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第195話 魔王が救えなかった人々
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(新星歴4819年11月18日)
ドルグ帝国の悲劇から、およそ2年の月日が流れていた。
あの時ばら撒かれた悪意の種は、神々や眷属、グースワースの住人たちによって目立つものは殆ど鎮静化に成功していた。
しかし、悪意は驚くほど質が悪くそして最悪の方法でその力を蓄えていた。
力ない、無害なものの心の奥底の不満や嫉妬に侵食し、息をひそめさせ、魔王や神々の追跡を躱していたのだ。
悪意の陰であるレイスは自身の力は全くと言ってない。
だからとことんノアーナの嫌がりそうなことを考えつくし、そして試した。
あの時皇帝や伯爵たち貴族をかどわかし、生成し持ち帰っていた欠片は実に20以上。
そして遠い星にいくつも隠していた。
その中のいくつかを使い怪しいレイスは気が狂っているような実験を繰り返し……
そして。
協力者を得ていた。
いや、作り出していた。
※※※※※
ノッド大陸のキャルルートルン正教会の地下とつながっている、かつてアースノートの逆鱗に触れ滅ぼされた大穴のすぐ横にある坑道で、ひっそりと生活している一族がいた。
元々魔王の戯れにより厳しい環境に置かれていたノッド大陸には、エルフを中心にコミュニティーが形成されていたが、最初の欠片事件の時に欠片に侵食され住民の殆どが命を奪われ、その後の神々の調査でも誰もいないものとされていた。
しかしノアーナとほぼ同じとこができる欠片の力をレイスが流用し、隠蔽することに成功していた。
これについてノッド大陸を調査していたアグアニードを責めることはできない。
魔王ノアーナですら感知できなかったのだから。
だが結果として残された住民を使った実験がこの星を揺るがすことになってしまう。
「レイス様、極大魔法の再現に成功しました。そして紋様の効果も問題ありません」
『ふふっ、おもしろいなあ、いいぞ、もっとやれ。……お前に力をやろう』
「おお、まさに救済の悪神様。……魔王と6柱に断罪を!!」
「「「「「「「魔王と6柱に断罪を」」」」」」」
彼らは『降魔教団』
魔王に見放され、神々に恩恵を与えられなかったエルフ族の残党が世界から集めた『薄い不満や嫉妬』を心の奥に抱えた者たちだった。
この星ファルスーノルン星には多くの種族が暮らしている。
そして最も数が多いのがヒューマン、そしてその次に多く存在しいているのがエルフ族だ。
ノアーナも神々も世界を守るために奔走していた。
しかし真の理想郷の為、数十万年悩みぬいたノアーナはあえてある程度の犠牲を見逃していた。
必要だったからだ。
真に進化していく過程で悲劇は絶対に避けては通れないと結論付けていた。
当然理不尽な一方的な破壊や、他人の尊厳を踏みにじるようなことは戒律によって縛られていたし、当初すり抜けていたノアーナが知らない悪意についても改良を重ね、大っぴらな同族に対する破壊活動などは封じ込めている。
だが悪意のレイスが着目したものは、人の善なる信仰心だった。
つまり宗教を使う事に気づいていた。
魔王が救えなかった者たちを集め、唆した。
それは劇的だった。
皆弱く不安があったからだ。
人は心が弱っているときどうしてもすがってしまう。
そして宗教は、教義というチートをかざせば、信じさせる事が出来てしまう。
人は信じたい生き物だからだ。
常に許しが欲しい。
認められたい。
そして…その自分に酔っていたい。
『崇めよ。そして破壊しろ。これは聖戦だ。そなたらを見捨てた魔王と神に断罪を!!』
「6柱と魔王に断罪を!!」
「6柱と魔王を信仰する者たちに滅びを!!」
『我ら降魔教団はそなたらの信仰心に必ず報いるだろう、さあ可愛い我が同志よ!時は来た。祝福の種をばら撒くのだ』
「祝福の種をばら撒こう!!」
「祝福の種をばら撒こう!!」
『さあ、悩んでいる同胞を救うのだ』
結果、同じ非道なことを行うとしても、どんなに理不尽でも、『善行』としてとらえられてしまう。
真の善からなる想いが歪められてしまう。
人を殺めても、教義上問題ない場合、彼らにとってそれは紛れもない善行だからだ。
ある宗教では邪教徒は殺してでも救えとの協議がある。
それを完全なる善行だと、信じ込まされてしまう。
いわゆる『聖戦』だ。
それを信じている人に『命は大切だ』といくら説いたところで絶対に届かない。
なぜなら彼らの行いこそが善であると心の底から信じているからだ。
そして協力者を得たレイスは、次は魔物に着目した。
元来魔物はノアーナが創造し、人々の暮らしや進化、そして星を循環させるために用意されていたもの。
杓子定規的では滅ぶ事が解っていたノアーナはやはりわざと曖昧にしていた。
そこをついた。
そして瞬く間に掌握していた。
『ふん、言う事を聞かないのなら聞かせればいいだろう』
腐るほどいる魔物たち。
実験はいくらでもできた。
今ファルスーノルン星に存在するおよそ10%をレイスはすでに掌握していた。
『降魔教団』
『紋様のある魔物たち』
この二つに対してノアーナたちは対策の方法を理解できていなかった。
余りにもおかしなことを信じている人々は、ノアーナの想像を超えてしまっていた。
つまり、ノアーナの知らない地球の悪意と同等なものがファルス―ノルン星に溢れたことを示していた。
そしてノアーナたちは追いつめられる。
今はまだ、誰もそのことに気づけずにいた。
ドルグ帝国の悲劇から、およそ2年の月日が流れていた。
あの時ばら撒かれた悪意の種は、神々や眷属、グースワースの住人たちによって目立つものは殆ど鎮静化に成功していた。
しかし、悪意は驚くほど質が悪くそして最悪の方法でその力を蓄えていた。
力ない、無害なものの心の奥底の不満や嫉妬に侵食し、息をひそめさせ、魔王や神々の追跡を躱していたのだ。
悪意の陰であるレイスは自身の力は全くと言ってない。
だからとことんノアーナの嫌がりそうなことを考えつくし、そして試した。
あの時皇帝や伯爵たち貴族をかどわかし、生成し持ち帰っていた欠片は実に20以上。
そして遠い星にいくつも隠していた。
その中のいくつかを使い怪しいレイスは気が狂っているような実験を繰り返し……
そして。
協力者を得ていた。
いや、作り出していた。
※※※※※
ノッド大陸のキャルルートルン正教会の地下とつながっている、かつてアースノートの逆鱗に触れ滅ぼされた大穴のすぐ横にある坑道で、ひっそりと生活している一族がいた。
元々魔王の戯れにより厳しい環境に置かれていたノッド大陸には、エルフを中心にコミュニティーが形成されていたが、最初の欠片事件の時に欠片に侵食され住民の殆どが命を奪われ、その後の神々の調査でも誰もいないものとされていた。
しかしノアーナとほぼ同じとこができる欠片の力をレイスが流用し、隠蔽することに成功していた。
これについてノッド大陸を調査していたアグアニードを責めることはできない。
魔王ノアーナですら感知できなかったのだから。
だが結果として残された住民を使った実験がこの星を揺るがすことになってしまう。
「レイス様、極大魔法の再現に成功しました。そして紋様の効果も問題ありません」
『ふふっ、おもしろいなあ、いいぞ、もっとやれ。……お前に力をやろう』
「おお、まさに救済の悪神様。……魔王と6柱に断罪を!!」
「「「「「「「魔王と6柱に断罪を」」」」」」」
彼らは『降魔教団』
魔王に見放され、神々に恩恵を与えられなかったエルフ族の残党が世界から集めた『薄い不満や嫉妬』を心の奥に抱えた者たちだった。
この星ファルスーノルン星には多くの種族が暮らしている。
そして最も数が多いのがヒューマン、そしてその次に多く存在しいているのがエルフ族だ。
ノアーナも神々も世界を守るために奔走していた。
しかし真の理想郷の為、数十万年悩みぬいたノアーナはあえてある程度の犠牲を見逃していた。
必要だったからだ。
真に進化していく過程で悲劇は絶対に避けては通れないと結論付けていた。
当然理不尽な一方的な破壊や、他人の尊厳を踏みにじるようなことは戒律によって縛られていたし、当初すり抜けていたノアーナが知らない悪意についても改良を重ね、大っぴらな同族に対する破壊活動などは封じ込めている。
だが悪意のレイスが着目したものは、人の善なる信仰心だった。
つまり宗教を使う事に気づいていた。
魔王が救えなかった者たちを集め、唆した。
それは劇的だった。
皆弱く不安があったからだ。
人は心が弱っているときどうしてもすがってしまう。
そして宗教は、教義というチートをかざせば、信じさせる事が出来てしまう。
人は信じたい生き物だからだ。
常に許しが欲しい。
認められたい。
そして…その自分に酔っていたい。
『崇めよ。そして破壊しろ。これは聖戦だ。そなたらを見捨てた魔王と神に断罪を!!』
「6柱と魔王に断罪を!!」
「6柱と魔王を信仰する者たちに滅びを!!」
『我ら降魔教団はそなたらの信仰心に必ず報いるだろう、さあ可愛い我が同志よ!時は来た。祝福の種をばら撒くのだ』
「祝福の種をばら撒こう!!」
「祝福の種をばら撒こう!!」
『さあ、悩んでいる同胞を救うのだ』
結果、同じ非道なことを行うとしても、どんなに理不尽でも、『善行』としてとらえられてしまう。
真の善からなる想いが歪められてしまう。
人を殺めても、教義上問題ない場合、彼らにとってそれは紛れもない善行だからだ。
ある宗教では邪教徒は殺してでも救えとの協議がある。
それを完全なる善行だと、信じ込まされてしまう。
いわゆる『聖戦』だ。
それを信じている人に『命は大切だ』といくら説いたところで絶対に届かない。
なぜなら彼らの行いこそが善であると心の底から信じているからだ。
そして協力者を得たレイスは、次は魔物に着目した。
元来魔物はノアーナが創造し、人々の暮らしや進化、そして星を循環させるために用意されていたもの。
杓子定規的では滅ぶ事が解っていたノアーナはやはりわざと曖昧にしていた。
そこをついた。
そして瞬く間に掌握していた。
『ふん、言う事を聞かないのなら聞かせればいいだろう』
腐るほどいる魔物たち。
実験はいくらでもできた。
今ファルスーノルン星に存在するおよそ10%をレイスはすでに掌握していた。
『降魔教団』
『紋様のある魔物たち』
この二つに対してノアーナたちは対策の方法を理解できていなかった。
余りにもおかしなことを信じている人々は、ノアーナの想像を超えてしまっていた。
つまり、ノアーナの知らない地球の悪意と同等なものがファルス―ノルン星に溢れたことを示していた。
そしてノアーナたちは追いつめられる。
今はまだ、誰もそのことに気づけずにいた。
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