蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

59. 家名をかけた戦い

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 カテリーナの試合は、第一回戦最後の八試合目だった。
 トーナメントは二つのブロックに分かれ、それぞれの会場で交互に試合が行われる。
 試合形式は三本勝負で、二本先取または相手の降伏・棄権・反則によって勝敗が決まる。

 参加者は順番を待つ間、外の様子が見えないように個別の天幕内で待機することになっていた。
 後の順番の者が他者の試合を見て、後で戦った際に有利になるのを防ぐためである。

――いつも通り。平常心で戦えば大丈夫だよ。

 カテリーナは兄アレクシオスの言葉を思い出していた。

 彼女の中には、アレクシオスとの実戦形式の訓練、魔狼との命懸けの死闘、実技試験での騎士たちとの対戦、そして、剣の騎士団長との戦いの経験が、深く刻まれていた。
 死地をくぐり抜け、格上の相手にも勝利した経験が、彼女を誰よりも速く成長させていたのである。

 先に行われていた試合から、大きな歓声が上がった。
 おそらく、勝敗が決したのだろう。
 そして、ついにカテリーナの名前が呼ばれた。

「カテリーナ・ルクサリス、第二試合会場へ!」

 係員に誘導されて進むと、ちょうどテオフラストスが姿を現したところだった。
 彼はカテリーナを見つけると、鋭い目つきで睨みつけた。
 二人が中央に進み出ると、司会者の声が響いた。

「では、第二ブロック第四試合に臨む受験生を紹介させていただきます!
 青のコーナー……アヴァリオス侯爵家の次男、テオフラストス・アヴァリオス殿!」

 観客席から「おぉー!」という歓声が上がる。
 国内でも名の知れた貴族の子息とあって、平民の観衆も大いに沸いた。
 テオフラストスは各観客席に手を振り、得意げに応える。

「続きまして、白のコーナー……ルクサリス侯爵家の長女、カテリーナ・ルクサリス殿!」

 すると会場からひときわ大きい「ワァァァァァ!」という観客の大歓声がスタジアムを揺らし始めた。

「ルクサリス家の娘だ!」
「聖女アナスタシアさまの子供だぞ!」
「あの有名な神聖騎士団副団長の妹だって!」

 あちこちから声が飛び交い、カテリーナは思わず目を丸くした。

――えっ? えっ? こんなに注目されるものなの?

 母が聖女として残した功績に加え、現在活躍中で人気の高いイケメン騎士の妹でもあることから、カテリーナへの注目は彼女の予想をはるかに上回っていた。

 想像を超える大声援に、カテリーナは挨拶する余裕もなく、ただ周囲をキョロキョロと見渡すだけになっていた。

「カテリーナ、落ち着いてっ!」

 観客席からその様子を見ていたアレクシオスは、両手を組んで祈るように呟くのだった。

「では試合前に、選手の意気込みを伺いましょう。まずはテオフラストス・アヴァリオス殿から!」

 会場が静まり返る。

「ここでは得意の魔法を使えないのが残念だが、磨き上げてきた剣の腕の方も皆に示したいと思う!」

 一瞬の沈黙のあと、「ワーッ!」と大歓声が巻き起こった。

「続いて、カテリーナ・ルクサリス殿!」

 再び会場が静まり返る。
 しばらく黙ったまま俯いていたが、やがてカテリーナは顔を上げ、大きな声を出した。

「このテオフラストス・アヴァリオスは、大学入学試験の受付の際、多くの人の眼前で我がルクサリス家の名誉を踏みにじる言動を取りました! 今回の試合は、我がルクサリス家とアヴァリオス家の名誉をかけた戦いにいたします!」

 その瞬間、スタジアム全体が爆発するような大歓声に包まれた。

「おお、遺恨試合だ!」

「侯爵家同士の決闘だぞ!」

「これ、下手をすると家同士の戦争になるんじゃないか!?」

 観衆の熱気が最高潮に達したそのとき、貴賓席にいた国王が立ち上がった。

「陛下がお言葉を述べられる! 皆、静粛に!」

 係員たちが観衆の大歓声を必死に抑えようと動き出した。
 会場内がようやく静かになると、国王が声をあげた。

「この試合、両家の名誉をかけた遺恨試合として認めるものとする。ただし、この決着をもって双方の遺恨は完全に解消され、今後いかなる争いも許さぬものとする。――両者、それでよいな?」

「はいっ!」

 カテリーナが即座に答え、少し遅れてテオフラストスも続いた。

「……はい!」

――このアマ、こんな大事おおごとにしやがって! 絶対に叩き潰してやるっ!

 スタジアムは異様な熱気に包まれていた。
 だがその中心で、誰よりも熱く燃えていたのは、カテリーナの方だった。
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