1 / 260
第1話 不運な男、佐山光喜
しおりを挟む
(地球2023年4月28日)
繰り返すような代わり映えのない日々。
俺はスマホの日付が変わるのを無感動に見つめ、多くの人が乗る終電に揺られていた。
駅の構内は不夜城のごとく煌々と明かりが灯っている。
まばらな人影に、世の中は寝静まりつつある午前0時過ぎだとため息交じりに実感してしまう。
電車を降り改札を抜け、薄暗くなっていく路地を通りコンビニへ吸い込まれるようにたどり着く。
駅からいつもの『くたびれたお姉さん』と『とんがっているお兄ちゃん』と一緒に。
…今日はいつもより一人多いな。
見るからに怪しい、黒ずくめの男も少し遅れて入ってきた。
ふとそんなことを思いながら、今日も今日とて遅い晩飯を買うためにコンビニの弁当コーナーを物色した。
一般的な時間に晩飯を食べたのは一体いつだったか…
……思い出せない。
察するに今の状況は相当おかしい事になっているのだろう。
…麻痺っていると言い換えたほうが良いのかもしれないが。
案の定、こんな時間だとロクな弁当も残っていない。
仕方なく唯一残っていた幕の内弁当に、インスタント味噌汁、お茶をカゴに入れ、レジへと向かった。
この数週間毎日こんな遅い時間に来るせいか、顔なじみになりつつある店員さんが、
「すみません。新しい弁当などは入荷が4時過ぎなんですよ」
と教えてくれた。
前も聞いたよね。
ハハ…
会計を済ませレジ袋に入れてもらい、アイコンタクトし会釈。
まあ残念ながら、相手は50歳過ぎの髪の毛の寂しいおっさん店員ではあるが。
ややふらつきながらも空を見上げれば、うっすらと星の瞬きが確認できる。
ああ、故郷にいたころに見上げた星空と比べれば、なんと趣のない夜空だろうか。
「そういや実家にも数年帰ってないなあ。何やってんだろうな俺は…」
最後に里帰りしたのはいつだったか。
やばい、思い出せん。
…姪っ子の七海ちゃんに「おじさん、ださーい」とか言われたっけ。
ああ。
最近茜ちゃんのお見舞いにも行けてないなあ。
みんな元気かなあ。
まあ便りがないのは元気な証拠っていうしなあ。
…姉ちゃんが交通事故で亡くなってもう20年以上か…はあ。
姉ちゃんごめん。
しばらく墓参り行けそうもないや。
「はあっ」
ため息一つついて、家路へと重い足を進めた。
ぶつぶつと独り言ちながら、ふらつく足取りで1Kのボロアパートの自宅のカギを開け、すっかり物置と化したテーブルの一角に品物の入ったレジ袋を投げ置き、スーツを脱ぎ捨て万年床になっている布団に倒れこんだ。
俺の後をつけていた、黒ずくめの男に気づかないまま。
「…明日は契約先とのコンペだったなあ。相手は佐々木部長か…はあ」
あの人苦手なんだよなあ、などぶつぶつ言いながらしばらく突っ伏した状態でいた。
しかし現実的に明日も…いや、もう今日か。
というかあと数時間で仕事に行かなくてはならず、緩慢な動きで起き上がり先ほど購入した弁当をレジ袋から取り出した。
「ああ?…ポットのお湯が無くなってる…沸かすのも面倒だ。コイツだけ食うか…」
とりあえず味気のない弁当をペットボトルのお茶で無理やり流し込んだのだった。
※※※※※
俺、佐山光喜はアラフォーの社畜だ。
中肉中背でどこにでもいるような地味目な顔立ち。
学生時代の影響でやや人間不信になっているからか、同僚曰く「キョドりすぎ。ウケる!」…そんな目つきらしい。
散髪に行く時間がなかなか取れず、ぼさぼさの髪をとりあえずワックスでごまかしつつ、よれよれのスーツと色あせた革靴が、一層疲労感を醸し出している。
たいした特徴もなく社交性も低いため職場では『人畜無害さん』などと呼ばれていた。
所謂『ブラック企業』に勤めて早15年。
会社の歯車として『生きたふり』をしているような、面白みのない日常を過ごしていた。
何より俺はとことんついていない。
何か悪い物でもついているのではなかろうか?
「ああっ、もうすぐ2時になる…一応仮眠だけでも取らないと」
俺は『アラームを5回ほど5分おきにセット』しているスマホを確認し、かろうじてつないでいた意識を手放し布団に倒れこんだ。
普段あまり鳴かない正面の邸宅の犬が、やけに煩いなと思いながら……
繰り返すような代わり映えのない日々。
俺はスマホの日付が変わるのを無感動に見つめ、多くの人が乗る終電に揺られていた。
駅の構内は不夜城のごとく煌々と明かりが灯っている。
まばらな人影に、世の中は寝静まりつつある午前0時過ぎだとため息交じりに実感してしまう。
電車を降り改札を抜け、薄暗くなっていく路地を通りコンビニへ吸い込まれるようにたどり着く。
駅からいつもの『くたびれたお姉さん』と『とんがっているお兄ちゃん』と一緒に。
…今日はいつもより一人多いな。
見るからに怪しい、黒ずくめの男も少し遅れて入ってきた。
ふとそんなことを思いながら、今日も今日とて遅い晩飯を買うためにコンビニの弁当コーナーを物色した。
一般的な時間に晩飯を食べたのは一体いつだったか…
……思い出せない。
察するに今の状況は相当おかしい事になっているのだろう。
…麻痺っていると言い換えたほうが良いのかもしれないが。
案の定、こんな時間だとロクな弁当も残っていない。
仕方なく唯一残っていた幕の内弁当に、インスタント味噌汁、お茶をカゴに入れ、レジへと向かった。
この数週間毎日こんな遅い時間に来るせいか、顔なじみになりつつある店員さんが、
「すみません。新しい弁当などは入荷が4時過ぎなんですよ」
と教えてくれた。
前も聞いたよね。
ハハ…
会計を済ませレジ袋に入れてもらい、アイコンタクトし会釈。
まあ残念ながら、相手は50歳過ぎの髪の毛の寂しいおっさん店員ではあるが。
ややふらつきながらも空を見上げれば、うっすらと星の瞬きが確認できる。
ああ、故郷にいたころに見上げた星空と比べれば、なんと趣のない夜空だろうか。
「そういや実家にも数年帰ってないなあ。何やってんだろうな俺は…」
最後に里帰りしたのはいつだったか。
やばい、思い出せん。
…姪っ子の七海ちゃんに「おじさん、ださーい」とか言われたっけ。
ああ。
最近茜ちゃんのお見舞いにも行けてないなあ。
みんな元気かなあ。
まあ便りがないのは元気な証拠っていうしなあ。
…姉ちゃんが交通事故で亡くなってもう20年以上か…はあ。
姉ちゃんごめん。
しばらく墓参り行けそうもないや。
「はあっ」
ため息一つついて、家路へと重い足を進めた。
ぶつぶつと独り言ちながら、ふらつく足取りで1Kのボロアパートの自宅のカギを開け、すっかり物置と化したテーブルの一角に品物の入ったレジ袋を投げ置き、スーツを脱ぎ捨て万年床になっている布団に倒れこんだ。
俺の後をつけていた、黒ずくめの男に気づかないまま。
「…明日は契約先とのコンペだったなあ。相手は佐々木部長か…はあ」
あの人苦手なんだよなあ、などぶつぶつ言いながらしばらく突っ伏した状態でいた。
しかし現実的に明日も…いや、もう今日か。
というかあと数時間で仕事に行かなくてはならず、緩慢な動きで起き上がり先ほど購入した弁当をレジ袋から取り出した。
「ああ?…ポットのお湯が無くなってる…沸かすのも面倒だ。コイツだけ食うか…」
とりあえず味気のない弁当をペットボトルのお茶で無理やり流し込んだのだった。
※※※※※
俺、佐山光喜はアラフォーの社畜だ。
中肉中背でどこにでもいるような地味目な顔立ち。
学生時代の影響でやや人間不信になっているからか、同僚曰く「キョドりすぎ。ウケる!」…そんな目つきらしい。
散髪に行く時間がなかなか取れず、ぼさぼさの髪をとりあえずワックスでごまかしつつ、よれよれのスーツと色あせた革靴が、一層疲労感を醸し出している。
たいした特徴もなく社交性も低いため職場では『人畜無害さん』などと呼ばれていた。
所謂『ブラック企業』に勤めて早15年。
会社の歯車として『生きたふり』をしているような、面白みのない日常を過ごしていた。
何より俺はとことんついていない。
何か悪い物でもついているのではなかろうか?
「ああっ、もうすぐ2時になる…一応仮眠だけでも取らないと」
俺は『アラームを5回ほど5分おきにセット』しているスマホを確認し、かろうじてつないでいた意識を手放し布団に倒れこんだ。
普段あまり鳴かない正面の邸宅の犬が、やけに煩いなと思いながら……
42
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる