創造主である究極の魔王は自分が創造した異世界に再転生する~気付いた時にはハーレム状態?運命の人も勇者も神々も、俺の子を欲しがるのだが?~

たらふくごん

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第90話 世界の色がなくなる日

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(新星歴4823年4月28日)

 「本当に行くのですか?」

 ネルは心配そうに俺に問いかけた。

 「ああ、勇者シルビー・レアンのお披露目だ。行かないわけにはいかないだろ?」
 「ですが………」

 俺達は今ギルガンギルの塔の中に設置した聖域の中にいた。

 グースワースの要塞をオーバーホールするために、俺と、ネル、ノニイ、エルマ、カリン、ミュールス、ロロン、コロン、ムク、ナハムザート、カンジーロウの11名が聖域に遊びに来ている『設定』だ。

 リナーリアは食材の点検のため残してあることにしてある。
 彼女の食に対する思いが強いのは、全員知っているからだ。

 「ネルだって、さんざん茜に救われているんだ。あいつの意思の形を確認してやろう」
 「………はい…………でも、いやな予感がします」

 鋭いな。

 さすが『魔王の運命の人』の称号は強力だな。
 複数回施してある【虚実の権能】がすでに揺らいでいる。

 茜は『もう一人の俺』に左腕と真核の大半を奪われて、アースノートの力を借りて『存在分離』というチートで、存在値を極限まで落とした別人格を形成していた。

 奴に見つからないために。

 ………まあ「俺」もそうだが。

 今の俺は『仮初擬似改造済みヒューマン』になっている。
 真核の中心である『佐山光喜』を隠ぺいして。

 「ノアーナ様?ルースミールは信用できるのでしょうか……あなたを見る目……寒気がします」

 「ああ、ルーミーは味方だ。まあ、アルテミリスが出られない以上、変わりは必要だからな。制限した権能も付与してある」

 「じゃあ役割を確認するぞ。ムク」
 「はっ」

 俺は残された大切な仲間に目を向ける。

 「お前は何かあったら一番にネルを守れ。そしてグースワースへ飛ぶんだ。頼んだ」
 「かしこまりました」

 「ナハムザート。お前は最悪の場合はブレスで隙を作れ。そしてグースワースへ飛ぶんだ。絶対に守れ」
 「……大将、式典に行くんですよね?……まるで戦場へ行くような気配だ」
 「ハハハ、知っているだろ?俺は心配性なだけだ。問題はないさ」

 「………へい」

 不味いな。
 流石に指示が不穏すぎるか。

 「カンジーロウ、お前の制限を一部解除する。何かあったら『強制幻覚』を発動して、グースワースへ飛べ。まあ、何も起こらないだろうが。あくまで保険だ」

 「……わかりました。従います」

 すまない。

 俺はお前たちの意思を無視した強制の呪縛をかけている。
 そうと気づかれないぎりぎりで。

 ネルが心配そうに俺を見つめていたが、俺は気づかないふりをした。

 本当は今すぐ抱きしめたい。
 ……………しばらく会えないのだ。

 もしかしたら……………永遠に。

 グースワースの皆には、聖域とアルテミリス渾身の【虚実の権能】を重ね掛けしてある。
 本当なら精神が崩壊するレベルだが『魔王に近しもの』の能力で保護してある。

 先日の悲劇を、忘れさせるために。
 いくつかの権能と俺の最後の真核をリンクさせ、術式を組んだ。

 きっと俺は恨まれるだろう。
 だが、理解してしまった。

 今のままでは確実に皆殺されて奴に食われる。
 しかも奴は本体ですらない。

 世界が滅ぶ。

 俺が知らない悪意に対抗するには、俺が直接魂に刻まなければならない。
 他人と共有はできない。

 それだけで薄れるからだ。

 分の悪い賭けだ。
 アースノートの解析でも、成功率は20%を下回る。

 俺はこの世界で大切なものを作り過ぎた。

 だから今の俺では奴に勝てない。

※※※※※

 レイトサンクチュアリ宮殿には、多くの国賓をはじめ、いくつかの有力種族の長たちが今から始まる式典の為、宮殿の大広間で開式を待っていた。

 会場は多くの光神の眷属たちが美しい装飾に身を包み、整列し始めた。
 徐々に荘厳な雰囲気に包まれていった。

 その後世界を揺るがす大事件が起こるとはだれも想像していなかった。

※※※※※

 神々への謁見は、後日行われることになっており、本日出席するのは一部権能を授かった『光神ルースミール』だけだ。

 俺とネルは開式直前に、ルースミールとシルビー・レアンに挨拶をするため、控室を訪れた。

 「ようこそおいでくださいました。極帝の魔王ノアーナ様………等星の極姫ツワッド様も」

 張り付いたような笑顔と、悍ましい何かを隠したような瞳でルースミールは口を開いた。

 シルビー・レアンは無表情で俺たちを見つめるだけだ。

 「ああ、ルーミー。お招きありがとう。勇者シルビーも久しぶりだ」

 俺はルースミールと握手を交わし、シルビー・レアンを見つめた。

 「………お久しぶりです。ノアーナ様」

 表情の無い様な、無機質な声色でシルビーは答えた。

 やはり抜け殻だ。

 そう設定したが違和感を覚える。
 だがもう調整する時間はない。

 神々を信じるしかない。

 突然ルースミールが俺に抱き着いて来た。
 自らの胸を押し付けるようにして、俺に体をこすりつける。

 ネルから表情が消えた。

 「あああ、ノアーナ様……わたくしはいつでも体を捧げる準備はできています。どうか儀式が終わったら、わたくしの寝所を訪れてくださいませ」

 「魅力的な提案だが、俺はここにいるネルを愛している。お前も立場があるんだ。誤解される言い回しは控えた方が良い」

 「……本心ですのに……まあ今はこれで我慢します」

 触れた瞬間に、呪詛をかけられた。
 心を縛る呪詛だ。

 どうやらルースミールは奴の手に落ちているらしい。

 だが、すでに俺の真核には術式が刻まれている。
 この程度の呪詛は問題ない。

 ………術式を発動させるには、キーとなるシルビーの聖剣によるアクセスが必要になるよう組み込んでいるからだ。

 チラとシルビーを見る。
 微かにうなずく姿を見て、俺は決意を胸にした。

 今から始まる茶番は、きっと皆を傷つける。

 だが……………これしかないんだ。

※※※※※

 そして式典が始まる―――

 俺はシルビーの持つ聖剣に貫かれ、一番大切なネルが狂いそうに、絶望していく様を、目に、真核に焼き付けて…………

 ルースミールの擬似的な『真実の権能』で存在をバラバラにされ、消滅する。

 暴れるネルを何とか抱きかかえ、ムクが転移して消えていく様を目にしながら。
 身が引き裂かれそうな絶望を真核に刻み込んで………

※※※※※

 わたくしはずっと不安で仕方がなかった。

 ノアーナ様の存在が、あまりにも儚くて………
 確認しても弾かれる。

 いつも見えるのに………

 そして式典が始まった。
 突然シルビーが聖剣でノアーナ様を貫いた。

 「っ!?あああ…!!??……ああ……」

 涙があふれた。

 「ブハッ!!・・・・・・くっ………かはっ………」

 愛するノアーナ様が貫かれ血を吐いて、崩れ落ちた……

 突然ムクに羽交い絞めにされた
 私は夢中で振りほどく
 でも驚くほど強い力で抜け出せない

 ルースミールの権能が紡がれた

 ノアーナ様が分解されていく

 「ああああああっっ!…ダメ……いやあ……ああああああああっっ?!!!」

 こちらを見て寂しそうに微笑むノアーナ様が……
 私の目の前で消えていく…

 「ああっ、あああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」

 どんどん粒子になっていく…

 「あああっ、あああああああああっ!!!ノアーナ様ああああ!!!!うあああああああっっ!!!」

 私を包んでくれた優しいノアーナ様が…

 「あああああっっ、ああっ、いやあああああああああっっっ!!!!!!!!」

 優しい瞳で愛してるっていつも言ってくれたノアーナ様が…

 「あっ??!!!!うあああああああっっっ、いやああああああああああああ!!!!!!!」

 なくなってしまった……

 そして…………



 わたしの世界は色を失った。

※※※※※

 この事件は虚実により、魔王が乱心し勇者シルビーと光神ルースミールが討ち取り、世界を救ったことと認識された。

 魔王ノアーナは、滅ぼされたという虚実を維持させたまま。


 そしてノアーナの居ない世界は、どうにか滅びを回避していた。
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