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第135話 ダールとルナの恋心
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(新星歴4818年4月18日)
ダールがハートルイス侯爵の次女である、クラリス・ハートルイスと会うのは実に5か月ぶりのことだった。
愛し合っていた二人が運命の悪戯に翻弄され、引き裂かれたのが昨年の11月の下旬、そして今はもう4月だ。
まさかその間にドルグ帝国が滅びるなど誰一人として予想していなかっただろう。
ダールは確かに皇子にあるまじき、3人の女性を汚し殺害した。
しかし悪意に誘導された結果であったし、何よりクラリスはその話を聞いても彼のことを信じ続けていた。
そして彼女は幼馴染でもある皇女ルルネイアに、懇願していた。
ダリルに会いたいと。
だが徐々におかしくなっていく宮殿の雰囲気に危険を感じていたルルネイアは、皇帝に頼みハートルイス侯爵と次女のクラリスを公務という言い訳を押し付け、モンテリオン王国へ逃がしていた。
そして訪れたドルグ帝国の滅亡。
侯爵の領土もほぼ壊滅してしまっていた。
結果として2人はルルネイアによって助けられていた。
そして国が滅び新たな国としてスタートを切るこのタイミングで、2人を呼び戻した。
国を守るために侯爵の力が必要だったことも本当の事だ。
彼は非常に優秀で何より人民を想うことのできる尊敬する人だったから。
でも本当の目的は。
ダリル第二皇子の死亡を発表。
ダール・ステファンとして伯爵へと爵位を授け、2人の再会を演出した。
悲しいことに包まれ滅びた祖国。
ルルネイアは少しでも明るい話題を提供したかったし、何よりかつて愛し合っていた2人の事が大好きだった。
新しい王女陛下はどうしても2人を合わせてあげたかったのだ。
※※※※※
グースワースをまもなく出ていくダールをドアの陰から涙を浮かべ、ルナが見つめていた。
自分がかつて酷い事をしたのは分かっているし、最近気さくに話しかけられて、舞い上がっていたことを自覚していたルナは、この発表の後悩んでいたダールに自分の心の内を打ち明けていた。
心から愛していると。
でも自分は汚れていて、あなたにはふさわしくない。
そして、クラリスと幸せになれと。
この話を受けるよう、勧めたのは、背中を押し決断させたのは。
ルナだった。
そしてダールは婚約することを決めた。
こっそりのぞいている後ろからルナは突然話しかけられ、心臓が止まるくらい驚いた。
振り向くと優しい顔のカナリアに突然優しく抱きしめられた。
涙が溢れ、止まらない。
ノアーナがかつて言ったようにルナは母親の愛を知らずに育った。
彼女は生まれてまだ物心の付く前に孤児院の玄関に捨てられていた。
孤児院でも優しい人はいた。
でも多くの子供を見なければいけないシスターは、成長が早く賢いメレルナはいつも後回しにされ、気が付けば甘えることなく成長してしまっていた。
だからノアーナがカナリアに対しそのことを言ったとき本当に驚いたものだ。
もう自分は20歳だ。
(いまさら…)
そんな気持ちでいた。
でも、カナリアにやさしく微笑まれたとき、確かに胸の中で知らない感情が生まれたのを自覚していた。
「ルナ、わたしはあなたを尊敬しますよ。あなたは決して臆病でも、汚い心を持っているわけではありません。心の優しい、わたしの可愛い娘です」
カナリアはそういって苦しいくらいにルナを抱きしめてくれる。
もうだめだった。
どうしても涙が止まらなかった。
優しいぬくもりに包まれ、心が溶けそうだった。
「ぐすっ……カナ…リア……おかあ…さん……うああ…あああ…うああああああああ」
ルナはまるで幼い子供のように泣きじゃくるのだった。
カナリアが優しく頭を撫でてくれ、悲しさと、嬉しさが止まらなかった。
ルナの初恋が終わりを告げ、そして初めて母の愛に包まれた瞬間だった。
そして愛という膨大なエネルギーと、初めて正面から受け止めた悲しみはルナの真核を今までよりも輝かせた。
※※※※※
まだ城などなくクリートホープの執務室は、ミユルの迎賓館がその機能を兼ねていた。
ダールは今からここの応接室で、ずっと恋焦がれていた愛するクラリスと会う事になっていた。
胸の高鳴りが止まらない。
3人殺めたことでダールはもうあきらめていた。
実際に廃嫡され、流刑になった極悪人だ。
でも…その原因を作ったルナが、俺を押してくれた。
俺はルナが嫌いだった。
どうしても許せなかった。
彼女のせいで罪を犯し、そして帝国が滅びた。
でも彼女はその罪を受け止めていた。
何も持たない孤児上がりの、頼れるもののない弱い彼女が。
彼女も操られていただけなのに。
俺は彼女に、あの強さに。
負けたくないって思ったんだ。
だから俺は今日、胸を張ってクラリスに会うと誓った。
ドアがノックされ、ずっと会いたかった愛しい人が俺の前に現れた。
そして俺の胸に飛び込んでくるクラリス。
俺は夢中で抱きしめていた。
「ああ、クラリス、会いたかった。愛している」
「ダリルさまっ、ああ、お会いしとうございました。ああ、……ダリル様」
二人はずっと抱きしめあっていた。
いつまでも。
そしてダールは。
ルナに感謝の気持ちを感じていた。
もしこの騒動がなかったら。
当然許されることではないし、もちろんあってはいけないことだと理解している。
だけど。
きっとここまでクラリスを愛おしく感じなかった。
気付いてしまっていた。
勿論好きだった。
愛していた。
でもきっと。
それはそういう役割を演じるだけだと諦めていたからだったと。
何故か泣きながら俺に勇気をくれたルナを思い出しながら、ダールはクラリスを抱きしめ続けた。
愛しい彼女の体は柔らかく、そして幸せの匂いがしたんだ。
ルナ、俺は絶対に幸せになるよ。
俺はお前の幸せを。
ずっと祈っている。
ダールがハートルイス侯爵の次女である、クラリス・ハートルイスと会うのは実に5か月ぶりのことだった。
愛し合っていた二人が運命の悪戯に翻弄され、引き裂かれたのが昨年の11月の下旬、そして今はもう4月だ。
まさかその間にドルグ帝国が滅びるなど誰一人として予想していなかっただろう。
ダールは確かに皇子にあるまじき、3人の女性を汚し殺害した。
しかし悪意に誘導された結果であったし、何よりクラリスはその話を聞いても彼のことを信じ続けていた。
そして彼女は幼馴染でもある皇女ルルネイアに、懇願していた。
ダリルに会いたいと。
だが徐々におかしくなっていく宮殿の雰囲気に危険を感じていたルルネイアは、皇帝に頼みハートルイス侯爵と次女のクラリスを公務という言い訳を押し付け、モンテリオン王国へ逃がしていた。
そして訪れたドルグ帝国の滅亡。
侯爵の領土もほぼ壊滅してしまっていた。
結果として2人はルルネイアによって助けられていた。
そして国が滅び新たな国としてスタートを切るこのタイミングで、2人を呼び戻した。
国を守るために侯爵の力が必要だったことも本当の事だ。
彼は非常に優秀で何より人民を想うことのできる尊敬する人だったから。
でも本当の目的は。
ダリル第二皇子の死亡を発表。
ダール・ステファンとして伯爵へと爵位を授け、2人の再会を演出した。
悲しいことに包まれ滅びた祖国。
ルルネイアは少しでも明るい話題を提供したかったし、何よりかつて愛し合っていた2人の事が大好きだった。
新しい王女陛下はどうしても2人を合わせてあげたかったのだ。
※※※※※
グースワースをまもなく出ていくダールをドアの陰から涙を浮かべ、ルナが見つめていた。
自分がかつて酷い事をしたのは分かっているし、最近気さくに話しかけられて、舞い上がっていたことを自覚していたルナは、この発表の後悩んでいたダールに自分の心の内を打ち明けていた。
心から愛していると。
でも自分は汚れていて、あなたにはふさわしくない。
そして、クラリスと幸せになれと。
この話を受けるよう、勧めたのは、背中を押し決断させたのは。
ルナだった。
そしてダールは婚約することを決めた。
こっそりのぞいている後ろからルナは突然話しかけられ、心臓が止まるくらい驚いた。
振り向くと優しい顔のカナリアに突然優しく抱きしめられた。
涙が溢れ、止まらない。
ノアーナがかつて言ったようにルナは母親の愛を知らずに育った。
彼女は生まれてまだ物心の付く前に孤児院の玄関に捨てられていた。
孤児院でも優しい人はいた。
でも多くの子供を見なければいけないシスターは、成長が早く賢いメレルナはいつも後回しにされ、気が付けば甘えることなく成長してしまっていた。
だからノアーナがカナリアに対しそのことを言ったとき本当に驚いたものだ。
もう自分は20歳だ。
(いまさら…)
そんな気持ちでいた。
でも、カナリアにやさしく微笑まれたとき、確かに胸の中で知らない感情が生まれたのを自覚していた。
「ルナ、わたしはあなたを尊敬しますよ。あなたは決して臆病でも、汚い心を持っているわけではありません。心の優しい、わたしの可愛い娘です」
カナリアはそういって苦しいくらいにルナを抱きしめてくれる。
もうだめだった。
どうしても涙が止まらなかった。
優しいぬくもりに包まれ、心が溶けそうだった。
「ぐすっ……カナ…リア……おかあ…さん……うああ…あああ…うああああああああ」
ルナはまるで幼い子供のように泣きじゃくるのだった。
カナリアが優しく頭を撫でてくれ、悲しさと、嬉しさが止まらなかった。
ルナの初恋が終わりを告げ、そして初めて母の愛に包まれた瞬間だった。
そして愛という膨大なエネルギーと、初めて正面から受け止めた悲しみはルナの真核を今までよりも輝かせた。
※※※※※
まだ城などなくクリートホープの執務室は、ミユルの迎賓館がその機能を兼ねていた。
ダールは今からここの応接室で、ずっと恋焦がれていた愛するクラリスと会う事になっていた。
胸の高鳴りが止まらない。
3人殺めたことでダールはもうあきらめていた。
実際に廃嫡され、流刑になった極悪人だ。
でも…その原因を作ったルナが、俺を押してくれた。
俺はルナが嫌いだった。
どうしても許せなかった。
彼女のせいで罪を犯し、そして帝国が滅びた。
でも彼女はその罪を受け止めていた。
何も持たない孤児上がりの、頼れるもののない弱い彼女が。
彼女も操られていただけなのに。
俺は彼女に、あの強さに。
負けたくないって思ったんだ。
だから俺は今日、胸を張ってクラリスに会うと誓った。
ドアがノックされ、ずっと会いたかった愛しい人が俺の前に現れた。
そして俺の胸に飛び込んでくるクラリス。
俺は夢中で抱きしめていた。
「ああ、クラリス、会いたかった。愛している」
「ダリルさまっ、ああ、お会いしとうございました。ああ、……ダリル様」
二人はずっと抱きしめあっていた。
いつまでも。
そしてダールは。
ルナに感謝の気持ちを感じていた。
もしこの騒動がなかったら。
当然許されることではないし、もちろんあってはいけないことだと理解している。
だけど。
きっとここまでクラリスを愛おしく感じなかった。
気付いてしまっていた。
勿論好きだった。
愛していた。
でもきっと。
それはそういう役割を演じるだけだと諦めていたからだったと。
何故か泣きながら俺に勇気をくれたルナを思い出しながら、ダールはクラリスを抱きしめ続けた。
愛しい彼女の体は柔らかく、そして幸せの匂いがしたんだ。
ルナ、俺は絶対に幸せになるよ。
俺はお前の幸せを。
ずっと祈っている。
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