多分嫌いで大好きで

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 短期大学に入学してからの時間の流れは早かった。
 オンライン授業であまり学校に通わなくてもいいと言っても、4年分を2年で学ぶのだ。忙しいに決まっている。

「…疲れた」

 寝起き早々そんなことを呟いてしまう。築36年10.5畳のワンルームは1人だと地味に広くて声が響くような気がする。

 今日は1、2限をオンラインで受けたあとバイトがある。バイトは貸オフィスの受付で座ってるだけでいいのがすごく楽で好きだった。
 受付のバイトは14時~19時まで。そこから閉め作業だのなんだのってしていたら20時になるけど、掃除や設備備品の点検が主だからそこまで苦じゃない。

 咲久は寝起きの重い体を起こしてパソコンを立ち上げた。

 オンライン授業と言っても教授が黒板を映しながら喋っているだけで、聞いている生徒はカメラもオフでマイクもミュートにしているため動画を見ている感覚に近い。
 事前に配布されたPDFの資料に少し目を通して、いつも通り画面録画を始めた。

「よし、家事でもするかー」

 オンライン授業を真面目に聞いているわけでもなく、ただレポートやテストは大事なため画面録画を毎回している。

 咲久は少し溜まった洗濯物を洗濯機に放り投げスイッチを押すと、朝食を作り始めた。
 いつも通り食パンにマーガリンを塗り、トースターで4分焼く。
 焼いて待っている時間は嫌いじゃなかった。
 むしろマーガリンが溶けて染み込んでいく時間が好きだ。

 6月下旬、この生活を始めてもうすぐで3ヶ月がたつ。長いようで早かった。

 敷布団の近くにぽつんと置いてある1人用のテーブルに焼けた食パンと麦茶を置く。
 パソコンからは教授の喋り声がして、ちょっとしたBGMになっている。

「今日もお客さん以外と喋らないんだろうなー」

 咲久は食パンを口に頬張りながら、片手にスマホをいじった。


 みんなと繋がっているSNSを何となく開いてみる。スクロールする度に大学生活や社会人生活、新婚生活を満喫している友達や同じ施設だった人たちの投稿が流れてきた。

 見る専の咲久は投稿することはない。
 オンライン授業を受けていてバイトや買い物以外基本的に外に出ることがない咲久にとって、SNSでわざわざ載せるものもないのだが。

 でも羨ましい気持ちも普通にある。みんなと同じ普通の生活や幸せを手に入れれたらと思うこともある。

 ふと目に入ったのは新しくできたマッチングアプリの広告だった。
 普段はスルーするのに、みんなの投稿を見たからだろうか、何となくアプリストアにいきインストールしてみた。

「えーっと、このアプリは全バース全ての人対象です…?」

 全バース対象のマッチングアプリは珍しかった。大体はオメガとアルファ対象やベータ同士対象などが多い。バースの特性上それが当たり前のことだった。

 珍しいなと思いながら説明文を読んでみる。

 "あなただけの思い出になる出会いをこのアプリで叶えましょう!これまでにない出会いの提供を。"

 バースの関係ない多様な出会いを、というのがこのアプリのコンセプトらしい。

 ーーちょっと面白そうだな。

 マッチングアプリ自体は初めてだったが、説明文も他のアプリより親しみやすいしアイコンもパステルカラーでなんだか可愛い。

 そんなに不審なところもないため、咲久は初めてマッチングアプリを始めた。

 この行動を悔やむ日が来るとは知らず、咲久は教授の授業をBGMにして自己紹介欄を書き始めた。



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