その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第三章 物と付喪神

27.調査開始

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 数秒もしないうちにスパーンと障子が開かれた。
 手にマスクの箱と……たくさんの布を持った颯馬くんだ。


「遅いと思ったら何寄り道してんの。なんだよその布」
「葵さんに何か手伝うことはありますかって聞かれたからさ、役に立つかもってもらったんだ。ついでに寄木細工のことも聞いてきたぞ」


 布とマスクの箱を畳において、颯馬くんは自信満々に話し始めた。


「葵さんは二十年もひいばあちゃんのお世話をしていたから、あの寄木細工に詳しいかなって思ったんだ」
「そんな自信満々に言うんだから、アタリだったんだ?」
「ああ。とりあえず、あの寄木細工は特注品で間違いないらしい。雪乃の見立てが正しかったんだ」


 まっすぐ褒められて、少し照れくさい。


「どこで作られたのかは分からないらしいが、六十年くらい前に貰ったとひいばあちゃんから聞いたと言っていたぞ」
「六十年前か……」
「あー、付喪神が宿るには百年かかるんだっけ?」
「ん。でも六十年も経っているなら、形はとれなくても意思はあるはずだよ」


 その場合は付喪神というよりは霊に近い存在だけど。簡単な単語でしか意思疎通はできないけど、意思があるだけでも他の付喪神の印象に残っていたりする。


「でも、こちらの呼びかけに答えてもらうのは厳しいかも……」


 付喪神と呼ばれるのは、本体である”物”とは別の姿をとることができる存在だ。この間のツボの小人のように、自由に動けて会話でき、個性や感情を持つ。

 そもそも彼らが付喪神と呼ばれているのは、九十九つくもという言葉がかかわっている。九十九とは「長い年月」、または「あらゆるモノ」という意味だ。
 だから九十九神とも言われたりするが、そうと呼ばれるほどの存在はもはや精霊ではなく神である。九十九神は人と変わらない姿をとり、ほとんどの個体が魔法のような力を使える。
 ……あの蔵の空飛ぶ友達のように。


「でも姿がないんなら、雪乃はどうやって探すつもりなんだ?」


 困ったように眉を下げる颯馬くんに、少し胸を張る。
 付喪神が宿っていないからといって、別に探せなくなったわけじゃない。ちょっと大変になるだけで。


「付喪神は、大切にされている仲間・・に敏感なんだ。60年もそばに置き続けていたら、きっと他の付喪神の印象に残ってるはずだよ」
「まあ、つまりは聞き込みだね」


 もともと屋敷を回りながら寄木細工を呼ぶという方法を考えていたけど仕方ない。幸いこの屋敷に古い物はたくさんあるし、手間はかかるけど確実に成果は得られるだろう。


「分かった。ここは任せっきりになるけど……雪乃、頼めるか?」
「――うん、任せて」


 目を閉じて、深呼吸する。
 そのまま眼鏡をはずして、手探りでウエストポーチに入れた。


「!眼鏡で見えなくしていたのか」
「なるほど、だからあのとき眼鏡をかけてなかったんだね」
「一条も白鳥くんも静かにして」


 三人のやり取りを聞き流しながら、私はそっと目を開けた。

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