その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第一章 初めての依頼

11.恋する乙女は怖い

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 次の休み時間、私の席の周りは女子で人だかりができていた。
 自分の席で心配そうにこちらを見ているアキくんに、大丈夫という気持ちを込めてうなずいて見せる。いくら頼ってと言われたとして、この女子の壁を突破させるのは申し訳ない。


「七瀬さんは一条様たちとお知り合いですか?」


 綾小路さんの隣にいる子が口を開いた。
 敵意と探り合い。綾小路さんは何も言っていないが、不機嫌なのがビシビシ伝わってくる。『分かっているわよね』という副音声が聞こえてきそうだが、逆に目的が分かっているだけあるがたい。
 ……意味もなく標的にされるのが一番つらいことだから。
 私は授業中に考えておいた言い訳を、できるだけ綾小路さんの気に障らないように気を付けて話した。


「ううん、採寸会の時に初めて会ったの。たまたま一条くんの落とし物を届けたから、そのお礼だと思う」


 盗まれなくしかけた物を一条くんがちゃんと持ち帰れたんだから、嘘は言ってない。そもそも私は内部生代表挨拶まで颯馬くんの苗字すら知らなかったんだよ。オウジサマの名前なんて今も分からないし。


(これからも二人に関わるつもりないから、どうか私をそこら辺の石だと思って!)


 もうこの際友達とか贅沢なことを言わない。普通に、平穏に中学生活を送れたらそれでいいから!
 必死に祈りつつ、こっそり花凛さんの様子を伺う。女子のリーダーに目をつけられたらおしまいだ。


「……そう、運がいいのね。一条様の落とし物の件はわたくしからもお礼を言っておくわ」

(やった!納得してもらえた!)


 ひとまず初日から嫌われることを回避できてよかった。
 綾小路さんが颯馬くんにお礼を言う理由は分からないが、きっと気にしない方がいいだろう。


「まあ、わたくしはそんなことだろうと思っていたけど。そうじゃなきゃ、七瀬さんみたいな方が一条様の目に留まるはずもないもの」
「さすが一条様。たったそれだけのことにここまで優しくしてくださるなんて」
「あ、あはは……」


 綾小路さんの言葉がちくりと胸に刺さる。


「本当にお優しい方だから困るのよ。まったく、わたくしが勘違いする子たちを諭すのにどれだけ苦労していることか……」

(それってもしかしなくても、颯馬くんに告白しようとしている子を阻止してる……ってことだよね?)


 あまりもの恐ろしさに張り付けていた笑顔が引きつるのを感じる。
 ぜっっったいに綾小路さんに目を付けられないようにしなきゃ……!



「そういうわけだから七瀬さん、急に詰め寄っちゃてごめんね。アタシたち、一条くんのことが心配で気がせっちゃったみたい。許してくれるよね?」


 そう言われて、私は頷くしかなかった。
 女子はみんなどこか綾小路さんを気遣っている。どうやら綾小路さんは本気で颯馬くんのことが好きのようだ。


「……ところで、七瀬さんは三葉くんと仲がいいの?」
「え?あ、うん。幼馴染みなんだ」


 突然話題が変わったことに驚く。
 簡単に答えると、綾小路さんはにこりと笑った。


「まあ、そうなの。羨ましいわ。三葉くんは特待生に選ばれるほど素晴らしい絵をかくのだけど、クールな方でなかなか話してくれないのよ」
「だから私たち、さっきはとても驚いたのよ。三葉くんが自分から女の子に話しかけたの、初めて見たわ!」


 アキくんは少し人見知りなところがあるから、昔からそっけないとか愛想がないってよく言われていた。
 だけどなんとなく、彼女たちはそんな意味で言ったわけじゃないと思った。


「ねえ、みなさん。わたくし、お二人はとってもお似合いだと思うのだけど、いかがかしら?」


 綾小路さんがそういうと、周りから楽しそうな声が聞こえる。嫌な予感は当たってしまった。
 慌ててアキくんの方を見れば、男子と話していたのが見える。よかった、この話は聞かれてないみたいだ。


(綾小路さんは、私とアキくんをくっつけて安心したいんだ)


 人の気持ちを全然考えていない。
 私ははやし立てられないように、なるべく冷静に否定した。やっと丸くなった空気を壊さないように注意を払って。


「あ、あのね、そういうことはないよ。アキくんと私、ただの友達だから」
「そうかしら?まあ、そう言うなら仕方ないわね」


 そこまで本気じゃなかったのか、綾小路さんはそれだけで引いてくれた。
 周りからは「ええ~」とか「そうなの?」とか、がっかりした声が聞こえてきたけど、綾小路さんの手前それ以上追求はしてこなかった。ほっ。

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