60 / 67
第一部 王立宮廷大学を目指そう!
59. 家名をかけた戦い
しおりを挟む
カテリーナの試合は、第一回戦最後の八試合目だった。
トーナメントは二つのブロックに分かれ、それぞれの会場で交互に試合が行われる。
試合形式は三本勝負で、二本先取または相手の降伏・棄権・反則によって勝敗が決まる。
参加者は順番を待つ間、外の様子が見えないように個別の天幕内で待機することになっていた。
後の順番の者が他者の試合を見て、後で戦った際に有利になるのを防ぐためである。
――いつも通り。平常心で戦えば大丈夫だよ。
カテリーナは兄アレクシオスの言葉を思い出していた。
彼女の中には、アレクシオスとの実戦形式の訓練、魔狼との命懸けの死闘、実技試験での騎士たちとの対戦、そして、剣の騎士団長との戦いの経験が、深く刻まれていた。
死地をくぐり抜け、格上の相手にも勝利した経験が、彼女を誰よりも速く成長させていたのである。
先に行われていた試合から、大きな歓声が上がった。
おそらく、勝敗が決したのだろう。
そして、ついにカテリーナの名前が呼ばれた。
「カテリーナ・ルクサリス、第二試合会場へ!」
係員に誘導されて進むと、ちょうどテオフラストスが姿を現したところだった。
彼はカテリーナを見つけると、鋭い目つきで睨みつけた。
二人が中央に進み出ると、司会者の声が響いた。
「では、第二ブロック第四試合に臨む受験生を紹介させていただきます!
青のコーナー……アヴァリオス侯爵家の次男、テオフラストス・アヴァリオス殿!」
観客席から「おぉー!」という歓声が上がる。
国内でも名の知れた貴族の子息とあって、平民の観衆も大いに沸いた。
テオフラストスは各観客席に手を振り、得意げに応える。
「続きまして、白のコーナー……ルクサリス侯爵家の長女、カテリーナ・ルクサリス殿!」
すると会場からひときわ大きい「ワァァァァァ!」という観客の大歓声がスタジアムを揺らし始めた。
「ルクサリス家の娘だ!」
「聖女アナスタシアさまの子供だぞ!」
「あの有名な神聖騎士団副団長の妹だって!」
あちこちから声が飛び交い、カテリーナは思わず目を丸くした。
――えっ? えっ? こんなに注目されるものなの?
母が聖女として残した功績に加え、現在活躍中で人気の高いイケメン騎士の妹でもあることから、カテリーナへの注目は彼女の予想をはるかに上回っていた。
想像を超える大声援に、カテリーナは挨拶する余裕もなく、ただ周囲をキョロキョロと見渡すだけになっていた。
「カテリーナ、落ち着いてっ!」
観客席からその様子を見ていたアレクシオスは、両手を組んで祈るように呟くのだった。
「では試合前に、選手の意気込みを伺いましょう。まずはテオフラストス・アヴァリオス殿から!」
会場が静まり返る。
「ここでは得意の魔法を使えないのが残念だが、磨き上げてきた剣の腕の方も皆に示したいと思う!」
一瞬の沈黙のあと、「ワーッ!」と大歓声が巻き起こった。
「続いて、カテリーナ・ルクサリス殿!」
再び会場が静まり返る。
しばらく黙ったまま俯いていたが、やがてカテリーナは顔を上げ、大きな声を出した。
「このテオフラストス・アヴァリオスは、大学入学試験の受付の際、多くの人の眼前で我がルクサリス家の名誉を踏みにじる言動を取りました! 今回の試合は、我がルクサリス家とアヴァリオス家の名誉をかけた戦いにいたします!」
その瞬間、スタジアム全体が爆発するような大歓声に包まれた。
「おお、遺恨試合だ!」
「侯爵家同士の決闘だぞ!」
「これ、下手をすると家同士の戦争になるんじゃないか!?」
観衆の熱気が最高潮に達したそのとき、貴賓席にいた国王が立ち上がった。
「陛下がお言葉を述べられる! 皆、静粛に!」
係員たちが観衆の大歓声を必死に抑えようと動き出した。
会場内がようやく静かになると、国王が声をあげた。
「この試合、両家の名誉をかけた遺恨試合として認めるものとする。ただし、この決着をもって双方の遺恨は完全に解消され、今後いかなる争いも許さぬものとする。――両者、それでよいな?」
「はいっ!」
カテリーナが即座に答え、少し遅れてテオフラストスも続いた。
「……はい!」
――この女、こんな大事にしやがって! 絶対に叩き潰してやるっ!
スタジアムは異様な熱気に包まれていた。
だがその中心で、誰よりも熱く燃えていたのは、カテリーナの方だった。
トーナメントは二つのブロックに分かれ、それぞれの会場で交互に試合が行われる。
試合形式は三本勝負で、二本先取または相手の降伏・棄権・反則によって勝敗が決まる。
参加者は順番を待つ間、外の様子が見えないように個別の天幕内で待機することになっていた。
後の順番の者が他者の試合を見て、後で戦った際に有利になるのを防ぐためである。
――いつも通り。平常心で戦えば大丈夫だよ。
カテリーナは兄アレクシオスの言葉を思い出していた。
彼女の中には、アレクシオスとの実戦形式の訓練、魔狼との命懸けの死闘、実技試験での騎士たちとの対戦、そして、剣の騎士団長との戦いの経験が、深く刻まれていた。
死地をくぐり抜け、格上の相手にも勝利した経験が、彼女を誰よりも速く成長させていたのである。
先に行われていた試合から、大きな歓声が上がった。
おそらく、勝敗が決したのだろう。
そして、ついにカテリーナの名前が呼ばれた。
「カテリーナ・ルクサリス、第二試合会場へ!」
係員に誘導されて進むと、ちょうどテオフラストスが姿を現したところだった。
彼はカテリーナを見つけると、鋭い目つきで睨みつけた。
二人が中央に進み出ると、司会者の声が響いた。
「では、第二ブロック第四試合に臨む受験生を紹介させていただきます!
青のコーナー……アヴァリオス侯爵家の次男、テオフラストス・アヴァリオス殿!」
観客席から「おぉー!」という歓声が上がる。
国内でも名の知れた貴族の子息とあって、平民の観衆も大いに沸いた。
テオフラストスは各観客席に手を振り、得意げに応える。
「続きまして、白のコーナー……ルクサリス侯爵家の長女、カテリーナ・ルクサリス殿!」
すると会場からひときわ大きい「ワァァァァァ!」という観客の大歓声がスタジアムを揺らし始めた。
「ルクサリス家の娘だ!」
「聖女アナスタシアさまの子供だぞ!」
「あの有名な神聖騎士団副団長の妹だって!」
あちこちから声が飛び交い、カテリーナは思わず目を丸くした。
――えっ? えっ? こんなに注目されるものなの?
母が聖女として残した功績に加え、現在活躍中で人気の高いイケメン騎士の妹でもあることから、カテリーナへの注目は彼女の予想をはるかに上回っていた。
想像を超える大声援に、カテリーナは挨拶する余裕もなく、ただ周囲をキョロキョロと見渡すだけになっていた。
「カテリーナ、落ち着いてっ!」
観客席からその様子を見ていたアレクシオスは、両手を組んで祈るように呟くのだった。
「では試合前に、選手の意気込みを伺いましょう。まずはテオフラストス・アヴァリオス殿から!」
会場が静まり返る。
「ここでは得意の魔法を使えないのが残念だが、磨き上げてきた剣の腕の方も皆に示したいと思う!」
一瞬の沈黙のあと、「ワーッ!」と大歓声が巻き起こった。
「続いて、カテリーナ・ルクサリス殿!」
再び会場が静まり返る。
しばらく黙ったまま俯いていたが、やがてカテリーナは顔を上げ、大きな声を出した。
「このテオフラストス・アヴァリオスは、大学入学試験の受付の際、多くの人の眼前で我がルクサリス家の名誉を踏みにじる言動を取りました! 今回の試合は、我がルクサリス家とアヴァリオス家の名誉をかけた戦いにいたします!」
その瞬間、スタジアム全体が爆発するような大歓声に包まれた。
「おお、遺恨試合だ!」
「侯爵家同士の決闘だぞ!」
「これ、下手をすると家同士の戦争になるんじゃないか!?」
観衆の熱気が最高潮に達したそのとき、貴賓席にいた国王が立ち上がった。
「陛下がお言葉を述べられる! 皆、静粛に!」
係員たちが観衆の大歓声を必死に抑えようと動き出した。
会場内がようやく静かになると、国王が声をあげた。
「この試合、両家の名誉をかけた遺恨試合として認めるものとする。ただし、この決着をもって双方の遺恨は完全に解消され、今後いかなる争いも許さぬものとする。――両者、それでよいな?」
「はいっ!」
カテリーナが即座に答え、少し遅れてテオフラストスも続いた。
「……はい!」
――この女、こんな大事にしやがって! 絶対に叩き潰してやるっ!
スタジアムは異様な熱気に包まれていた。
だがその中心で、誰よりも熱く燃えていたのは、カテリーナの方だった。
1
あなたにおすすめの小説
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~
きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。
しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。
地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。
晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる