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第196話 順調な対応と思惑の迷宮
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(新星歴4819年12月28日)
あれから力を増した神々や茜によって、多くの理不尽すぎる紋様のある魔物の襲来や、怪しい人族の何人かは捕獲することに成功していた。
そして奴の狙いも大まかにだが分かってきていた。
奴は力のない普通の者の『信仰心』というものを利用しているようだ。
「厄介ですわね」
モンスレアナが腕を組みポツリとこぼす。
彼女も風神教のご神体であり信仰を受ける側だ。
人々のそういう心理は深く理解している。
彼女は俺が世界の在り方を整える2万年以上前から一応神様だし、俺の戯れの言葉で本気になりシミュレーションゲームの様に信者を驚くほど多く獲得した実績もあった。
「ふう、そうだな。俺の戒律で行動自体は防げるが……心は縛れない。それに真から善行だと信じている行動にはどうしても反応が遅れてしまうからな」
「ノアーナ様、戒律の改変はできませんの?もともとあなた様が組んだのでしょうし」
アースノートがぐるぐる眼鏡を光らせ俺に問いかけた。
「あー、今は無理だな。存在を下げてしまったからな。だがお前たちのおかげでだいぶ落ち着いて来た。そもそもすべてを防ぐことには俺は正直危険を感じてしまう。人の業はない方が良いのだろうが進化の材料としては絶対に必要だからな」
「光喜さん……うん、そうだよね。でもちょっと怖いかな…あの捕まえた人の目……」
捕縛したエルフ族の一人を先ほど尋問していた。
共有のため全員で観察したのだが……
「あの人……心から信じていたね……普通に考えたらおかしい事なのに…状態異常でもないのに……怖い」
俺はそっと茜を抱き寄せ頭を撫でてやる。
肩が震えている。
「ああ。とりあえず今の体制を継続しよう。人族の脅威は被害としてみれば少ないが厄介だ。すまないが眷属たちの働きに期待させて貰おう。それよりも……アグ、どうだ魔物の方は」
「うん。大丈夫ー。ダーちゃんの召還してくれた闇精霊が大活躍しているから、この前みたいに後手にはならないよー」
ダラスリニアは降魔の杖をうまく使いこなし、召喚の幅を大きく広げていた。
いま彼女の支配している、監視に特化した闇の中級精霊はおよそ1万体に届く。
それをアースノートのシステムとリンクしほぼ自動で情報の収集が可能となっていた。
ただ維持するだけでも多くの魔力を消耗するのだが、彼女は杖の能力を流用し、アースノートの作成したゴーレムをバックアップに使用し仕組みを構築、ごく少量の魔力での維持を可能としていた。
結果として警戒した奴は、俺たちが数名捕獲した司令塔たる人物を引っ込めた。
司令塔のいない魔物の群れは今の俺たちの敵ではない。
この子の類まれなる才能とそれをやり遂げる強い意志、努力には本当に頭が下がる思いだ。
「そうか。……ダニー、おいで」
「…うん。……ノアーナ様♡」
俺の胸に飛び込んでくるダラスリニア。
ああ、めっちゃ可愛い。
柔らかくてすごくいい匂いだ。
「ああ、お前は本当に可愛くて優秀だ。俺は嬉しい」
「…うん♡……大好き♡」
ここの所殺伐とし過ぎていた。
そんな中可愛いダニーや茜、神々は本当に俺を癒してくれる。
もちろん可能な限り俺は彼女たちとスキンシップを取っている。
可愛い彼女たちは、俺の真核を強くしてくれるのだから。
嬉しい事に彼女たちも求めてくれる。
流石にベッドでというわけにはいかないが、俺も結構疲れている。
彼女たちを感じてしまいたいが、もう少し落ち着くのを待ちたいところだ。
それに、一方でどうしても無理をしてしまう神もいる。
任務上仕方がない事だろうが、アルテミリスはルースミールの事もあり全く休んでいない。
いくら神とはいえ、神経を使っている状況ではどうしても真核にダメージが蓄積してしまう。
「ノアーナ様、ルースミールからの伝言です。モンテリオン王国の国境沿いに怪しい集落があるようです」
「怪しい集落?具体的にどういう事だ?」
「ええ、以前は荒野だった場所に少数ですがテントの様の物が立てられ、光教の信者や眷属などの立ち入りを拒否しているようです。炊き出しに向かった時に気が付いて眷属の数名が訪れた時に発覚したようです」
アルテミリスが感情の籠らない表情で俺に告げた。
……かなり心にきているようだな。
俺はダラスリニアを椅子へ座らせ、アルテミリスをそっと抱き寄せる。
最近無理をさせてしまっている。
真核の疲弊が目立っていた。
「なあアルテ。俺は本当にお前たちが愛おしくて仕方がないんだ。だから無理をしないでほしい。俺も少しはお前たちの助けになりたいと考えている。俺が言う事ではないが……少しは俺を頼ってくれ」
「……はい。……ふふっ、この前と反対ですね。……抱きしめていただけますか」
「ああ、俺の可愛いアルテ。愛している。……少し休むといい。……添い寝が必要か?」
「っ!?……もう。……期待しちゃいますよ?……少し休ませていただきます」
「パスを俺もつなごう。……第5席のデュラナダが情報の責任者だな。……ルーミーとは俺は繋がらない方が良いのだったな」
「ええ。レイスにこちらの情報が筒抜けになる可能性は排除しておきたいですから」
「ああ、……よし。問題ない。……すまないな引き留めて。休んでくれ」
「はい」
アルテミリスが自室へと転移していく。
俺を含め茜や神々にも疲れが見える。
対応は順調にできている。
だが……俺は言い知れない不安に包まれていた。
その源泉に思い当たるのだから質が悪い。
俺はため息をついた。
※※※※※
(新星歴4820年1月4日)
さらに数日経過し、いつの間にか年を越えてしまっていた。
流石に皆疲弊が激しいので今は交代制にし俺は隠れ家で休ませてもらっている。
「この対応で良いのだろうか」
実は神々と茜、グースワースやクリートホープといった、俺が大切に思うかかわりの深いものを守るだけならいくらでも方法はあるし、今この瞬間にも達成できる。
俺も遊んでいたわけではない。
すでに部分的に【破壊】の権能を使いこなすことはできるようになっていた。
とどのつまり大切な場所以外を破壊すれば簡単に終わる話だ。
一度世界を回り、ある程度の種族を保護し、やり直せばいいだけだ。
だがそれでは5千年前と変わらない。
「ままならないものだな。きっと以前の俺なら悩みすらしなかったのだろうが」
冷めてしまったお気に入りの紅茶を眺め独り言ちる。
昨年の12月に一度グースワースに戻ってからここ1か月近く戻っていなかった。
「新年すら祝えないとはな……ネルに会いたい……だが……」
ふとカナリアの言葉がよぎる。
『まるで悪い感情を切り離しているようです』
ああ、そうなんだよ。
悪い感情はあの消滅事件以降俺の真核に全く溜まっていない。
世界の、人々の進化の為、俺はあらゆる感情の発露を制限していない。
だというのに……
俺自身があの暴走をきっかけに無意識に制限をかけてしまっていた。
そしてどうしても、留める事が出来なくなっていた。
「地球の悪意……か」
ああ俺は……何十万年も生きてきたくせに、まだまだガキのようだ。
理想という幻を掲げてしまっている。
そして皮肉なことにどうにかできてしまう力と仲間を有している。
いまだ理解できないあの悍ましい悪意。
そしてタイプは違うものの今増えているこの星の住人たちの理解できない考え方。
俺は素直に、シンプルに……怖い。
恐ろしい。
「ふっ、何が創造主で絶対者だ。笑えてくる。……俺は怖がりのただのガキじゃないか。…ああ、認めよう。今の俺自身は無力だ。ならば……俺はもう一人じゃない。頼るべき仲間がいる」
俺は立ち上がり目を閉じた。
優しいネルの顔や笑う茜、そして尊敬のまなざしを向けてくれる神々、グースワースの仲間たち……俺の愛する者たちを思い浮かべる。
「優先順位をつけたところで構わないのではないか?知っているはずだ。……すべてを守るなど烏滸がましいと」
「ネル……俺の背中を押してほしい……」
俺はグースワースへ転移した。
あれから力を増した神々や茜によって、多くの理不尽すぎる紋様のある魔物の襲来や、怪しい人族の何人かは捕獲することに成功していた。
そして奴の狙いも大まかにだが分かってきていた。
奴は力のない普通の者の『信仰心』というものを利用しているようだ。
「厄介ですわね」
モンスレアナが腕を組みポツリとこぼす。
彼女も風神教のご神体であり信仰を受ける側だ。
人々のそういう心理は深く理解している。
彼女は俺が世界の在り方を整える2万年以上前から一応神様だし、俺の戯れの言葉で本気になりシミュレーションゲームの様に信者を驚くほど多く獲得した実績もあった。
「ふう、そうだな。俺の戒律で行動自体は防げるが……心は縛れない。それに真から善行だと信じている行動にはどうしても反応が遅れてしまうからな」
「ノアーナ様、戒律の改変はできませんの?もともとあなた様が組んだのでしょうし」
アースノートがぐるぐる眼鏡を光らせ俺に問いかけた。
「あー、今は無理だな。存在を下げてしまったからな。だがお前たちのおかげでだいぶ落ち着いて来た。そもそもすべてを防ぐことには俺は正直危険を感じてしまう。人の業はない方が良いのだろうが進化の材料としては絶対に必要だからな」
「光喜さん……うん、そうだよね。でもちょっと怖いかな…あの捕まえた人の目……」
捕縛したエルフ族の一人を先ほど尋問していた。
共有のため全員で観察したのだが……
「あの人……心から信じていたね……普通に考えたらおかしい事なのに…状態異常でもないのに……怖い」
俺はそっと茜を抱き寄せ頭を撫でてやる。
肩が震えている。
「ああ。とりあえず今の体制を継続しよう。人族の脅威は被害としてみれば少ないが厄介だ。すまないが眷属たちの働きに期待させて貰おう。それよりも……アグ、どうだ魔物の方は」
「うん。大丈夫ー。ダーちゃんの召還してくれた闇精霊が大活躍しているから、この前みたいに後手にはならないよー」
ダラスリニアは降魔の杖をうまく使いこなし、召喚の幅を大きく広げていた。
いま彼女の支配している、監視に特化した闇の中級精霊はおよそ1万体に届く。
それをアースノートのシステムとリンクしほぼ自動で情報の収集が可能となっていた。
ただ維持するだけでも多くの魔力を消耗するのだが、彼女は杖の能力を流用し、アースノートの作成したゴーレムをバックアップに使用し仕組みを構築、ごく少量の魔力での維持を可能としていた。
結果として警戒した奴は、俺たちが数名捕獲した司令塔たる人物を引っ込めた。
司令塔のいない魔物の群れは今の俺たちの敵ではない。
この子の類まれなる才能とそれをやり遂げる強い意志、努力には本当に頭が下がる思いだ。
「そうか。……ダニー、おいで」
「…うん。……ノアーナ様♡」
俺の胸に飛び込んでくるダラスリニア。
ああ、めっちゃ可愛い。
柔らかくてすごくいい匂いだ。
「ああ、お前は本当に可愛くて優秀だ。俺は嬉しい」
「…うん♡……大好き♡」
ここの所殺伐とし過ぎていた。
そんな中可愛いダニーや茜、神々は本当に俺を癒してくれる。
もちろん可能な限り俺は彼女たちとスキンシップを取っている。
可愛い彼女たちは、俺の真核を強くしてくれるのだから。
嬉しい事に彼女たちも求めてくれる。
流石にベッドでというわけにはいかないが、俺も結構疲れている。
彼女たちを感じてしまいたいが、もう少し落ち着くのを待ちたいところだ。
それに、一方でどうしても無理をしてしまう神もいる。
任務上仕方がない事だろうが、アルテミリスはルースミールの事もあり全く休んでいない。
いくら神とはいえ、神経を使っている状況ではどうしても真核にダメージが蓄積してしまう。
「ノアーナ様、ルースミールからの伝言です。モンテリオン王国の国境沿いに怪しい集落があるようです」
「怪しい集落?具体的にどういう事だ?」
「ええ、以前は荒野だった場所に少数ですがテントの様の物が立てられ、光教の信者や眷属などの立ち入りを拒否しているようです。炊き出しに向かった時に気が付いて眷属の数名が訪れた時に発覚したようです」
アルテミリスが感情の籠らない表情で俺に告げた。
……かなり心にきているようだな。
俺はダラスリニアを椅子へ座らせ、アルテミリスをそっと抱き寄せる。
最近無理をさせてしまっている。
真核の疲弊が目立っていた。
「なあアルテ。俺は本当にお前たちが愛おしくて仕方がないんだ。だから無理をしないでほしい。俺も少しはお前たちの助けになりたいと考えている。俺が言う事ではないが……少しは俺を頼ってくれ」
「……はい。……ふふっ、この前と反対ですね。……抱きしめていただけますか」
「ああ、俺の可愛いアルテ。愛している。……少し休むといい。……添い寝が必要か?」
「っ!?……もう。……期待しちゃいますよ?……少し休ませていただきます」
「パスを俺もつなごう。……第5席のデュラナダが情報の責任者だな。……ルーミーとは俺は繋がらない方が良いのだったな」
「ええ。レイスにこちらの情報が筒抜けになる可能性は排除しておきたいですから」
「ああ、……よし。問題ない。……すまないな引き留めて。休んでくれ」
「はい」
アルテミリスが自室へと転移していく。
俺を含め茜や神々にも疲れが見える。
対応は順調にできている。
だが……俺は言い知れない不安に包まれていた。
その源泉に思い当たるのだから質が悪い。
俺はため息をついた。
※※※※※
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さらに数日経過し、いつの間にか年を越えてしまっていた。
流石に皆疲弊が激しいので今は交代制にし俺は隠れ家で休ませてもらっている。
「この対応で良いのだろうか」
実は神々と茜、グースワースやクリートホープといった、俺が大切に思うかかわりの深いものを守るだけならいくらでも方法はあるし、今この瞬間にも達成できる。
俺も遊んでいたわけではない。
すでに部分的に【破壊】の権能を使いこなすことはできるようになっていた。
とどのつまり大切な場所以外を破壊すれば簡単に終わる話だ。
一度世界を回り、ある程度の種族を保護し、やり直せばいいだけだ。
だがそれでは5千年前と変わらない。
「ままならないものだな。きっと以前の俺なら悩みすらしなかったのだろうが」
冷めてしまったお気に入りの紅茶を眺め独り言ちる。
昨年の12月に一度グースワースに戻ってからここ1か月近く戻っていなかった。
「新年すら祝えないとはな……ネルに会いたい……だが……」
ふとカナリアの言葉がよぎる。
『まるで悪い感情を切り離しているようです』
ああ、そうなんだよ。
悪い感情はあの消滅事件以降俺の真核に全く溜まっていない。
世界の、人々の進化の為、俺はあらゆる感情の発露を制限していない。
だというのに……
俺自身があの暴走をきっかけに無意識に制限をかけてしまっていた。
そしてどうしても、留める事が出来なくなっていた。
「地球の悪意……か」
ああ俺は……何十万年も生きてきたくせに、まだまだガキのようだ。
理想という幻を掲げてしまっている。
そして皮肉なことにどうにかできてしまう力と仲間を有している。
いまだ理解できないあの悍ましい悪意。
そしてタイプは違うものの今増えているこの星の住人たちの理解できない考え方。
俺は素直に、シンプルに……怖い。
恐ろしい。
「ふっ、何が創造主で絶対者だ。笑えてくる。……俺は怖がりのただのガキじゃないか。…ああ、認めよう。今の俺自身は無力だ。ならば……俺はもう一人じゃない。頼るべき仲間がいる」
俺は立ち上がり目を閉じた。
優しいネルの顔や笑う茜、そして尊敬のまなざしを向けてくれる神々、グースワースの仲間たち……俺の愛する者たちを思い浮かべる。
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