9 / 87
第一章 初めての依頼
09.予想外の襲来
しおりを挟む
心臓に悪い入学式が終わり、クラスへ向かう。私は一年C組だ。
外部受験組は全員同じクラスというわけではなく、内部生と一緒に振り分けられている。どのクラスも内部生のグループが既にできており、外部生は少し肩身狭い。
「これから毎日外部の方と一緒に過ごすなんて考えたくないわね。一条様とも桜二様とも同じクラスになれなかったし、ホントに最悪!」
「お二人ともA組じゃ、アタシたちは休み時間しか会えませんね」
休み時間になったとたん、教室の後ろの方から尖った声が聞こえる。
その中でも一番目立つのが綾小路花凛さんで、制服採寸会のとき、最初に嫌味を言っていた子だ。かなりいいところのお嬢様らしく、たくさん取り巻きがいて女子の中心でもある。
(最悪はこっちのセリフだよ……。五クラスもあるのに何で一緒になっちゃうんだろ)
クラスのみんな……特に外部生が目を付けられまいと静かにしている中、そんなことなどお構いなしに私の席まで来た男の子がいた。
「あれ、いつもの事だから気にしないでね」
そう言って机に手を置いたのは三葉秋兎、三年ぶりに再会した私の幼馴染みである。
「アキくん!久しぶり」
「うん。久しぶり、ユキちゃん」
昔は同じ小学校に通っていたけど、アキくんは絵の才能が評価されて、小学四年生の頃に特待生として英蘭学園の初等部に転入したんだ。
(それに合わせて引越しちゃったから、なかなか会えなくなっちゃたんだよね……)
それでも、アキくんはいつも時間を見つけては相談に乗ってくれた。
……人間関係で悩んでいた私に、英蘭学園を進めてくれたのもアキくんである。
「まさか同じクラスになれるなんてね。また昔みたいに同じ学校に通えるの、本当に嬉しいな」
「アキくんが同じクラスで良かった……正直、一人でやっていける自信がないかも」
そう言いながら、これからのことを考えてしまって気が重くなる。
表情が暗くなった私にアキくんは猫のようにつり上がった目を少しだけ丸くすると、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「あいつらは夏場のセミと変わらないから、ユキちゃんが心配することはなにもないよ」
(……それは、すごくうるさいってこと?)
やっぱり綾小路さんはいつもあんな感じなのかな。ああいう派手な子には嫌われ無い方がいいんだけど、確かにこの場合は関わらない方がよさそう。
「うん、そうする。これからよろしくね!」
「ふふ、分からないことあったら何でも聞いてね」
そう言うと、アキくんはえへんと胸を張った。柔らかい茶色のくせっ毛が揺れる。
……身長が伸びることを考慮したのか、アキくんの制服がぶかぶかだ。そのせいで、頼もしいというよりかわいいと思ってしまう。怒られるから言わないけど。
そうして二人で話していると、ざわっと廊下が騒がしくなった。
「見てっ、一条様と桜二様よ!」
クラスの女子の顔が輝いたのと同時に、私は反射的に隠れた。
みんないそいそと立ち上がる中、気配を消そうとしているのは私だけ。突然盾にされたアキくんが驚いたようにこちらを見ている。
「お二人ともあまり教室を出ないタイプですのに、今日はどうしたのかしら」
「やっぱり、教室に外部の方がいるからじゃない?」
「そうかも!やっぱり二人も気が滅入るのね」
女子のほとんどが廊下側の窓に陣取り、花凛さんなんて廊下に出ていた。みんな顔は恋する乙女って感じなのに、口調にどこか棘がある。
「ねえ!こっちに来てない!?」
集まる視線をものともせず、私が最も会いたくない二人がこの教室に近づいてくる。
バレないでしょと考えていた昨日までの私を殴りたい。だいたいなんで二人ともそろいもそろってこんな大人気なんだろう。アイドルか。
「ユキちゃん?さっきからどうしたの?」
「な、なんでもないよ!ただあの人たち、すごい人気だなって」
「あー……あの二人、一条と白鳥は“花持ち”でも格が違うからね」
「花持ち?」
一瞬にしてあふれんばかりの花を抱えた二人の姿が私の頭に浮かんだ。確かに注目をあびると思うけど、たぶんそういう意味じゃないよね。
だけど私が答えを聞く前に、教室のドア付近で声が響いたのだった。
「――ほら見ろ桜二。やっぱりいただろ?」
「オレはときどき、本気でお前が人間かと疑う時があるよ。……よくあの距離で見つけたな」
聞き覚えのある声に、私はビシリと固まった。
「あの、一条様?何かご用件でしたら、わたくしが聞きますわよ」
「探してたやつは見つけたから大丈夫だ。それよりちょっとどいてくれ」
一条くんは目の前で壁になっていた綾小路さんたちを押しのけると……ツカツカと私の前までやってきた!?
しかもまっすぐ私を見ていて、さっきからずっと目が合っている。
……まさか、探してたやつって私のこと!?
外部受験組は全員同じクラスというわけではなく、内部生と一緒に振り分けられている。どのクラスも内部生のグループが既にできており、外部生は少し肩身狭い。
「これから毎日外部の方と一緒に過ごすなんて考えたくないわね。一条様とも桜二様とも同じクラスになれなかったし、ホントに最悪!」
「お二人ともA組じゃ、アタシたちは休み時間しか会えませんね」
休み時間になったとたん、教室の後ろの方から尖った声が聞こえる。
その中でも一番目立つのが綾小路花凛さんで、制服採寸会のとき、最初に嫌味を言っていた子だ。かなりいいところのお嬢様らしく、たくさん取り巻きがいて女子の中心でもある。
(最悪はこっちのセリフだよ……。五クラスもあるのに何で一緒になっちゃうんだろ)
クラスのみんな……特に外部生が目を付けられまいと静かにしている中、そんなことなどお構いなしに私の席まで来た男の子がいた。
「あれ、いつもの事だから気にしないでね」
そう言って机に手を置いたのは三葉秋兎、三年ぶりに再会した私の幼馴染みである。
「アキくん!久しぶり」
「うん。久しぶり、ユキちゃん」
昔は同じ小学校に通っていたけど、アキくんは絵の才能が評価されて、小学四年生の頃に特待生として英蘭学園の初等部に転入したんだ。
(それに合わせて引越しちゃったから、なかなか会えなくなっちゃたんだよね……)
それでも、アキくんはいつも時間を見つけては相談に乗ってくれた。
……人間関係で悩んでいた私に、英蘭学園を進めてくれたのもアキくんである。
「まさか同じクラスになれるなんてね。また昔みたいに同じ学校に通えるの、本当に嬉しいな」
「アキくんが同じクラスで良かった……正直、一人でやっていける自信がないかも」
そう言いながら、これからのことを考えてしまって気が重くなる。
表情が暗くなった私にアキくんは猫のようにつり上がった目を少しだけ丸くすると、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「あいつらは夏場のセミと変わらないから、ユキちゃんが心配することはなにもないよ」
(……それは、すごくうるさいってこと?)
やっぱり綾小路さんはいつもあんな感じなのかな。ああいう派手な子には嫌われ無い方がいいんだけど、確かにこの場合は関わらない方がよさそう。
「うん、そうする。これからよろしくね!」
「ふふ、分からないことあったら何でも聞いてね」
そう言うと、アキくんはえへんと胸を張った。柔らかい茶色のくせっ毛が揺れる。
……身長が伸びることを考慮したのか、アキくんの制服がぶかぶかだ。そのせいで、頼もしいというよりかわいいと思ってしまう。怒られるから言わないけど。
そうして二人で話していると、ざわっと廊下が騒がしくなった。
「見てっ、一条様と桜二様よ!」
クラスの女子の顔が輝いたのと同時に、私は反射的に隠れた。
みんないそいそと立ち上がる中、気配を消そうとしているのは私だけ。突然盾にされたアキくんが驚いたようにこちらを見ている。
「お二人ともあまり教室を出ないタイプですのに、今日はどうしたのかしら」
「やっぱり、教室に外部の方がいるからじゃない?」
「そうかも!やっぱり二人も気が滅入るのね」
女子のほとんどが廊下側の窓に陣取り、花凛さんなんて廊下に出ていた。みんな顔は恋する乙女って感じなのに、口調にどこか棘がある。
「ねえ!こっちに来てない!?」
集まる視線をものともせず、私が最も会いたくない二人がこの教室に近づいてくる。
バレないでしょと考えていた昨日までの私を殴りたい。だいたいなんで二人ともそろいもそろってこんな大人気なんだろう。アイドルか。
「ユキちゃん?さっきからどうしたの?」
「な、なんでもないよ!ただあの人たち、すごい人気だなって」
「あー……あの二人、一条と白鳥は“花持ち”でも格が違うからね」
「花持ち?」
一瞬にしてあふれんばかりの花を抱えた二人の姿が私の頭に浮かんだ。確かに注目をあびると思うけど、たぶんそういう意味じゃないよね。
だけど私が答えを聞く前に、教室のドア付近で声が響いたのだった。
「――ほら見ろ桜二。やっぱりいただろ?」
「オレはときどき、本気でお前が人間かと疑う時があるよ。……よくあの距離で見つけたな」
聞き覚えのある声に、私はビシリと固まった。
「あの、一条様?何かご用件でしたら、わたくしが聞きますわよ」
「探してたやつは見つけたから大丈夫だ。それよりちょっとどいてくれ」
一条くんは目の前で壁になっていた綾小路さんたちを押しのけると……ツカツカと私の前までやってきた!?
しかもまっすぐ私を見ていて、さっきからずっと目が合っている。
……まさか、探してたやつって私のこと!?
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ハピネコは、ニャアと笑う
東 里胡
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞受賞
目が覚めたら昨日だった。知ってる会話、見覚えのあるニュース。
二度目の今日を迎えた小学五年生のメイのもとに、空から黒ネコが落ちてきた。
人間の言葉を話し魔法を使える自称ハッピーネコのチロル。
彼は西暦2200年の未来から、逃げ出した友達ハピネコのアイルの後を追って、現代にやってきたという。
ハピネコとは、人間を幸せにするために存在する半分AIのネコ。
そのため、幸せの押し付けをするチロルに、メイは疑問を投げかける。
「幸せって、みんなそれぞれ違うでしょ? それに、誰かにしてもらうものじゃない」
「じゃあ、ボクはどうしたらいいの? メイのことを幸せにできないの?」
だけど、チロルにはどうしても人間を幸せにしなければいけないハピネコとしての使命があって……。
幼なじみのヒューガ、メイのことを嫌うミサキちゃんを巻き込みながら、チロルの友達アイルを探す日々の中で、メイ自身も幸せについて、友達について考えていく。
表紙はイラストAC様よりお借りしました。
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる