蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ

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第一部 王立宮廷大学を目指そう!

61. 少女対巨人

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 カテリーナが待機している部屋に、試合準備の連絡が入る。

――次の試合の時間になったのね。

 読んでいた本を閉じ、装備を付ける。
 前の試合と同じ、左腕にだけ皮の小手を付ける。。
 剣は兄から贈られた、刺突用の二本のうちの一本、刃引きされた練習用の剣だ。

 係員に誘導されて進み、スタジアムのゲートを抜けると、先ほどを上回る大歓声がカテリーナを迎えていた。

「出てきたぞ! ルクサリス家のお嬢さまだ!」

「可愛い! あんなに細身の身体なのにすごい!」

「聖女さま万歳!」

――ちょっとは慣れてきたけど、やはり少し恥ずかしいわ……。

 第二回戦は勝ち残った八名による試合で、カテリーナは四試合目になる。
 第一回戦と同じく、公平を保つために対戦相手の戦いは見ることができない。

 直前の試合が始まる頃に呼び出され、覆われた天幕の中で順番を待つ。
 対戦相手もまた、反対側の天幕で同じように静かに待っているのだ。

――次はどんな相手かしら……?

 観客の歓声と、遠くに響く金属音だけが頼りだった。
 やがて「一本!」という声が聞こえ、勝敗が決したことを告げていた。

 カテリーナは椅子から立ち上がり、軽く身体を動かし始める。
 そして――

「カテリーナ・ルクサリス、第二試合会場へ!」

 係員の声に呼ばれ、カテリーナは天幕を出た。
 試合会場へ進んでいくと、全身をフルアーマーで覆った巨漢の騎士が歩いてくる姿が見えた。
 大歓声の中、その身長差を見た観客たちからどよめきが起こった。

――何てことだ。相性が悪すぎるっ!

 観客席のアレクシオスが呟いた。

 二人が中央で向かい合うと、その体格差がさらに際立つのだった。

――お、大きい……!

 カテリーナが少し驚いた様子で相手を見上げていると、司会者の大きな声が響き渡る。

「では、第二ブロック二回戦、第二試合に臨む受験生を紹介させていただきます!
 青のコーナー……ドゥーカス伯爵家の長男、ニコポリテス・ドゥーカス殿!」

 観客席から「おおーっ!」という歓声が湧き上がった。
 第一試合で圧勝した巨漢な騎士の存在感に、観衆も大いに声を上げるのだった。
 しかし、ニコポリテスは微動だにせず、フルフェイスヘルメットの隙間から、ただじっとカテリーナを見つめていた。

「続きまして、白のコーナー──ルクサリス侯爵家の長女、カテリーナ・ルクサリス殿!」

 その途端、さらに大きな「ワァァァァァ!」という大歓声がスタジアム中に響き渡った。
 しかし、そんな大歓声もカテリーナの耳には届いておらず、相手の観察に集中しきっていた。

――関節の継ぎ目も隠すタイプのフルアーマー。それに大きめの盾と長剣。
 私の突きが有効と認定されるには、審判に攻撃が通ったと認定されなければ一本にならないわ……。

「カテリーナ、上手く隙を突くんだ!」

 アレクシオスは祈るように両手を組み、妹を見つめていた。

 大歓声が少し落ち着いたところで、司会がアナウンスを始める。

「それでは、それぞれ第一試合で圧勝したお二人に意気込みを伺ってみましょう。まずはニコポリテス・ドゥーカス殿から!」

 その言葉を聞こうと、会場がすぐに静かになっていく。

「……ルクサリス殿。申し訳ないが、あなたの戦い方では著しく不利になると思う。その装備では大怪我の危険もある。納得はいかないかもしないが、どうか、名誉ある辞退を願いたい」

 観客席からざわめきが起こる。
 司会も思わず言葉を詰まらせたが、すぐに言葉を続ける。

「この言葉に、どう応えるか……? カテリーナ・ルクサリス殿、どうぞ!」

 再び会場が静まり返る。
 その様子を見ていたアレクシオスも息を呑んだ。

「ドゥーカス殿、ご忠告ありがとうございます。貴殿のお言葉は侮辱ではなく、私の身を案じてのものと受け取りました。ですが私も女とはいえ騎士を志す者。覚悟はできております。どうか遠慮なく、全力でお相手ください」

 その直後、スタジアム全体が爆発するような大歓声に包まれた。

「おお、辞退せずに戦う気だぞ!」

「とんでもない勇気だ!」

 その言葉を聞き、貴賓席の国王も立ち上がり、大きな拍手を送った。
 ニコポリテスは、黙ったまま軽く頷いた。

 細身の少女と、完全防備の巨漢の騎士。
 大歓声に包まれた中、両者は一礼を交わした。

――「始め!」

 審判の合図とともに、少女対巨人の戦いが始まった。
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