12 / 17
エピソード10:不正の露呈、闇への招待 Ver.4
しおりを挟む
翌日の朝、藍の部屋。
重い頭を抱えながら、ベッドから起き上がった。
昨日の蓮の裏切りと、自分だけ退学になった絶望が、鉛のように心にのしかかっている。
気を紛らわそうと、つけていたテレビを消そうとリモコンに手を伸ばした、その時だった。
「速報です!」
アナウンサーの緊迫した声が響き渡り、画面がニュース速報に切り替わった。
「本日未明、神奈川県西部にある私立湘南青葉学園(しりつしょうなんあおばがくえん)の現理事長、および校長が、学校法人会計における大規模な金銭的不正容疑で逮捕されました。
先ほど、理事長が自宅で警察に連行される姿が確認されています」
テレビに映し出されたのは、自宅から出てきた理事長が、警察官に囲まれながら、無言で車に乗り込む姿だった。
「捜査関係者によりますと、理事長は学園創設以来続く不正の黒幕であり、その組織的な関与が強く疑われています。
この不正により、学園の財政は破綻寸前となっており、湘南青葉学園は本日より休校措置が取られています。
倒産の危機に瀕しており、今後の動向が注目されます」
藍「えっ……?逮捕……?休校……?倒産……?」
混乱の中、藍の頭に昨日の蓮の言葉が響いた。
「今は言えない。でも、僕を信じてほしい」。
そして、蓮が証拠を持って去って行ったこと。
もしかして、これは……蓮がやったの?
頭が追いつかないまま、招待状の時間が迫っていることに気づいた。
休校のため、学園には誰もいないはず。
それなのに、なぜ今日、「感謝の食事会」?
恐怖を感じながらも、真実を知るために学園の正門へと向かうことにした。
学園の正門前は、ひっそりと静まり返っていた。
退学処分を受けた自分には、休校の連絡さえ来ていない。
いつもなら生徒で賑わうはずの場所が、今は誰もいない。
まるでゴーストタウンのようだ。
藍は、不安な気持ちで立っていた。
その時、背後から聞き慣れた声がした。
「藍!あんた、本当に来たのね!」
振り返ると、息を切らした優花が立っていた。
藍は優花がここにいるとは思っていなかったため、驚いて目を見開いた。
「優花!?なんでここに……!?」
「何言ってんのよ!こんな怪しい食事会、絶対罠に決まってるわ!
あんたを一人で行かせるわけないじゃない!
私、あんたを助けに来たのよ!」
優花は藍の手をぎゅっと握り、必死な顔で訴えた。
その時、二人の目の前に、黒光りする高級車がゆっくりと停車した。
漆黒のボディは陽光を鈍く反射し、まるで獲物を狙う猛獣のようだった。
「やっぱりあの車……!」
優花の顔に、警戒の色が濃く浮かび上がる。
運転席のドアが開き、黒ずくめのスーツに身を包んだ男性が降りてきた。
彼は藍たちの方にまっすぐ歩いてくる。
「白石藍様、お迎えに参りました」
優花は藍の前に立ちはだかるようにして、男性を睨みつけた。
「ちょっと待ちなさいよ!
何よ、この車!
何なの、あなたたち!」
男性は優花の剣幕にも動じず、静かに頭を下げた。
「怪しいものではございません。
白石様の安全をお約束いたします。
あなたさまはどうぞ、お引き取り……」
その瞬間、男性のスマホが震え、電話がかかってきた。
男性は軽く会釈すると、電話に出て何やら話し始めた。
数秒後、電話を終えた男性は、藍と優花に向き直った。
「藤崎優花様でございますね?
大変失礼いたしました。
あなた様も正式に招待させていただきます。
どうぞ、白石様とご一緒にお乗りください」
「えっ!?私が……招待!?」
優花は驚きのあまり、目を丸くした。
藍は戸惑った。
恐怖心はある。
だが、この状況で逃げ出しても、何も分からないまま終わってしまう。
それに、この男性の雰囲気に、なぜか本当に「怪しくない」と感じてしまう自分がいた。
そして、何より優花が隣にいてくれることが、藍に勇気を与えた。
「……優花、私、行く」
「藍っ!正気なの!?絶対おかしいって!こんなの、行くなんて!」
「分かってる……。でも、もう私、何があったのか、全部知りたいの……。
だから、行く」
優花は、藍の真っ直ぐな瞳を見つめた。
迷いながらも、最後は顔を歪ませ、大きくため息をついた。
「分かったわよ!あんたがそこまで言うなら……こうなったら、私も腹をくくって一緒に行ってやるんだからね!」
優花はそう言うと、諦めと強い覚悟が入り混じった顔で、しかし力強く藍の腕を掴んだ。
男性は静かに後部座席のドアを開けた。
二人は顔を見合わせ、覚悟を決めたように、黒塗りの高級車の後部座席に乗り込んだ。
重い頭を抱えながら、ベッドから起き上がった。
昨日の蓮の裏切りと、自分だけ退学になった絶望が、鉛のように心にのしかかっている。
気を紛らわそうと、つけていたテレビを消そうとリモコンに手を伸ばした、その時だった。
「速報です!」
アナウンサーの緊迫した声が響き渡り、画面がニュース速報に切り替わった。
「本日未明、神奈川県西部にある私立湘南青葉学園(しりつしょうなんあおばがくえん)の現理事長、および校長が、学校法人会計における大規模な金銭的不正容疑で逮捕されました。
先ほど、理事長が自宅で警察に連行される姿が確認されています」
テレビに映し出されたのは、自宅から出てきた理事長が、警察官に囲まれながら、無言で車に乗り込む姿だった。
「捜査関係者によりますと、理事長は学園創設以来続く不正の黒幕であり、その組織的な関与が強く疑われています。
この不正により、学園の財政は破綻寸前となっており、湘南青葉学園は本日より休校措置が取られています。
倒産の危機に瀕しており、今後の動向が注目されます」
藍「えっ……?逮捕……?休校……?倒産……?」
混乱の中、藍の頭に昨日の蓮の言葉が響いた。
「今は言えない。でも、僕を信じてほしい」。
そして、蓮が証拠を持って去って行ったこと。
もしかして、これは……蓮がやったの?
頭が追いつかないまま、招待状の時間が迫っていることに気づいた。
休校のため、学園には誰もいないはず。
それなのに、なぜ今日、「感謝の食事会」?
恐怖を感じながらも、真実を知るために学園の正門へと向かうことにした。
学園の正門前は、ひっそりと静まり返っていた。
退学処分を受けた自分には、休校の連絡さえ来ていない。
いつもなら生徒で賑わうはずの場所が、今は誰もいない。
まるでゴーストタウンのようだ。
藍は、不安な気持ちで立っていた。
その時、背後から聞き慣れた声がした。
「藍!あんた、本当に来たのね!」
振り返ると、息を切らした優花が立っていた。
藍は優花がここにいるとは思っていなかったため、驚いて目を見開いた。
「優花!?なんでここに……!?」
「何言ってんのよ!こんな怪しい食事会、絶対罠に決まってるわ!
あんたを一人で行かせるわけないじゃない!
私、あんたを助けに来たのよ!」
優花は藍の手をぎゅっと握り、必死な顔で訴えた。
その時、二人の目の前に、黒光りする高級車がゆっくりと停車した。
漆黒のボディは陽光を鈍く反射し、まるで獲物を狙う猛獣のようだった。
「やっぱりあの車……!」
優花の顔に、警戒の色が濃く浮かび上がる。
運転席のドアが開き、黒ずくめのスーツに身を包んだ男性が降りてきた。
彼は藍たちの方にまっすぐ歩いてくる。
「白石藍様、お迎えに参りました」
優花は藍の前に立ちはだかるようにして、男性を睨みつけた。
「ちょっと待ちなさいよ!
何よ、この車!
何なの、あなたたち!」
男性は優花の剣幕にも動じず、静かに頭を下げた。
「怪しいものではございません。
白石様の安全をお約束いたします。
あなたさまはどうぞ、お引き取り……」
その瞬間、男性のスマホが震え、電話がかかってきた。
男性は軽く会釈すると、電話に出て何やら話し始めた。
数秒後、電話を終えた男性は、藍と優花に向き直った。
「藤崎優花様でございますね?
大変失礼いたしました。
あなた様も正式に招待させていただきます。
どうぞ、白石様とご一緒にお乗りください」
「えっ!?私が……招待!?」
優花は驚きのあまり、目を丸くした。
藍は戸惑った。
恐怖心はある。
だが、この状況で逃げ出しても、何も分からないまま終わってしまう。
それに、この男性の雰囲気に、なぜか本当に「怪しくない」と感じてしまう自分がいた。
そして、何より優花が隣にいてくれることが、藍に勇気を与えた。
「……優花、私、行く」
「藍っ!正気なの!?絶対おかしいって!こんなの、行くなんて!」
「分かってる……。でも、もう私、何があったのか、全部知りたいの……。
だから、行く」
優花は、藍の真っ直ぐな瞳を見つめた。
迷いながらも、最後は顔を歪ませ、大きくため息をついた。
「分かったわよ!あんたがそこまで言うなら……こうなったら、私も腹をくくって一緒に行ってやるんだからね!」
優花はそう言うと、諦めと強い覚悟が入り混じった顔で、しかし力強く藍の腕を掴んだ。
男性は静かに後部座席のドアを開けた。
二人は顔を見合わせ、覚悟を決めたように、黒塗りの高級車の後部座席に乗り込んだ。
12
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~
☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた!
麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった!
「…面白い。明日もこれを作れ」
それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる