75 / 87
第八章 盗品探しのスタンプラリー
75.証拠を見つける方法
しおりを挟む
付喪神たちにお礼を言ってから、私たちはタクシーを拾ってホテルに向かう。
どうやらホテルと連携しているタクシーらしく、宿泊客なら無料で利用できた。
桜二くんと並んで後部座席に座り、十分ほどでホテルの駐車場に着く。私たちは急いで降りて、先生たちに見つからないように裏口に回る。
「ユキちゃん、白鳥! こっちだよ!」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、先に待ってくれていたアキくんが裏口の傍で手を振っているのが目に入る。
私と桜二くんが気づいたのを確認すると、アキくんはコンコンと裏口の扉を軽く叩いた。間をおかず、ギイと音を立てて扉が内側から開けられる。
「今なら誰もいない。早く入れ」
中で待機していた颯馬くんに促されて、私たちはささっと裏口を通る。
スタンプラリー中にホテルに居るのがバレると、サボりとみなされて評価が下がるのだ。林間学校は学校行事だから、成績に反映されるのである。
調査に関わっている桜二くんならともかく、私たち三人は間違いなくバレたら反省文ルートだ。しかも私とアキくんは迷子という設定だから、絶対に先生に見つかってはいけない。
「よくこんな裏口を見つけたね。鍵かかってそうだけど」
「ピッキングで開けたよ。急を要するから仕方ない」
まっすぐな目でにっこり笑うアキくん。
大して悪いことをしている自覚がある颯馬くんは気まずそうに目を泳がせた。
「一応通るたびに施錠し直しているから、誰かが侵入しないようにしているよ。この辺り防犯カメラないし、セーフセーフ」
私たちが侵入しているので、厳密に言わなくてもアウトなのだが……窃盗犯を捕まえるためには必要な犠牲だと思おう。
思わず遠い目をしつつ、私たちは落ち着いて話し合いができる場所を求めて急ぎ足で颯馬くんたちの部屋に向かった。
男子は全員三階に部屋があるため、私はハラハラしながら廊下を進んでいく。ようやく辿り着いた部屋に入ってからやっと、ほっと息をついた。
私の部屋とほぼ変わらない間取りだが、よく分からない電子機器やビジネス書がたくさん置いてあったりと一目で颯馬くんと桜二くんの部屋だと分かる。
「ひとまず、犯人の目星はついたわけだけど」
私たちは広縁のテーブルを囲むように座り、桜二くんはみんなが見えるような位置にパソコンを置く。
その画面には、犯人である斎藤清の情報が映っていた。
「でも、まだ証拠はないんだよね……」
私は画面を見ながら、ふと漏らす。
付喪神たちはたしかに断言したけど、それを証拠として扱うのは難しい。離したところで誰一人として信じてくれないのは、この場に居る全員が理解していた。
「今ごろ盗んだ景品は家にあるだろうから、自宅捜査すれば一発だろうが……これもまず斎藤が犯人って証明しないとな」
腕を組んでうなる颯馬くんに、アキくんが小さくうなずく。
「車の出入り、盗んだ景品の運搬……どこかで記録が残ってれば、それをつき出せばいいけど」
「何も見つからなかったら、自白させるしかないか?」
「自白って、こっちには手札が何もないんだよ? 旅行先で道具とかも限られてくるし」
手詰まりになったところで、みんなの視線が桜二くんに向けられた。静かに何か考え込んでいる様子だったが、その視線を受けて顔を上げる。
「まずは予定通り、車のナンバーで斎藤の動きを追ってみるつもり。案外自宅じゃなくて、別のところに隠しているかもしれないし」
「付喪神たちはいつもと違うルートを通っていたって言ってたもんね」
「そ。もし中古とかで売ってたら、オレたちでも店に連絡できる。どこかに隠したなら、近くの監視カメラを調べればいい」
今はまだお昼過ぎだから、スタンプラリーが終わるまでにはあと二、三時間の余裕がある。
斎藤清のルートを早めに割り出せたら、実際に私たちが行って確認することもできるはず。
「でも車の追跡って、そう簡単じゃないよね」
「警察じゃなきゃ割り出しは難しいね。できないことはないし証拠も残さない自信あるけど、今回は警察も関わってるから聞かれたらめんどくさいかも」
「わざわざ腕前を強調する必要なくない?」
アキくんの冷たい眼差しを華麗にスルーして、桜二くんは話を続けた。
「だからま、逆に警察を利用して正攻法で情報を手に入れるよ」
「正攻法……? 桜二、お前ストレスで思考がおかしくなったのか……?」
信じられないといった様子の颯馬くんに、桜二くんは鋭い視線を向ける。
「人を犯罪者みたいに言わないでくれる!? オレだって出来たら正々堂々とやるけど?」
「白鳥の辞書に正々堂々って言葉があったんだね……」
「ソウが正面突破しか知らないから、オレが柔軟に対応してるだけ! いつもちゃんと悪い人を捕まえて最終的には専門の人に任せてるじゃん」
普通は自分で悪い人を捕まえないし、最終的な状態になる前に専門の人を頼るが……わざわざ言わなかった。後が怖いからだ。
「その、正攻法ってなに?」
話を戻すべくそう尋ねる。
桜二くんは気を取り直すようにコホン、と咳ばらいを一つして説明を続けた。
どうやらホテルと連携しているタクシーらしく、宿泊客なら無料で利用できた。
桜二くんと並んで後部座席に座り、十分ほどでホテルの駐車場に着く。私たちは急いで降りて、先生たちに見つからないように裏口に回る。
「ユキちゃん、白鳥! こっちだよ!」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、先に待ってくれていたアキくんが裏口の傍で手を振っているのが目に入る。
私と桜二くんが気づいたのを確認すると、アキくんはコンコンと裏口の扉を軽く叩いた。間をおかず、ギイと音を立てて扉が内側から開けられる。
「今なら誰もいない。早く入れ」
中で待機していた颯馬くんに促されて、私たちはささっと裏口を通る。
スタンプラリー中にホテルに居るのがバレると、サボりとみなされて評価が下がるのだ。林間学校は学校行事だから、成績に反映されるのである。
調査に関わっている桜二くんならともかく、私たち三人は間違いなくバレたら反省文ルートだ。しかも私とアキくんは迷子という設定だから、絶対に先生に見つかってはいけない。
「よくこんな裏口を見つけたね。鍵かかってそうだけど」
「ピッキングで開けたよ。急を要するから仕方ない」
まっすぐな目でにっこり笑うアキくん。
大して悪いことをしている自覚がある颯馬くんは気まずそうに目を泳がせた。
「一応通るたびに施錠し直しているから、誰かが侵入しないようにしているよ。この辺り防犯カメラないし、セーフセーフ」
私たちが侵入しているので、厳密に言わなくてもアウトなのだが……窃盗犯を捕まえるためには必要な犠牲だと思おう。
思わず遠い目をしつつ、私たちは落ち着いて話し合いができる場所を求めて急ぎ足で颯馬くんたちの部屋に向かった。
男子は全員三階に部屋があるため、私はハラハラしながら廊下を進んでいく。ようやく辿り着いた部屋に入ってからやっと、ほっと息をついた。
私の部屋とほぼ変わらない間取りだが、よく分からない電子機器やビジネス書がたくさん置いてあったりと一目で颯馬くんと桜二くんの部屋だと分かる。
「ひとまず、犯人の目星はついたわけだけど」
私たちは広縁のテーブルを囲むように座り、桜二くんはみんなが見えるような位置にパソコンを置く。
その画面には、犯人である斎藤清の情報が映っていた。
「でも、まだ証拠はないんだよね……」
私は画面を見ながら、ふと漏らす。
付喪神たちはたしかに断言したけど、それを証拠として扱うのは難しい。離したところで誰一人として信じてくれないのは、この場に居る全員が理解していた。
「今ごろ盗んだ景品は家にあるだろうから、自宅捜査すれば一発だろうが……これもまず斎藤が犯人って証明しないとな」
腕を組んでうなる颯馬くんに、アキくんが小さくうなずく。
「車の出入り、盗んだ景品の運搬……どこかで記録が残ってれば、それをつき出せばいいけど」
「何も見つからなかったら、自白させるしかないか?」
「自白って、こっちには手札が何もないんだよ? 旅行先で道具とかも限られてくるし」
手詰まりになったところで、みんなの視線が桜二くんに向けられた。静かに何か考え込んでいる様子だったが、その視線を受けて顔を上げる。
「まずは予定通り、車のナンバーで斎藤の動きを追ってみるつもり。案外自宅じゃなくて、別のところに隠しているかもしれないし」
「付喪神たちはいつもと違うルートを通っていたって言ってたもんね」
「そ。もし中古とかで売ってたら、オレたちでも店に連絡できる。どこかに隠したなら、近くの監視カメラを調べればいい」
今はまだお昼過ぎだから、スタンプラリーが終わるまでにはあと二、三時間の余裕がある。
斎藤清のルートを早めに割り出せたら、実際に私たちが行って確認することもできるはず。
「でも車の追跡って、そう簡単じゃないよね」
「警察じゃなきゃ割り出しは難しいね。できないことはないし証拠も残さない自信あるけど、今回は警察も関わってるから聞かれたらめんどくさいかも」
「わざわざ腕前を強調する必要なくない?」
アキくんの冷たい眼差しを華麗にスルーして、桜二くんは話を続けた。
「だからま、逆に警察を利用して正攻法で情報を手に入れるよ」
「正攻法……? 桜二、お前ストレスで思考がおかしくなったのか……?」
信じられないといった様子の颯馬くんに、桜二くんは鋭い視線を向ける。
「人を犯罪者みたいに言わないでくれる!? オレだって出来たら正々堂々とやるけど?」
「白鳥の辞書に正々堂々って言葉があったんだね……」
「ソウが正面突破しか知らないから、オレが柔軟に対応してるだけ! いつもちゃんと悪い人を捕まえて最終的には専門の人に任せてるじゃん」
普通は自分で悪い人を捕まえないし、最終的な状態になる前に専門の人を頼るが……わざわざ言わなかった。後が怖いからだ。
「その、正攻法ってなに?」
話を戻すべくそう尋ねる。
桜二くんは気を取り直すようにコホン、と咳ばらいを一つして説明を続けた。
10
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ハピネコは、ニャアと笑う
東 里胡
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞受賞
目が覚めたら昨日だった。知ってる会話、見覚えのあるニュース。
二度目の今日を迎えた小学五年生のメイのもとに、空から黒ネコが落ちてきた。
人間の言葉を話し魔法を使える自称ハッピーネコのチロル。
彼は西暦2200年の未来から、逃げ出した友達ハピネコのアイルの後を追って、現代にやってきたという。
ハピネコとは、人間を幸せにするために存在する半分AIのネコ。
そのため、幸せの押し付けをするチロルに、メイは疑問を投げかける。
「幸せって、みんなそれぞれ違うでしょ? それに、誰かにしてもらうものじゃない」
「じゃあ、ボクはどうしたらいいの? メイのことを幸せにできないの?」
だけど、チロルにはどうしても人間を幸せにしなければいけないハピネコとしての使命があって……。
幼なじみのヒューガ、メイのことを嫌うミサキちゃんを巻き込みながら、チロルの友達アイルを探す日々の中で、メイ自身も幸せについて、友達について考えていく。
表紙はイラストAC様よりお借りしました。
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる