210 / 260
第210話 壊された幸せの住処と魔王の逃走
しおりを挟む
(新星歴4822年9月14日)
怠惰な奴は一度だけアルカーハイン大陸に襲い掛かってきたが、対応に当たった俺に対し、吸収しながらメッセージを告げただけで姿を消していた。
奴の悍ましいメッセージ、それは。
『暇つぶしの遊戯』
それだけだった。
いつの間にかこの星にはびこる漆黒になってしまう病気のせいで、奴は食料の確保ができたのだろう。
怠惰ぶりを発揮し世界は奇妙なことだが平穏にその時を刻めていた。
だがあいつのさじ加減で世界は壊されてしまうことに変わりはなかった。
そしてついに俺の愛する女性に被害が出てしまう。
ミユルの町で感染した人々を救う活動中に、サイリスとマリンナが殺された。
俺は狂うのではないかというほどの悲しみに囚われてしまった。
愛するサイリス。
彼女の優しい声も、暖かな感触も、永遠に失われてしまった。
そしてさらに半年後……
ミユルの町と、俺たちグースワースは地獄に包まれる。
俺の決意を決めた日となる。
最後の賭けに出る。
もうそれしかなかったんだ。
(新星歴4823年3月17日)
「大将、ミユルの町に紋様のある魔物の群れと漆黒のゴーレムが近づいています。およそ20000」
その報告に俺はめまいを覚えた。
いよいよ奴の言う遊戯が始まってしまった。
「…なあナハムザート。俺は恐ろしい。きっと魔物は俺たちの力で何とかなるだろう。だがもし奴が来たら、もう誰も勝てない。……ナハムザート、大切なものを連れて逃げる方が良くないか?」
どうやら俺は腑抜けてしまったようだ。
恐ろしくてたまらない。
「大将……」
ナハムザートが俺の前で大きく息を吸い込みそして大声で檄を飛ばした。
「しっかりしてください!!まだ、負けていない!!最後まで抗うっ!!そうでしょ!!!」
「……ナハムザート……」
「俺は逃げません。ミユルに行きます」
俺は自分が情けない。
たった一人愛する女が殺されただけで俺は立ち上がれなくなっていた。
「サリー……俺は……」
俯き微動だにしない俺の前にカナリアが現れた。
きっとノックもしたのだろう。
俺は気づかなかった。
いや、まったく覇気のない俺だ。
皆呆れたのだろう。
「ノアーナ様、失礼します」
パンッ
左の頬がジンジンする。
えっ?
叩かれた?
俺は思わず顔を上げた。
「ノアーナ様、お願いです。私たちを導いてください。お願いです。ノアーナ様……」
そして涙を流しながら懇願するカナリアの後ろには俺の愛する彼女たちが立ち尽くしていた。
ネル、レーラン、ロロン、コロン、リナーリア、サラナ、ミュールス、カリン、エルマ、ノニイ、ルイーナ……俺の大切な彼女たち。
涙があふれてきた。
気が付けば俺は立ち上がっていた。
「ノアーナ様、優しい貴方です。きっとサイリスのことで落ち込んでいるのでしょう。ですがここにはあなたを心から愛するこの子たちがいま不安に包まれているのです。どうか導いてあげてくれませんか」
「ノアーナ様……愛してます」
「ノアーナ様…」
「愛してるの、ノアーナ様」
こんなに腑抜けた俺なのに、この子たちはまだおれを愛してくれている。
俺は……
決めたはずだ。
この子たちを愛しぬくと。
ネルがそっと俺に腕を絡ませる。
可愛い顔が台無しなくらい泣いた跡がある。
「ノアーナ様……」
俺はネルを抱きしめた。
こんな時だというのに俺は心が躍るのを実感した。
そうだ。
まだ負けていない。
全部救う?
烏滸がましいだろ。
俺は愛するこの子たちだけでも絶対に守るんだ。
「すまない皆。守るぞ、ミユルを。そしてこの星を。力を貸してくれ!!」
「「「「「「「「「「「はいっ」」」」」」」」」」」」
※※※※※
そしてミユルは……
滅んでしまった。
俺は結局……奴に勝つどころか……怖くなって、みっともなく命乞いをし……逃げた。
愛するルイーナとサラナが目の前で喰われ、そして奴は宣言した。
「次はお前の愛する……ネルを犯しながら食ってやるよ!!ギヤハハハハ!遊戯の景品としちゃあ上等だろうが?あああん!?」
※※※※※
40人いた俺の愛する仲間たちは……
12人しか残っていなかった。
漆黒を持たない「魔王に近しもの」
唯一奴に対し行動阻害のない者たちを守るため。
レーランまでが命を落としていた。
ミユルは壊滅し。
そして俺たちは残った全員でギルガンギルの塔の聖域に逃げ込んだ。
そして俺は非道な決断を行う。
愛する仲間から記憶を奪うことにした。
ミユルの悲劇を。
殺された仲間を。
全て改変した記憶を植え付けた。
許されない事だ。
だが俺は覚悟を決めた。
アースノートの計算で成功率は20%しかないのだろう。
だが俺は、最後の権能を使う。
俺も滅ぶが、確実に奴を消す。
もう俺はあいつを許す事が出来ない。
そして自分を何よりも許さない。
その1か月後……
新星歴4823年4月28日
最終決戦で奴を消し去った俺は、賭けに出て地球へ戻ったんだ。
中途半端なタイミングだった。
記憶をすべて失い、佐山光喜14歳に再転生した。
ただ一つだけ決意していたことがある。
悪意を理解する。
それだけを強く想いながら‥……
怠惰な奴は一度だけアルカーハイン大陸に襲い掛かってきたが、対応に当たった俺に対し、吸収しながらメッセージを告げただけで姿を消していた。
奴の悍ましいメッセージ、それは。
『暇つぶしの遊戯』
それだけだった。
いつの間にかこの星にはびこる漆黒になってしまう病気のせいで、奴は食料の確保ができたのだろう。
怠惰ぶりを発揮し世界は奇妙なことだが平穏にその時を刻めていた。
だがあいつのさじ加減で世界は壊されてしまうことに変わりはなかった。
そしてついに俺の愛する女性に被害が出てしまう。
ミユルの町で感染した人々を救う活動中に、サイリスとマリンナが殺された。
俺は狂うのではないかというほどの悲しみに囚われてしまった。
愛するサイリス。
彼女の優しい声も、暖かな感触も、永遠に失われてしまった。
そしてさらに半年後……
ミユルの町と、俺たちグースワースは地獄に包まれる。
俺の決意を決めた日となる。
最後の賭けに出る。
もうそれしかなかったんだ。
(新星歴4823年3月17日)
「大将、ミユルの町に紋様のある魔物の群れと漆黒のゴーレムが近づいています。およそ20000」
その報告に俺はめまいを覚えた。
いよいよ奴の言う遊戯が始まってしまった。
「…なあナハムザート。俺は恐ろしい。きっと魔物は俺たちの力で何とかなるだろう。だがもし奴が来たら、もう誰も勝てない。……ナハムザート、大切なものを連れて逃げる方が良くないか?」
どうやら俺は腑抜けてしまったようだ。
恐ろしくてたまらない。
「大将……」
ナハムザートが俺の前で大きく息を吸い込みそして大声で檄を飛ばした。
「しっかりしてください!!まだ、負けていない!!最後まで抗うっ!!そうでしょ!!!」
「……ナハムザート……」
「俺は逃げません。ミユルに行きます」
俺は自分が情けない。
たった一人愛する女が殺されただけで俺は立ち上がれなくなっていた。
「サリー……俺は……」
俯き微動だにしない俺の前にカナリアが現れた。
きっとノックもしたのだろう。
俺は気づかなかった。
いや、まったく覇気のない俺だ。
皆呆れたのだろう。
「ノアーナ様、失礼します」
パンッ
左の頬がジンジンする。
えっ?
叩かれた?
俺は思わず顔を上げた。
「ノアーナ様、お願いです。私たちを導いてください。お願いです。ノアーナ様……」
そして涙を流しながら懇願するカナリアの後ろには俺の愛する彼女たちが立ち尽くしていた。
ネル、レーラン、ロロン、コロン、リナーリア、サラナ、ミュールス、カリン、エルマ、ノニイ、ルイーナ……俺の大切な彼女たち。
涙があふれてきた。
気が付けば俺は立ち上がっていた。
「ノアーナ様、優しい貴方です。きっとサイリスのことで落ち込んでいるのでしょう。ですがここにはあなたを心から愛するこの子たちがいま不安に包まれているのです。どうか導いてあげてくれませんか」
「ノアーナ様……愛してます」
「ノアーナ様…」
「愛してるの、ノアーナ様」
こんなに腑抜けた俺なのに、この子たちはまだおれを愛してくれている。
俺は……
決めたはずだ。
この子たちを愛しぬくと。
ネルがそっと俺に腕を絡ませる。
可愛い顔が台無しなくらい泣いた跡がある。
「ノアーナ様……」
俺はネルを抱きしめた。
こんな時だというのに俺は心が躍るのを実感した。
そうだ。
まだ負けていない。
全部救う?
烏滸がましいだろ。
俺は愛するこの子たちだけでも絶対に守るんだ。
「すまない皆。守るぞ、ミユルを。そしてこの星を。力を貸してくれ!!」
「「「「「「「「「「「はいっ」」」」」」」」」」」」
※※※※※
そしてミユルは……
滅んでしまった。
俺は結局……奴に勝つどころか……怖くなって、みっともなく命乞いをし……逃げた。
愛するルイーナとサラナが目の前で喰われ、そして奴は宣言した。
「次はお前の愛する……ネルを犯しながら食ってやるよ!!ギヤハハハハ!遊戯の景品としちゃあ上等だろうが?あああん!?」
※※※※※
40人いた俺の愛する仲間たちは……
12人しか残っていなかった。
漆黒を持たない「魔王に近しもの」
唯一奴に対し行動阻害のない者たちを守るため。
レーランまでが命を落としていた。
ミユルは壊滅し。
そして俺たちは残った全員でギルガンギルの塔の聖域に逃げ込んだ。
そして俺は非道な決断を行う。
愛する仲間から記憶を奪うことにした。
ミユルの悲劇を。
殺された仲間を。
全て改変した記憶を植え付けた。
許されない事だ。
だが俺は覚悟を決めた。
アースノートの計算で成功率は20%しかないのだろう。
だが俺は、最後の権能を使う。
俺も滅ぶが、確実に奴を消す。
もう俺はあいつを許す事が出来ない。
そして自分を何よりも許さない。
その1か月後……
新星歴4823年4月28日
最終決戦で奴を消し去った俺は、賭けに出て地球へ戻ったんだ。
中途半端なタイミングだった。
記憶をすべて失い、佐山光喜14歳に再転生した。
ただ一つだけ決意していたことがある。
悪意を理解する。
それだけを強く想いながら‥……
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる