多分嫌いで大好きで

ooo

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 はぁはぁ…

 窓やカーテンは閉め切っていて、アパートの扉の鍵にはチェーンまでつけている。物が少ないはずの部屋がいまはごった返すように散らかっていて、テーブルの上や敷布団の横にも薬やペットボトルが散乱していた。

 咲久は息を切らしながら布団にくるまる。

 抑制剤が効かない。

「い、いつもなら効くのに、なんで」

 昨日の夜、発情期の予定日は明日だからと抑制剤を飲んだ。でも朝起きてから体が重くぼーっとするような感覚があった。
 発情期来るかなと思って朝にも抑制剤を飲んだ。
 いつもなら効いている。なのに今回は熱が下がろうとしない。

 体も重いし、頭も痛い。
 震える手で咲久はペットボトルを手に取り、残っていたお茶を一気に飲む。

 ーーおかしい、喉が渇く

 いつもと違う発情期についていけない。

 抑制剤が効かないなら行為をして納めればいい。そう思うのに、自分ですることすら億劫な程に体が動かなかった。

「う、お、おぇ""」

 ベチャベチャと布団の上に口から出たものを撒き散らす。まだ胃に残っている食べ物が勢いよく出てくる。

 ガシャン!

 せめてトイレで吐こうと立ち上がった時だった。視界がふらつきテーブルの方に倒れた。

「い、ったぁ」

 テーブルに手をついたからよかったものの、このまま倒れていたら頭から打っていた。
 テーブルの上にあげていたものは床に転がり、自分の吐いた汚物で部屋は臭い。
 もう何もかもやる気を失い、咲久は布団に倒れ込んだ。

 片付けなきゃ、ペットボトルを用意しなきゃ、そう思うのに体は動かない。
 今までこんなことなんて本当に無かった。そして自分の発情期はやっぱり体調にくるほうなんだと再認識する。

 暑いのか寒いのかよくわからない体温で、とりあえず汗をかきながら布団にくるまっていると咲久のスマホがピコンとなった。

 その音と画面の明るささえ今の咲久には鬱陶しい。

「くっそ、誰だよ」

 無視しても良かったが、なんとなくスマホの画面を見てみる。

 その瞬間急激の咲久の体温は上がり、フェロモンが部屋中に広がったのが自分でも分かった。

「久しぶり、今日会わない?」

 その連絡は咲久がもう会わないと決めたRだった。初めて会った時一目惚れし、Rに相手がいると察してすぐ諦めた。
 あの日の夜、別れてから連絡はしていなかった。自分がしていい立場じゃないと分かっていたし、これ以上連絡を取ったら離れたくなくなってしまうから。

 上がる体温、荒くなる息の早くなる心臓の音。

 会いたい

 会いたい会いたい会いたい

 この時理性があればよかった。意識がはっきりしていたらよかった。使用回数を超えてでも抑制剤を飲んでいたらよかった。

 "本能"という言葉で片付けれるくらい簡単なものだったらよかったのに


 俺は意識を手放した。





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