その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

文字の大きさ
78 / 87
第九章 景品を取り返せ!

78.二日目午後、部屋

しおりを挟む
 それぞれの調査結果を持って、私たちは再び颯馬くんたちの部屋に集まる。
 みんな座ったところで、桜二くんが最初に話した。


「ソウたちの報告はメッセージで貰ったから、オレの方の情報もまとめて説明するね」
「ナンバーの特定は上手くいったか?」
「特定だけなら、上手くいったよ。ただ途中で止まった記録はなくて、たぶん景品は斎藤清の家に保管されている。他の監視カメラにも一切怪しいところは映ってなかったから、心配していた通りになったよ」


 つまり、家宅捜索できるほどの証拠がないから、警察じゃどうしようもないっていうことだ。
 みんなの表情が暗くなるが、当の桜二くんは意外にも前向きだった。


「でも三人のおかげで、進展はあったよ。メッセージをもとに斎藤清が担当してた日の記録を調べてみたんだけど、二週目から備品の発注数と在庫数が明らかに合わないんだ」
「常習犯ってことかぁ」


 アキくんが眉をひそめると、桜二くんは静かに頷いた。


「斎藤清がこのホテルに就職してから約一か月。数が合わない物はアメニティーの歯ブラシ、タオルとか小さい物が多かった。毎回ちょっとずつ、っていうスタンスなんだろうね」


 だから今までバレなかったのだろう。
 歯ブラシなんて何個かなくなたって、客の誰かが多めに持って行ったのかなって思うし、気にならないもんね。
 ただその日その日問題なくても、こうして目的をもって記録を見るとすぐに不審な所に築かれてしまう。


「ちなみに、荷物置き部屋の清掃を担当していたのも彼だったよ。もちろん、荷物運びも同じ。警察にはこの記録を提出したけど、さすがに偶然が重なりすぎって判断してもらえたよ」
「じゃあ……!」
「そ、斎藤清を注意人物にすることはできた」
「大きな進展だな! それなら、もう捕まるのも時間の問題じゃないか?」
「だったらよかったんだけどねー!」


 桜二くんはぴしゃりと否定すると、大きなため息をつく。


「今のところ、全部かもしれないって程度。このままのんびり待ってたら、百回は林間学校できるね」
「ほぼ一年かかるってことじゃん」


 そんなの待っていたら、桜二くんは先生たちとの条件を達成できないということだ。
 ……林間学校が終わるまでに、景品が盗まれたかどうかを明かせなければ停学という条件。


「最初に言った通り、確かな証拠がないから警察としても下手に動けないってコト」


 そういう桜二くんは、ふっと意味深な笑みを浮かべる。


「だからさ——オレたちで逮捕しようよ」


 一瞬の沈黙のあと、アキくんがジトっと呆れた視線を桜二くんに向ける。


「最初、犯人はどうでもいいって言ってなかった?」
「鑑定団なら、事件には柔軟に対応しなきゃ」


 涼しい笑みで流す桜二くんは、きっと覚悟を決めているのだろう。
 ここまで来たら、私だって林間学校をめちゃくちゃにした犯人を捕まえたい。


(こんなに頑張った桜二くんが停学なんて、絶対に嫌だ)


 覚悟を決めて、顔を上げる。


「いいよ、どうすればいい?」


 私が真っ先に頷くのが意外だったのか、三人は話をやめてこちらを凝視した。
 意見を変えるつもりはないという気持ちを込めて頷けば、桜二くんは雪が解けたような柔らかい表情を浮かべる。


「作戦は、考えてある」


 そう言って桜二くんはパソコンを立ち上げ、ホテルスタッフのシフト表というファイルを開く。
 名前と日付、担当エリアが細かく記されたその中に、『斎藤清』の名前もいくつか並んでいた。


「スケジュールによると、斎藤清は今日も事件が起きた荷物置き部屋の掃除を担当することになっている。それまで、あと一時間ある」
「そのタイミングに仕掛けるつもりか」
「うん。盗難を警戒して、今日から常に荷物部屋に先生が一人ついている。この見張りの先生を別のところに誘導して、その間に犯人を捕まえたい」
「どうやって誘導するの? 見張りなら、ちょっとやそっとのことで動かないと思うけど」


 アキくんの疑問に、桜二くんは自信ありげに目を細めた。


「ユキとアキ、迷子でしょ? それで怪我をしたって言って、部屋まで先生を連れていくんだよ」
「……ぼくたちに、今から怪我をして来いって? 見張りの先生を動かすくらいの?」


 責めるようなアキくんの視線を受け止めながら、桜二くんは鞄からレジ袋を取り出した。ホテルの売店の袋のようだが、戻ってくるときにでも買ったのだろうか。
 袋はそこそこ大きく、結構重いようでテーブルに置いた途端にガラガラと中身が音を立てる。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞受賞 目が覚めたら昨日だった。知ってる会話、見覚えのあるニュース。 二度目の今日を迎えた小学五年生のメイのもとに、空から黒ネコが落ちてきた。 人間の言葉を話し魔法を使える自称ハッピーネコのチロル。 彼は西暦2200年の未来から、逃げ出した友達ハピネコのアイルの後を追って、現代にやってきたという。 ハピネコとは、人間を幸せにするために存在する半分AIのネコ。 そのため、幸せの押し付けをするチロルに、メイは疑問を投げかける。 「幸せって、みんなそれぞれ違うでしょ? それに、誰かにしてもらうものじゃない」 「じゃあ、ボクはどうしたらいいの? メイのことを幸せにできないの?」 だけど、チロルにはどうしても人間を幸せにしなければいけないハピネコとしての使命があって……。 幼なじみのヒューガ、メイのことを嫌うミサキちゃんを巻き込みながら、チロルの友達アイルを探す日々の中で、メイ自身も幸せについて、友達について考えていく。 表紙はイラストAC様よりお借りしました。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

処理中です...