多分嫌いで大好きで

ooo

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 あぁそっか。このアプリはセカンドパートナーを探すもの。

 "あなただけの思い出になる出会いをこのアプリで叶えましょう!これまでにない出会いの提供を。"

 初めてのアプリに、初めての一目惚れ。エスコートされる嬉しい気持ち。
 その全てに持っていかれて、そのことを忘れていた。そして嫌にも思い出さずにはいられなかった。

 Rさんが俺に見せた車は某車会社のファミリーカーだった。丁寧にもバックガラスには"Baby In Car"の黄色と黒のシンプルなステッカーも貼ってある。

 ーーこの人、妻子持ちだったんだ。

 あの全てを包み込むような包容力も、聞き上手な優しい態度も、全部全部その対象が居たからだったんだ。
 一目惚れだなんて1人で舞い上がった自分が恥ずかしい。

 震えそうな足を動かして車に乗る。

 どうして俺は乗ってしまったんだろう。「番はいるの?」そう一言聞けばいい。それでいると言われればそれまでだ。セカンドパートナーといえば聞こえはいいが、ただの不倫相手に変わりない。
 アルファは何人も番が作れる。が、オメガが番を作れるのは生涯で1人だけ。だからアルファがセカンドパートナーを作るのは暗黙の了解みたいなものだ。
 それは分かっていても俺は不倫は嫌いだ。誰かと愛しい人を共有するなんて考えられなかった。

 聞け。番はいるのかと。

「車大きいね~」

 自分でも馬鹿だと思った。開いた口からは車の感想しか出なかった。

「大きい車が好きなんだよ」

 助手席のドアのペットボトルホルダーに入ったままの500mlのコーヒー。これがもう答えなのかもしれない。助手席に乗る存在がいる。そしてそれは多分この人が世界で1番大切にしたい存在に違いない。

 俺の頭や心はたしかに困惑していいるのに、Rさんとの会話はさっきと同じようにできている。
 車は見慣れた風景を走っているだけなのにまるで異世界に感じる。趣味の話、友達の話、さっきと同じように会話は弾んでいる。
 聞きたいのに聞けないのは俺がまだRさんと一緒にいたいと思っているからなのかもしれない。

 ーーごめんなさい

 本当にごめんなさい。でも今だけは夢を見ていたい。忙しくすぎる生活で、1人で生きなきゃいけないというプレッシャーで、押しつぶされそうだった何かがRさんで救われた気がした。
 知り合ってすぐで会ったのもさっきで、俺はRさんのことを何も知らない。

 ごめんなさい

 だから何も知らないままで、知らないふりをさせて下さい。
 それでもちゃんと自分にけじめをつける。この夢が終わったらちゃんと離れよう。

 まだ離れられるから





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