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第224話 ノアーナが消えた後のファルスーノルン星2
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(新星歴4823年8月21日)
2度滅ぼされた国、かつてはドルグ帝国だった「クリートホープ」
現在その跡地は廃墟となっており、生き物の気配はなかった。
一番安全であろうと思われた魔王のお膝元。
しかしそこに破壊は集中した。
度重なる悪意の軍勢による蹂躙と漆黒病の蔓延。
感染者と降魔教団による自爆テロで多くの人民がその命を落とし、最終決戦に選ばれたこの土地は勇者の渾身の一撃と禁呪である死国隆盛により再生はほぼ不可能な状況になっていた。
しかし弱いはずの人族たちは、諦めなかった。
「ステファン伯爵、ハートルイス宰相、わたくしは諦めませんわ。力を貸していただけるかしら」
女王ルルネイア・ホープ・オズワイヤの目に力がともる。
恭しく臣下の礼をとる二人の重鎮。
「ふふっ、何にもなくなってしまいました。国も、建物も、人々も。……でも、まだ幾人かの人々が生きている。……ノアーナ様達の犠牲を無駄にはできないのです」
最後の希望だったグースワースもほぼ壊滅していた。
しかしグースワースの住人たちの必死の抵抗は無駄ではなかった。
多くの人民の命と希望をつないでいた。
「ドロス様、レイルーナ様、どうか我々にお力を貸してくださいませ」
2人の赤子を抱えるレイルーナはまるで聖母のような表情を浮かべる。
寄り添うドロス。
二人の赤子が幸せそうに微笑んでいた。
「ああ、俺たちは力なんてない。でもこの子たちの未来を俺達は作る義務がある」
ドロスとレイルーナの子供、そして……死んでしまったアズガイヤとライナルーヤの忘れ形見。
あの時最後の力を振り絞り転移してきたアズガイヤからドロスに託された小さな命。
ドロスは誓った。
絶対に取り戻すと。
この子たちが安心して暮らせる世界を。
※※※※※
「おい、そうじゃない。何度言ったら分かるんだこのポンコツめ」
「ぐうっ、だけど、僕は……ぷわっ」
ラミンデは新たに弟子としたエルフの少年、サーズルイの顔に癒しのポーションをぶちまけた。
※※※※※
ノアーナが敗れ、最終決戦を決意させたミユルの町攻防戦の時……
ラズ・ロックが最後の瞬間に、ずっと隠し持っていた母から受け継いでいたアーティーファクト『身代わり石』の欠片を使用していた。
欠片はその力が中途半端だった。
本来は4人くらいの身代わりができる程度にはその力を蓄えていたのだが……
余りにも雑な保管のため劣化しており、3名のみが命を繋いでいた。
残念ながら使用したラズと、それを守ったゴドロナの命は助からなかった。
何とか生き延びたサーズルイは瀕死、マラライナははじめ死んでいるかと思うほど重篤な状態だった。
同時に使用した簡易の転移石により、アルカーハイン大陸のサルスノットの町の近くの森に飛ばされていたのだった。
ざわつく精霊に訝しんだラミンデに拾われたことは幸運だったのだろう。
※※※※※
「ちょっと、師匠、僕は攻撃特化なんだよっ!回復は苦手なんだ」
「馬鹿かお前は?……攻撃も回復も同じ魔力操作だ。治したけりゃ覚えろ」
「くそっ、鬼っ、悪魔っ」
「ああ!?」
元々ハイエルフのラミンデは、才能あるものしか弟子にはしない。
だが今回はノアーナに頼られていた。
仕方なく拾ったが実はラミンデは後悔していた。
……どうして私はつまらない線引きをしていたのだろうか……
この少年はただのエルフだ。
そしてむしろ才にも乏しい。
だが。
可能性を秘めていた。
真核の形状が普通ではない。
グースワースの住人たちはその異常な環境ゆえそれぞれがあり得ない覚醒をすでに果たしていたのだった。
「ふふ、面白いな」
にやりと笑うラミンデ。
そこにやさしい声がかかる。
「あらあら、ラミンデ様?いい顔をされてますね。……良い事ありましたか?」
お茶を用意してきた女性。
いい匂いの焼き菓子の香りが食欲をそそる。
「もうそんな時間か。ふふっ、リアが来れなくなったからな。助かっている。……カナリア」
「ふふっ、マラライナもようやく落ち着きましたわね。そろそろ目を覚ますかもしれませんね」
「ああ、なんだかんだでサーズは優秀だ。もう時間の問題だろうよ」
「そう言って差し上げればよろしいのに」
「ふん。あいつはすぐつけあがる。これで良いのさ」
いい香りが部屋を包む。
カナリアの淹れてくれる紅茶がラミンデの最近の楽しみだった。
「……なあカナリア。お前その顔の傷……本当に治さないつもりか?せっかくの美しい顔なのに……」
思わず動きを止めるカナリア。
何とか目は見えるが左目から頬まで大きな傷が残っていた。
「ふふっ、矜持のような物ですわ。……多くの仲間が殺されました。ノアーナ様まで滅ぼされた……私は自分が許せないのです」
「お前のせいではあるまいに……それにおそらくノアーナ様は復活するぞ?その時にお前がその顔では……」
「ええ。でもおそらく私はもう会えませんよ?多分あの方は数百年は戻れないでしょうからね……」
ラミンデは詳しくは知らない。
あの後一度ルミナラスが訪れてきた。
だがあの娘も詳しい事は分からなくなっていた。
おそらくは神のスキル、何かしらの権能に囚われている。
リナーリアの無事は確認できたが、彼女もまた記憶と名前が違っていた。
「ノアーナ様、恨むぞ。……どうして私を頼らなかったのだ……そんなに私は頼りないのか」
つい独り言ちてしまうラミンデ。
そんな様子をカナリアは優しい顔で見つめる。
「きっと逆ですよ?」
「ん?」
「信用しているからこそ、声をかけなかったんだと思いますわ」
あの時ノアーナには全く余裕がなかった。
確かに一度だけ訪れ『悪いが頼む』とだけ言われていた。
細かい事は何一つ言わないままで。
確かに思い起こせばあの男はそういう男だった。
結局抱いてもくれなかったし。
ついそういうことを考えてしまい顔を赤らめてしまう。
「ふふっ、ラミンデ様……可愛い♡」
「うぐっ、……くっ、カナリア、年配者をからかう物ではないぞ?」
※※※※※
確かに世界は破壊に包まれ絶望が広がった。
しかしノアーナの想いは、この世界は。
確実に再生への歩みを始めていた。
2度滅ぼされた国、かつてはドルグ帝国だった「クリートホープ」
現在その跡地は廃墟となっており、生き物の気配はなかった。
一番安全であろうと思われた魔王のお膝元。
しかしそこに破壊は集中した。
度重なる悪意の軍勢による蹂躙と漆黒病の蔓延。
感染者と降魔教団による自爆テロで多くの人民がその命を落とし、最終決戦に選ばれたこの土地は勇者の渾身の一撃と禁呪である死国隆盛により再生はほぼ不可能な状況になっていた。
しかし弱いはずの人族たちは、諦めなかった。
「ステファン伯爵、ハートルイス宰相、わたくしは諦めませんわ。力を貸していただけるかしら」
女王ルルネイア・ホープ・オズワイヤの目に力がともる。
恭しく臣下の礼をとる二人の重鎮。
「ふふっ、何にもなくなってしまいました。国も、建物も、人々も。……でも、まだ幾人かの人々が生きている。……ノアーナ様達の犠牲を無駄にはできないのです」
最後の希望だったグースワースもほぼ壊滅していた。
しかしグースワースの住人たちの必死の抵抗は無駄ではなかった。
多くの人民の命と希望をつないでいた。
「ドロス様、レイルーナ様、どうか我々にお力を貸してくださいませ」
2人の赤子を抱えるレイルーナはまるで聖母のような表情を浮かべる。
寄り添うドロス。
二人の赤子が幸せそうに微笑んでいた。
「ああ、俺たちは力なんてない。でもこの子たちの未来を俺達は作る義務がある」
ドロスとレイルーナの子供、そして……死んでしまったアズガイヤとライナルーヤの忘れ形見。
あの時最後の力を振り絞り転移してきたアズガイヤからドロスに託された小さな命。
ドロスは誓った。
絶対に取り戻すと。
この子たちが安心して暮らせる世界を。
※※※※※
「おい、そうじゃない。何度言ったら分かるんだこのポンコツめ」
「ぐうっ、だけど、僕は……ぷわっ」
ラミンデは新たに弟子としたエルフの少年、サーズルイの顔に癒しのポーションをぶちまけた。
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ノアーナが敗れ、最終決戦を決意させたミユルの町攻防戦の時……
ラズ・ロックが最後の瞬間に、ずっと隠し持っていた母から受け継いでいたアーティーファクト『身代わり石』の欠片を使用していた。
欠片はその力が中途半端だった。
本来は4人くらいの身代わりができる程度にはその力を蓄えていたのだが……
余りにも雑な保管のため劣化しており、3名のみが命を繋いでいた。
残念ながら使用したラズと、それを守ったゴドロナの命は助からなかった。
何とか生き延びたサーズルイは瀕死、マラライナははじめ死んでいるかと思うほど重篤な状態だった。
同時に使用した簡易の転移石により、アルカーハイン大陸のサルスノットの町の近くの森に飛ばされていたのだった。
ざわつく精霊に訝しんだラミンデに拾われたことは幸運だったのだろう。
※※※※※
「ちょっと、師匠、僕は攻撃特化なんだよっ!回復は苦手なんだ」
「馬鹿かお前は?……攻撃も回復も同じ魔力操作だ。治したけりゃ覚えろ」
「くそっ、鬼っ、悪魔っ」
「ああ!?」
元々ハイエルフのラミンデは、才能あるものしか弟子にはしない。
だが今回はノアーナに頼られていた。
仕方なく拾ったが実はラミンデは後悔していた。
……どうして私はつまらない線引きをしていたのだろうか……
この少年はただのエルフだ。
そしてむしろ才にも乏しい。
だが。
可能性を秘めていた。
真核の形状が普通ではない。
グースワースの住人たちはその異常な環境ゆえそれぞれがあり得ない覚醒をすでに果たしていたのだった。
「ふふ、面白いな」
にやりと笑うラミンデ。
そこにやさしい声がかかる。
「あらあら、ラミンデ様?いい顔をされてますね。……良い事ありましたか?」
お茶を用意してきた女性。
いい匂いの焼き菓子の香りが食欲をそそる。
「もうそんな時間か。ふふっ、リアが来れなくなったからな。助かっている。……カナリア」
「ふふっ、マラライナもようやく落ち着きましたわね。そろそろ目を覚ますかもしれませんね」
「ああ、なんだかんだでサーズは優秀だ。もう時間の問題だろうよ」
「そう言って差し上げればよろしいのに」
「ふん。あいつはすぐつけあがる。これで良いのさ」
いい香りが部屋を包む。
カナリアの淹れてくれる紅茶がラミンデの最近の楽しみだった。
「……なあカナリア。お前その顔の傷……本当に治さないつもりか?せっかくの美しい顔なのに……」
思わず動きを止めるカナリア。
何とか目は見えるが左目から頬まで大きな傷が残っていた。
「ふふっ、矜持のような物ですわ。……多くの仲間が殺されました。ノアーナ様まで滅ぼされた……私は自分が許せないのです」
「お前のせいではあるまいに……それにおそらくノアーナ様は復活するぞ?その時にお前がその顔では……」
「ええ。でもおそらく私はもう会えませんよ?多分あの方は数百年は戻れないでしょうからね……」
ラミンデは詳しくは知らない。
あの後一度ルミナラスが訪れてきた。
だがあの娘も詳しい事は分からなくなっていた。
おそらくは神のスキル、何かしらの権能に囚われている。
リナーリアの無事は確認できたが、彼女もまた記憶と名前が違っていた。
「ノアーナ様、恨むぞ。……どうして私を頼らなかったのだ……そんなに私は頼りないのか」
つい独り言ちてしまうラミンデ。
そんな様子をカナリアは優しい顔で見つめる。
「きっと逆ですよ?」
「ん?」
「信用しているからこそ、声をかけなかったんだと思いますわ」
あの時ノアーナには全く余裕がなかった。
確かに一度だけ訪れ『悪いが頼む』とだけ言われていた。
細かい事は何一つ言わないままで。
確かに思い起こせばあの男はそういう男だった。
結局抱いてもくれなかったし。
ついそういうことを考えてしまい顔を赤らめてしまう。
「ふふっ、ラミンデ様……可愛い♡」
「うぐっ、……くっ、カナリア、年配者をからかう物ではないぞ?」
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確かに世界は破壊に包まれ絶望が広がった。
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