未来スコープ  ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―

米田悠由

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エピソード3:深まる疑念と新たな謎 Ver.10

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蓮は藍が旧校舎とは反対方向へと歩き出すのを見届けてから、足早に校舎へと戻った。
向かう先は、学園の最上階にある理事長室だ。
重厚な扉の前で深呼吸をし、ノックをしようと手を上げた、その時だった。

「あれ、九条院くん?」

背後から聞こえた声に、蓮は思わず動きを止めた。
振り返ると、そこには藤崎優花が立っていた。
彼女は訝しげな表情で蓮の背後、理事長室の扉を見つめている。

「藤崎さん……どうしたの、こんなところに?」

理事長室へと視線を向けたまま言った。

「私、生徒会室に用事があって。この階にあるから来たんだけど……九条院くんは、理事長室に何か?」
「いや、その……ちょっと、進路のことで用事があって……」
優花の目は細められた。
「ふーん……進路、ね。理事長室で、へぇ」
優花はそれ以上追及せず、蓮から理事長室へと視線を移し、じっと見つめた後、くるりと踵(かかと)を返して去っていった。
蓮は、優花の背中が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。

翌日の放課後、教室では白石藍が机に突っ伏して未来スコープを眺めていた。藤崎優花はその隣で参考書を広げている。

「あ、蓮くん!」

廊下を通りかかった九条院蓮の姿を見つけ、藍が顔を上げて声をかけた。

「白石さん、藤崎さん」
蓮が声をかけると、藍は嬉しそうに言った。
「ねえねえ、昨日の旧校舎、結局何も見つけられなかったねー」
「うん、残念だったね。でも、また行こう、白石さん」
優花はちらりと蓮に視線を向けた後、思い出したように口を開いた。
「そういえば、九条院くんさ、この間、オーパーツのこと、ど忘れしたって言ってたよね?思い出した?」
優花の言葉に、藍が首を傾げる。
「あ!優花から聞いたけど、もちろん、ど忘れなんでしょ!オカルト好き蓮くんなら絶対言えるよねー!」
「もちろんだよ。ど忘れって言ったじゃん。ど忘れなんだから、すぐ思い出したさ」
蓮は自信ありげに言うと、淀みなく言葉を紡ぎ始めた。
「例えば、コスタリカの石球、アンティキティラ島の機械、バグダッド電池、ネブラ・ディスク、サッカラの鳥、そして……」
スラスラと10個のオーパーツを挙げ終えた蓮に、藍は目を丸くした。
「蓮くん、すごい!優花、やっぱど忘れだよー!ね!」
藍は興奮気味に優花に同意を求める。
しかし、優花の表情はどこか訝しげなままだった。
「えぇっ!?どういうこと!?なんでそんなに言えるの!?」
優花は食い下がるように問い詰める。
「だから、ど忘れだってば。ほら、急に聞かれたら誰だってちょっと戸惑うことあるだろ?」
蓮はあくまで涼しい顔で答える。優花は納得がいかないといった様子で、さらに畳みかけた。
「じゃ、じゃあムーは?ムーのこと知らなそうだったじゃん!」
蓮はふっと笑みを浮かべた。
「ムー?もちろん知ってるよ。
月刊ムーは、オカルト界のバイブルだ!
創刊は1979年、学習研究社、現・学研ホールディングスから発行され、現在はワン・パブリッシングが刊行を担っていて、
UFO、UMA、超能力、古代文明、スピリチュアル、予言など、ありとあらゆる超常現象を取り上げていて、
最近の特集では、アトランティスの新説に関する考察や、ツングースカ大爆発の真相を追った記事が印象的だったね。
ムーのロゴマーク――あの“目”のデザインにも、ちゃんと意味があるんだよ。視覚心理に基づいたもので、表紙の中で一番最初に目が合うように工夫されていて……」

蓮の口から、止まることなくムーに関する知識が溢れ出す。
その詳しさに、藍は目を輝かせた。

「やばっ、蓮くん詳しすぎ!私より全然知ってるじゃん!」

藍が感嘆の声を上げる一方で、優花は蓮のあまりにも完璧な知識披露に、さらに不信感を募らせていた。
(いったいどういうこと?これは一夜漬けレベルで覚えられる知識じゃないわ!本当にど忘れだったっていうの!?)

「ねえ、蓮くん!今日も旧校舎の調査行かない?今度はもっと奥まで行ってみようよ!」

藍は目をキラキラさせながら蓮に提案し、優花にも視線を向けた。

「優花もどう?今度は絶対、何か見つかる気がするんだ!」

優花は蓮と藍の顔を交互に見比べ、やがて小さく首を振った。

「うーん……私は、いいや。都市伝説は、たまに付き合うくらいで十分だし。それに、そろそろ期末テストも近いから、勉強に集中したいしね」

優花はわざとらしく参考書を指差した。
「そっかー、残念!じゃあ、蓮くん、行こう!」
藍は少し残念そうにしながらも、すぐに蓮に笑顔を向けた。
「うん、行こう、白石さん!」
蓮は優花にちらりと視線を向けた後、藍と共に教室を後にした。
優花は二人の後ろ姿を、複雑な表情で見送っていた。
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