その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第四章 犯人を捕らえろ!

38.寄木細工

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「着物の付喪神!」
「!来てくれたのか!?」


 颯馬くんがパッと顔を輝かせ、こちらに寄ってくる。
 私はその嬉しそうな様子に少しだけ安心して、できるだけ明るい声を意識して着物の付喪神に声をかける。


「探してくださってありがとうございます。本当に助かりました」
『ほれ、これが千代の寄木細工じゃ。しばらく人の手を離れていたせいか、少しばかり弱っておるがのう』


 ずいっと差し出された寄木細工を落とさないように両手で受け取る。
 私の両手いっぱいにちょうど収まる大きさで、所々ささくれ立っていた。その使い込まれた寄木細工の上には、親指サイズの妖精が横になっていた。


(この子が寄木細工の付喪神かな?小さいし弱っているけど、ちゃんと人型だ……!)


 妖精の背中にはトンボのような翅があり、全体的に黄色っぽい。


「うわっ、急に寄木細工が雪乃の手に現れたぞ!?」
「こればかりは何回見ても驚くなあ」


 着物の付喪神の手から離れたから、寄木細工の存在はみんなにも見えるようになった。その上にいる付喪神は見えていないようだけど。
 少し離れたところで見ていた桜二くんも目を丸くしている。


『ふう。久しぶりに術を使うと、すぐに疲れてかなわんなあ。妾は着物に帰って少し休む。何かあれば起こすとよい』


 付喪神は長生きだからか、基本的にはマイペースだ。
 着物の付喪神は用事だけ終わらせると、さっさと壁をすり抜けて帰ってしまった。欲を言えばこのまま最後まで付き合ってほしかったけど、さすがに厳しいか。


(でも、本当に弱ってるな……。すぐに終わらせるからね!)


 半分眠りかけている付喪神に謝りつつ、そっと声をかける。
 反応が返ってこないので、今度はちょんちょんと控えめに突っつく。


『……うっ』


 付喪神は小さなうめきを上げると、ゆっくりと体を起こし。


『……あれ、ここは』
「辛いのに、起こしてごめんね」
『ひゃ!?あ、あなたはだれ!?』


 私の顔を見た瞬間、顔を真っ青にして怯えた。付喪神に怯えられたのは初めてだ。


(……あ、そっか。この子はずっと人から隠れていたから)


 付喪神は人に愛されて生まれた存在なので、基本的には人に好意的に接してくれる。だけど、この子はずっと周りを警戒しなければならなかった。
 私は少し考えて、付喪神が乗っている寄木細工を颯馬くんに向けた。千代さんとよく遊んだって言っていたし、きっと颯馬くんの顔なら覚えているはずだ。


『わ、わ、っそうまさま!』


 効果はてきめんだった。付喪神はパッと顔を赤らめ、嬉しそうに颯馬くんの名前を呼んだ。突然鼻先に寄木細工を突き付けられた颯馬くんはキョトンとしているけど。


「私は颯馬くんの……仲間です。私たちは、貴方が必死に守ってきた鍵を狙う犯人を捜しています」


 そう言って、少しドキドキしながらそっと颯馬君の顔色を窺った。仲間といった時も、少しも嫌そうな顔をしていない。よ、よかった……。


『なかま、わかる!かぎ、だいじ!』


 着物の付喪神が言っていた通り、寄木細工の付喪神はかなり弱い。その言葉はおぼつかなく、単語を話すのが精いっぱいのようだ。


「この子、あんまり難しいことは話せないみたい。たぶん、犯人の名前を聞くのが精いっぱいだと思う」
「いや、それで十分だ。他のことは捕まえて直接本人に聞く」


 とはいえ、私たちの会話は普通に理解できるようだ。付喪神は大きくうなずくと、単語を並べていく。


『かぎ、しった、たまたま』


 認識に差が出ないように、私は付喪神の言葉をそのまま繰り替えす。すると、今まで黙っていた桜二くんが口を開いた。


「鍵の存在を知ったのは、偶然ってことかな?」
『うん!あるじのせわ、たまたまみた』
「……!それは」


 このあとに続く言葉が予想できてしまった。
 急に口ごもった私に、アキくんが心配そうに声をかけてくれた。


「ユキちゃん?大丈夫?」
「――うん。桜二くんの推測は正解だって」
「その主って、誰の事なんだ?」
『ちよさま』


 この時だけは、私しかこの声が聞こえていないことを呪った。だって、こんなのはほぼ答えを言っているようなものだ。


(言いにくいな……けど)


 それは、身を削ってまで頑張った付喪神に失礼だ。彼女の気持ちを伝えられるのは私しかいないのに、その努力を踏みにじることはできない。


「……千代様、だって」
「じゃあ、鍵を狙ってるのは、誰だ?」
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