――この部屋で、出番までひたすら待つのね。お兄さまの言った通り、本を持ってきてよかったわ。
カテリーナは兄のアドバイスを思い出していた。
兄アレクシオスも母アナスタシアも、この騎士コースのトーナメントで優勝をしているのだ。
その重圧を悟られまいと、兄は決して「家の名誉」には触れようとしなかった。
――でも、周囲はきっと意識する……。聖女アナスタシアの娘として。聖騎士アレクシオスの妹として。
そんな思いを払うかのように、カテリーナは兄の言葉を胸に刻んでいた。
――雑念は捨てて。考えすぎず、本でも読んで待っているといいよ。
カテリーナは静かに本を開いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――コンコン。
ドアをノックする音が響く。
「試合の準備をお願いします。十五分後にお迎えに参ります」
「承知いたしました」
カテリーナは持参した袋を開き、戦闘の装備を整える。
十五分後、担当者が迎えに来ると、そこには騎士としての自信と覚悟が顔にあらわれているカテリーナの姿があった。
担当者の誘導のもと、暗くて長い通路を抜ける――。
すると、眩しい陽光とともに、スタジアムを包む大歓声が伝わってきた。
――ワァァァァァ!
光に目を細めながらも、その熱気にカテリーナは一瞬たじろいだ。
試合場の中央へ誘導され、すでに並んでいる他の受験生たちの列に加わる。
「……なんだお前、十六位以内に入れたのかよ」
声の方を向くと、そこには見知った顔があった。
「テオフラストス!」
「端っこで俺の隣ってことは、初戦の相手はお前かよ! こりゃラッキーだな!」
「私もです!」
カテリーナは受験の受付での出来事を思い返し、静かな怒りが胸の奥からこみ上げてきていた。
「お前、俺に棄権するなって言ったこと、忘れてないよなぁ?」
「ええ、はっきりと憶えていますよ」
「ふん、吐いた唾は飲み込めねぇからな。覚悟しておけよ」
「……これで戦争を回避できます。ああ、女神さま、このお引き合わせに感謝いたします」
「あん? お前は何を言っているんだ?」
「我がルクサリス家とアヴァリオス家の戦争を、未然に防げたことに感謝しているのですよ」
「戦争??? この試合のことを言っているのか?」
「頭の血の巡りが悪いあなたのために分かりやすく説明すると、ここであなたと戦わなければ、我が兄がルクサリス家の名誉をかけて、あなたのアヴァリオス家に宣戦布告をするところだったのですよ」
「!!!」
「つまり、これは家の名誉をかけた、ルクサリス家とアヴァリオス家の代理戦争でもあるのですよ」
「なっ、実家の力で圧力をかける気か! 卑怯だぞ!」
「まったく逆です。この試合をもってお互いの遺恨は終わり。勝てばいいだけです」
「ふん、なら簡単だ。衆目の前でルクサリス家のお嬢さまを叩きのめせばいいわけだ」
「一切容赦はしません。……覚悟しておいて下さい」
カテリーナが横目で睨むと、その迫力にテオフラストスは一瞬ひるんだ。
「全員、注目っ! 陛下からのお言葉だ」
その声が響くと、場内のざわめきが静まった。
国王陛下の言葉を聞きながら、カテリーナは静かに闘志を燃やすのだった。
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