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最終章 帰る場所
41不安
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メルティアは裏側の国境でもある城門をくぐり、待っていた馬車のもとへと向かう。
「来たのは姫か」
「は、はい。メルティア・P・ファルメリアです」
「王族の証を見せろ」
「あ、証……?」
メルティアは困った。
証と言われても身一つで来いと言われたため、何も持ってきていない。
「この国は怪しげな魔術を使うんじゃないのか?」
「え……? し、知りません……」
兵たちは顔を見合わせる。
そしてメルティアを上から下までじっくり眺めたあと、くいっと顎で馬車を示す。
「まぁいい。馬車に乗れ」
「魔術?」と首をかしげながらメルティアは馬車に乗り込む。
中に人はいなかった。
どうやらメルティアだけが馬車で、その周りを厳重に馬が囲って帝都まで行くようだ。
メルティアが乗り込むとあっさりと馬車は動き出した。
大した別れもできないまま、メルティアは自分の生まれた国をあとにする。
名残惜しくて、見えなくなるまで窓から城をながめた。
ガタガタと馬車で揺られること三日。
帝都には十日ほどで着くらしい。
大きい国だと帝都に行くだけでも時間がかかるようだ。
一人で馬車に乗っているため、することもなくぼんやりしているメルティアの目の前に、パッと一匹の青い妖精が現れる。
「こんなとこにいたのか。やっと追いついたぜ」
「チーくん!?」
いつの間にかチーが姿を見せなくなっていたから、メルティアは別れも言えないまま来てしまっていたのだ。
「ど、どこに行ってたの?」
「いろいろ回ってたのさ。寝てるやつらをたたき起こしたり」
「忙しかったんだね……」
「メルこそ何やってんだよ」
「だって、戦争になるって言うから……」
メルティアはあったことをひそひそと話した。
外に聞かれるかもしれないから一応慎重にだ。
「ったく。人間ってのは本当に愚かしいな」
「いい人もいるよ?」
「欲にまみれたやつだっているだろ」
探せばいるだろうが、全員というわけでもない。
チーは空中で腕組をしながら、黙って目を閉じた。何か考えているらしい。
「……しばらく様子を見るか」
ぼそりと呟くと、チーはメルティアの膝の上で横になって大きくあくびをする。
「チーくん寝ちゃうの?」
「起きたら相手してやるから」
ひらひらと手を振られて、メルティアは小さく笑う。
起きたらということは、このままメルティアと一緒に来てくれるということなのだろう。
「おやすみ、チーくん」
すぐに眠ったから、本当に忙しかったのだろう。
メルティアは機嫌よく馬車のカーテンを引いて窓の外を見た。馬車を取り囲んでいる兵士の一人と目が合ってしまい、内心飛び上がりながらぺこりと会釈してカーテンを閉じた。
それにしても本当にすることがない。
おしりも腰も痛くなってくるし、何もすることがないと、つい余計なことを考えてしまう。
「……ジーク……」
ちゃんと騎士団に入れただろうか。
最後に振り向いてくれなかったけれど、嫌われたのだろうか。
ジークのせいじゃないという誤解はちゃんと解けただろうか。
馬車の背もたれに寄りかかって、メルティアも目を閉じる。
夢の中だけでも、あのときの続きを。
そんなことを想いながら眠りについた。
チーがやってきてから、メルティアは話し相手ができたことで元気を取り戻していた。
「もうすぐ着くみたい。どんなところかな?」
「さあな」
「チーくんも詳しくないの?」
「情報としてある程度知っているけど、オイラが実際に見たのはだいぶ昔だな」
だいぶ昔のだいぶは、どれだけだいぶなのか。
「チーくん昔は帝国にいたの?」
「帝国にいたというか、昔、妖精は世界中にいたぜ。オイラたちもあちこちに行ったりしてたからな」
「今はいないの?」
「ほとんどいないな。外見てもいないだろ?」
メルティアはこっそりカーテンを引いて外をのぞき見る。
舗装された道。今は街中なのか家が所狭しと建ち並び、緑はほとんどない。当然花もない。
妖精の姿を探してみたけれど、どこにもいなかった。
「いないね……」
街の雰囲気をながめても、ファルメリア王国とはずいぶん違う。
鎧に身を包んだ兵が勇ましく街を歩き、華やかなドレスに身を包む者もいれば、路地裏でガリガリに痩せ細った子どもが残飯を漁っている。
それに、なんだか空気が薄いような気がして、息苦しい。
「……わたし、やっていけるのかな」
もうすぐ到着するというのに、不安でいっぱいになる。
そわそわと手をいじっていると、馬車が停まった。
ゆっくりと、扉が開く。着いてしまったらしい。
「どうぞ。皇帝陛下がお待ちです」
メルティアは緊張した面持ちで馬車を降りる。
どうやら、皇帝自身が歓迎をしてくれるらしい。
メルティアは少しほっとした。やっぱり、いい人かもしれない。戦争王とは言っても、何か理由があるのかも。
そこまで考えて、ファルメリア王国を攻撃する理由なんてないはずだと顔を引き締める。
メルティアをここまで連れてきた兵たちに着いていくと、大きな広間の高い玉座の上に、煌びやかな身なりをした男性がいた。
手には宝石の付いた指輪がいくつも付けられ、王冠も金ピカに光り、とにかく派手だ。
白髪交じりの短髪に、豪快に生えた髭。
眼光は鋭く、釣りあがった眉に高い頬骨。
体には筋肉がたくさんついていて、メルティアの三倍くらいの大きさだ。
年齢はメルティアよりも数十個上に見えた。
「ほぉ。これがあの国の姫か」
椅子の上からじろじろと上から下まで見られる。
「こっちに来んか」
「は、はい」
メルティアはおそるおそる階段を上っていく。
そして皇帝がいるところまで来ると、皇帝はガサガサした武骨な手でぐいっと乱暴にメルティアの頬をつかんだ。
メルティアは驚いて目をめいっぱい見開きながら、顔をのぞき込んでくる皇帝を見つめる。
「ほぉ。なんとも愛らしい顔だ。よかろう。ワシの側室に迎えてやろう」
おぉおお! と両脇に控えていた兵たちから歓声があがる。
メルティアは何が起きたのか理解できず、おろおろと視線を泳がせた。
「おい、もっと喜ばんか」
「え。えっと……側室って、なんですか?」
皇帝は目を丸くしてガハガハと唾を飛ばしながら笑う。
「側室を知らんか! ワシの第七夫人に迎えてやると言うことだ」
「第七……ふじん? け、結婚するということですか?」
「そうだ。嬉しいだろう?」
「……」
メルティアは小さく笑って頭を下げた。
床に敷かれた真っ赤な絨毯を見つめながら、メルティアは動揺していた。
結婚。
ジークじゃない人と。
潰れそうに痛む胸を押さえて、自分に言い聞かせる。
国のために生きると決めた。
それに、ジークとはもう二度と会わないつもりだったんだから、誰と結婚しようと同じじゃないか。
「式は三日後に執り行う。それまでにこの国になれるといい」
ガハガハと笑って、皇帝は玉座の裏にあった扉から去っていった。
置いてきぼりにされたメルティアがこれからどうすればいいのか困惑していると、玉座の下から声がした。
「メルティア姫様。こちらに」
「え?」
ピシっとまとめた黒髪と、釣りあがった目が印象的な美女が、冷たくメルティアを見つめていた。
「この三日間であなたをとびきりの美人に仕立てるよう仰せつかっております。時間はありません。のんびりなさらないで」
「あ、は、はい。ごめんなさい……」
ツカツカと歩いていく美女のあとを、メルティアは慌ててついていった。
本当に、やっていけるのだろうか?
「来たのは姫か」
「は、はい。メルティア・P・ファルメリアです」
「王族の証を見せろ」
「あ、証……?」
メルティアは困った。
証と言われても身一つで来いと言われたため、何も持ってきていない。
「この国は怪しげな魔術を使うんじゃないのか?」
「え……? し、知りません……」
兵たちは顔を見合わせる。
そしてメルティアを上から下までじっくり眺めたあと、くいっと顎で馬車を示す。
「まぁいい。馬車に乗れ」
「魔術?」と首をかしげながらメルティアは馬車に乗り込む。
中に人はいなかった。
どうやらメルティアだけが馬車で、その周りを厳重に馬が囲って帝都まで行くようだ。
メルティアが乗り込むとあっさりと馬車は動き出した。
大した別れもできないまま、メルティアは自分の生まれた国をあとにする。
名残惜しくて、見えなくなるまで窓から城をながめた。
ガタガタと馬車で揺られること三日。
帝都には十日ほどで着くらしい。
大きい国だと帝都に行くだけでも時間がかかるようだ。
一人で馬車に乗っているため、することもなくぼんやりしているメルティアの目の前に、パッと一匹の青い妖精が現れる。
「こんなとこにいたのか。やっと追いついたぜ」
「チーくん!?」
いつの間にかチーが姿を見せなくなっていたから、メルティアは別れも言えないまま来てしまっていたのだ。
「ど、どこに行ってたの?」
「いろいろ回ってたのさ。寝てるやつらをたたき起こしたり」
「忙しかったんだね……」
「メルこそ何やってんだよ」
「だって、戦争になるって言うから……」
メルティアはあったことをひそひそと話した。
外に聞かれるかもしれないから一応慎重にだ。
「ったく。人間ってのは本当に愚かしいな」
「いい人もいるよ?」
「欲にまみれたやつだっているだろ」
探せばいるだろうが、全員というわけでもない。
チーは空中で腕組をしながら、黙って目を閉じた。何か考えているらしい。
「……しばらく様子を見るか」
ぼそりと呟くと、チーはメルティアの膝の上で横になって大きくあくびをする。
「チーくん寝ちゃうの?」
「起きたら相手してやるから」
ひらひらと手を振られて、メルティアは小さく笑う。
起きたらということは、このままメルティアと一緒に来てくれるということなのだろう。
「おやすみ、チーくん」
すぐに眠ったから、本当に忙しかったのだろう。
メルティアは機嫌よく馬車のカーテンを引いて窓の外を見た。馬車を取り囲んでいる兵士の一人と目が合ってしまい、内心飛び上がりながらぺこりと会釈してカーテンを閉じた。
それにしても本当にすることがない。
おしりも腰も痛くなってくるし、何もすることがないと、つい余計なことを考えてしまう。
「……ジーク……」
ちゃんと騎士団に入れただろうか。
最後に振り向いてくれなかったけれど、嫌われたのだろうか。
ジークのせいじゃないという誤解はちゃんと解けただろうか。
馬車の背もたれに寄りかかって、メルティアも目を閉じる。
夢の中だけでも、あのときの続きを。
そんなことを想いながら眠りについた。
チーがやってきてから、メルティアは話し相手ができたことで元気を取り戻していた。
「もうすぐ着くみたい。どんなところかな?」
「さあな」
「チーくんも詳しくないの?」
「情報としてある程度知っているけど、オイラが実際に見たのはだいぶ昔だな」
だいぶ昔のだいぶは、どれだけだいぶなのか。
「チーくん昔は帝国にいたの?」
「帝国にいたというか、昔、妖精は世界中にいたぜ。オイラたちもあちこちに行ったりしてたからな」
「今はいないの?」
「ほとんどいないな。外見てもいないだろ?」
メルティアはこっそりカーテンを引いて外をのぞき見る。
舗装された道。今は街中なのか家が所狭しと建ち並び、緑はほとんどない。当然花もない。
妖精の姿を探してみたけれど、どこにもいなかった。
「いないね……」
街の雰囲気をながめても、ファルメリア王国とはずいぶん違う。
鎧に身を包んだ兵が勇ましく街を歩き、華やかなドレスに身を包む者もいれば、路地裏でガリガリに痩せ細った子どもが残飯を漁っている。
それに、なんだか空気が薄いような気がして、息苦しい。
「……わたし、やっていけるのかな」
もうすぐ到着するというのに、不安でいっぱいになる。
そわそわと手をいじっていると、馬車が停まった。
ゆっくりと、扉が開く。着いてしまったらしい。
「どうぞ。皇帝陛下がお待ちです」
メルティアは緊張した面持ちで馬車を降りる。
どうやら、皇帝自身が歓迎をしてくれるらしい。
メルティアは少しほっとした。やっぱり、いい人かもしれない。戦争王とは言っても、何か理由があるのかも。
そこまで考えて、ファルメリア王国を攻撃する理由なんてないはずだと顔を引き締める。
メルティアをここまで連れてきた兵たちに着いていくと、大きな広間の高い玉座の上に、煌びやかな身なりをした男性がいた。
手には宝石の付いた指輪がいくつも付けられ、王冠も金ピカに光り、とにかく派手だ。
白髪交じりの短髪に、豪快に生えた髭。
眼光は鋭く、釣りあがった眉に高い頬骨。
体には筋肉がたくさんついていて、メルティアの三倍くらいの大きさだ。
年齢はメルティアよりも数十個上に見えた。
「ほぉ。これがあの国の姫か」
椅子の上からじろじろと上から下まで見られる。
「こっちに来んか」
「は、はい」
メルティアはおそるおそる階段を上っていく。
そして皇帝がいるところまで来ると、皇帝はガサガサした武骨な手でぐいっと乱暴にメルティアの頬をつかんだ。
メルティアは驚いて目をめいっぱい見開きながら、顔をのぞき込んでくる皇帝を見つめる。
「ほぉ。なんとも愛らしい顔だ。よかろう。ワシの側室に迎えてやろう」
おぉおお! と両脇に控えていた兵たちから歓声があがる。
メルティアは何が起きたのか理解できず、おろおろと視線を泳がせた。
「おい、もっと喜ばんか」
「え。えっと……側室って、なんですか?」
皇帝は目を丸くしてガハガハと唾を飛ばしながら笑う。
「側室を知らんか! ワシの第七夫人に迎えてやると言うことだ」
「第七……ふじん? け、結婚するということですか?」
「そうだ。嬉しいだろう?」
「……」
メルティアは小さく笑って頭を下げた。
床に敷かれた真っ赤な絨毯を見つめながら、メルティアは動揺していた。
結婚。
ジークじゃない人と。
潰れそうに痛む胸を押さえて、自分に言い聞かせる。
国のために生きると決めた。
それに、ジークとはもう二度と会わないつもりだったんだから、誰と結婚しようと同じじゃないか。
「式は三日後に執り行う。それまでにこの国になれるといい」
ガハガハと笑って、皇帝は玉座の裏にあった扉から去っていった。
置いてきぼりにされたメルティアがこれからどうすればいいのか困惑していると、玉座の下から声がした。
「メルティア姫様。こちらに」
「え?」
ピシっとまとめた黒髪と、釣りあがった目が印象的な美女が、冷たくメルティアを見つめていた。
「この三日間であなたをとびきりの美人に仕立てるよう仰せつかっております。時間はありません。のんびりなさらないで」
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