その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第八章 盗品探しのスタンプラリー

72.聞き込み開始

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 予定していた合流場所はホテルがある山を下りた先、ちょうどみんなが必ず通る分かれ道にある古びた石碑の近くだ。
 ホテルの宿泊客に気を遣っているのか、周りにあるのはコンビニや薬局など、観光というより日用品を手に入れられる店ばかり。スタンプラリーが始まってからそこそこ時間が経ったのもあり、他の生徒や教師の姿もない。
 ちなみにホテルへは一本道で、ここ以外は全て人の手が入っていないけもの道である。
 警察が調べた結果によると、そういうところから人や車が通った痕跡は見つからなかったらしい。


(お金持ちの家の子が多いから、事件前から山のふもととかに警備を置いているって桜二くんから聞いたけど……そっちでも不審者目撃情報なかったし、犯人は間違いなくこの道を通っているはず)


 だからここを起点に少しずつ不審な情報を集めて、景品の行方を探す予定だ。


「あ、一条たちも上手く抜け出したっぽいよ。あと十分くらいでこっちに着くみたい」


 鑑定団のグループにメッセージが届き、ちょうどスマホを見ていたアキくんが読み上げてくれた。
 少し時間に余裕があるなら、先に初めてもいいかもしれない。


「アキくん、先にこの周りだけでもみるね」
「わかった、周りの警戒は任せて!」


 頼もしく胸を張ってみせるアキくんを横目に、私は眼鏡をはずす。
 そうして周囲を見渡せば、さっそく先ほどまでいなかったナニカが目に飛び込んできた。


(すごい……! 道路わきにある置物全部に付喪神が宿ってる!)


 舗装された道の脇には、信楽焼の狸や石カエルなどがたくさん置かれている。
 近くのお店の人たちに大切にされてきただろう、その周りには小さな付喪神がたくさんいた。
 驚かせないように、ゆっくり彼らに近づいて声をかける。


「こんにちは。ちょっとだけ、聞きたいことがあるんだけど」


 私に声に反応して、自由に遊んでいた付喪神が動きを止めて一斉にこちらを見上げる。十数体ほどいたので、その威圧感はなかなかのものだ。

 思わずビクッと肩を跳ねらせると、小さい付喪神の中では一回り大きい子――笠を被った狸がスッと二本足で危なげなく立ち上がる。動物の姿をしていても付喪神なので、普通の動物と違うのは分かっているけど……やはり四足歩行の生き物が当然のように立つのは何度見ても慣れない。


『おお、きれいな目をしているお嬢さんだな。人間と話せるとは、長生きはしてみるものだのう』


 ぽんと腹を叩いて笑う笠の狸は、おそらくその隣にある信楽焼の付喪神だろう。
 信楽焼自体は鎌倉時代からあるが、信楽たぬきは明治時代から作られた置物だ。明治時代ってちょうど今から百何十年と前のことだから、付喪神になったのは最近だろう。

 それでも周りにある小さな付喪神よりしっかりしている感じがあるから、意外ともっと古いものなのかもしれない。
 それを聞きたい気持ちをぐっとこらえて、私は笠の狸に事件のことを簡単に説明した。


「――それで昨日から今まで、この辺で怪しい人とか見なかった?」
『むう……怪しい人と言われてものう、この辺りは観光地で人通り多くてなあ。何か特徴は分からんかね』
「ええと、強いて言えば大荷物を持ってて、その中身が全部電化製品……ってくらいかも。こっちから聞いておいてごめんね」
『観光客なぞ、大荷物な人がほとんどじゃぞ。それに仲間が宿っているならともかく、ただの物はいちいち気にしとらん』
「うっ……そうよね」


 想定していたことではあるが、きっぱり言われると残念の気持ちは大きい。
 これは長期戦になるかな、なんて考えているとふと横から声をかけられる。


『ソノ電化製品ノ中身ッテ、ノートパソコン、トカダッタ?』


 ノイズ混じりの片言にぱっと声の方を向けば、金庫のような形をした四角い付喪神が私を見上げていた。その頭の上にはラッパのようなスピーカーがついており、そこから声が出ているようだった。

 そこそこ骨董品には詳しいけど、この付喪神の本体に全く心当たりがない。しかし何か知っているような素振りに、私は迷わず声をかけた。


「そうだよ! 他にもワイヤレスイヤホンとか、モバイルバッテリーとか、キーボードとかが入っているはず」
『ウーン、確カニ、ソウイウ物モ入ッテイタヨウナ……』


 思い出しているのだろうか。ザザッザザッと接続の悪い時の音を出しながら、謎の付喪神はこことあたりがあると頷いた。


『おお、真空管も昔は電化製品だったのう。置物のわしらよりも感じ取りやすいのだろう』
「し、しんくうかん……?」
『真空管式ラジオ、ダヨ』
「しんくうかんしきラジオ」


 残念ながら、骨董品の中でも電化製品系はあんまり得意じゃない。
 ラジオという言葉しかわからず、私は検索しようとしてスマホを開く。ちょうどその時、背後から透き通った声が聞こえた。


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