その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第七章 いざ、林間学校へ!

68.秘密の別行動

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「私、今日回った所の記録を取ってあるよ! 趣味の範囲だけど、ガイドさんにも色々聞いたから付喪神が良そうなところは検討つくかも」


 ちょうどスマホにメモを移し替えていたから、それを桜二くんたちに見せる。
 突然たくさんの文字を目の前に突き付けられて二人とも目を白黒させたが、反射で目を通していた颯馬くんが先に声を上げる。


「すごいな、見学したルートも時間も書いてある。……桜二、これで犯人の足取りを割り出せないか」
「あー、犯人の真理を考えるとオレたちがいるところは避けそうだしねえ。時間ないし、これであたりをつけてもいいかも」


 希望が見えたのか、桜二くんと颯馬くんは私のスマホを借りると真剣な顔で話し出す。
 桜二くんはパソコンでこの辺りの地図を開くと、ペン機能で何やら書き込み始めた。


♢♢♢


「――よし。明日はこのルートを通って聞き込みをしよう」


 書き込みを終えた桜二くんがパソコンから顔を上げる。


「明日……?」
「そ。自由に外で動けるスタンプラリーの時間を使った方がどうどうと調べられるでしょ?」


 桜二くんの言う通りだ。
 林間学校中、決められた時間以外でホテルから出ることはできない。三日目はクラス行動だし、昼になったら帰ってしまう。チャンスは明日のスタンプラリーの間しかないだろう。


「でも、グループ行動はどうするの? 人前だと、力も使いにくいし……」


 蘭の館で話し合いをした後、私たちはさっそくお互いのグループメンバーに一緒にスタンプラリーを回らないかと誘ったのだ。幸いにもすんなり許可を貰えたが、誘っておいてドタキャンは迷惑をかけてしまう。
 見回りの先生だっているし、目立つ颯馬くんたちがグループから離れて行動するのは難しいはず。だからと言って事情を説明するのはできないし、嘘をついてスタンプラリーと関係のないことに突き合わせるのも心苦しい。


「うーん、それもそうだね……」


 桜二くんが頬に指を当てて考え込む横で、颯馬くんが腕を組んだまま口を開く。


「だったら、こうするのはどうだ? 最初は予定通り、グループのみんなで行動するんだ。途中で雪乃がはぐれたふりをして、俺たちが心配して後から追いかける。これなら誰にも怪しまれずに、先生に不審がられても迷子だからと誤魔化せるんじゃないか」


 いい考えだと思う。
 一緒に回ると言ってくれたグループの人たちを傷つけることもないし、私たちがいないことに気付かれても誤魔化しがきく。
 ……ただ一つ、私に迷子という印象がつくことを除けば素晴らしい作戦だ。


「……一条って、正面突破以外にも選択肢があるんだ」
「ソウにしては王道じゃない考えだね……」
「…………お前たちは俺を何だと思ってるんだ」


 悪気はなく、本心から驚いたように目を丸くするアキくんと桜二くんに、颯馬くんは苦い表情をする。
 あまりにもかわいそうな評価に、迷子はまだマシかと納得することにした。これよりいい方法が浮かばないしね。


「じゃあ、決まりだね。犯人もいるかもしれないし、ユキちゃんを一人にするのは心配だから、ぼくたち二人が迷子役をやるよ」
「ちゃっかりしてるねぇ」
「要領がいいって言ってくれない?」


 桜二くんとアキくんのじゃれ合いが始まろうとしたその時、タイミングよくカラオケラウンジに備え付けられていたスピーカーからチャイムが鳴った。
 自由時間の終了を知らせる音だ。


「もう時間か。まだ打ち合わせしたいことがあるのに……」
「あとはスマホのメッセージで十分だろ。俺たちは今から先生を説得しなきゃならないし、消灯時間の前に急ぐぞ」


 そうだった。もし先生の説得に失敗したら、そもそもチャンスすらないんだ。
 こればかりは何の力にもなれないから、悔しい思いをしながらも報告を待っているしかない。


(ううん、自分にできることをしっかりやるのが仲間なんだもんね!)


 颯馬くんがそう教えてくれたことを思い出して、私は沈みそうな気持を切り替えた。


「上手くいくように応援してるね」
「うん! 遅くなっちゃうかもしれないけど、オレたちの連絡を楽しみに待っててよ」


 そういって桜二くんたちが部屋を後にしようとすると、アキくんが思い出したように二人を呼び止めた。


「連絡って、たぶん消灯時間越えるよね」
「ああ、先生たちがすんなり許可してくれるとは思えないからな。さすがに日付を越えないだろうから、寝てるときに起こすようなことにはならないはずだが……」
「ぼくの同室は知り合いだからそれでもいいけど、ユキちゃんは難しいと思う」


 アキくんは私に気を遣って言葉を濁したが、綾小路さんのことを言っているのだろう。


(同じ部屋のままだったら、確かに無理だと思うな……)


 消灯時間後にスマホなんて見たら、間違いなく誰だと聞いてくるだろう。万が一相手が颯馬くんたちだとバレたら……考えただけでも恐ろしい。


「同室の子なら友だちのところで寝るって言ってたから、私も大丈夫だよ」
「えっ、そうなの?」
「うん! この三日間、実質一人部屋だよ」
「じゃあ、気軽に連絡できるってことだ」


 素直に喜ぶ桜二くんに対して、アキくんは安心したように息をつく。こんなにも心配してくれたことが申し訳なかったが、同時に嬉しい。
 そうして私たちは分かれて、自室に戻って颯馬くんたちの連絡を待った。

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