Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな

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神界に眠るもの

異獣の源

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とある小さな少年は、無法者の町ガドランに引き取られた。住む者は皆行き場を失った者のみで、云わば社会の脱落者の吹き溜まりである。少年を引き取った者は、町の者を束ねる戦士(ウォリアー)、アッシュ。少年は山奥の小さな集落に住んでいたが、父親は荒んだ人物で母親に暴力を振るい続け、執拗な暴力に耐えかねた母親は隙を突いて父親を刃物で殺してしまう。母親は少年を連れて家に火を放って集落から逃げ、彷徨っているうちに飢餓で力尽きてそのまま命を失った。残された少年も飢餓で事切れる寸前だったが、アッシュに発見され、そして拾われた。
「いいか。この町で生きていくにはどんな奴にも負けないくらい強くなる事だ」
大剣を背負うアッシュが鋭い目つきで幼い少年を見据える。少年はひたすら怯えるばかり。
「ガキであろうとメソメソ泣く事も許されねえ。弱い奴は虫ケラのように扱われて野垂れ死んでいくだけだ」
アッシュは少年の顔を乱暴に掴む。
「お前は……ゾルアという名前だったな。俺の戌として、死ぬ気で強くなれ。生きたければな」
少年――ゾルアはアッシュに鍛えられる日々を送る。アッシュの飼い犬として、無法者の戦士として育てられる。ガドランの無法者達は、子供であろうと決して容赦しない。使い走りは当たり前。少しでも逆らえば殴る蹴る等の暴行は日常茶飯事。常に血を吐きながらも、町の無法者からの暴行を受け続け、アッシュによって剣技を身に付けていく。成長していくに連れて、次第に剣の腕がアッシュと同格になっていくゾルア。
「お前……この俺とタメを張るようになるとは。思ったよりもやりやがる」
まさか、こいつには俺をも上回るような剣の才能があるのか? そんな事を思いつつも、アッシュは面白い事になりそうだと更に剣の腕を鍛えていく。こいつは一番の片腕になる。だが、敵に回すと厄介かもしれん。そう考えながら。

ある日、ガドランに凶暴な魔物の群れが現れる。町の無法者達は、いつでも魔物と戦えるように日々鍛錬を重ねている。低級の魔物ならば十分に戦えるものの、現れたのは並みの戦士ではかなわないレベルの魔物であった。次々と倒されていく町の無法者達。
「おい、何をしている! さっさと戦え!」
アッシュに言われるがまま魔物に挑むゾルア。剣を構え、まるで何かに取り付かれたかのように魔物を次々と斬り付けていく。その尋常じゃない動きは普通の人間には出来ない芸当だ。襲撃した魔物の群れは一瞬で全滅し、凍り付いていく。
「な……な……何なんだこいつは……」
ゾルアの恐るべき強さを見て明らかに普通の人間じゃないと感じた住民は畏怖するようになる。
「こいつが……こいつが魔物を呼び寄せたんだ! こいつはバケモノだ! こいつが魔物の親玉なんだ!」
「きっと魔導帝国が残したバケモノに違いねえ! やっちまえ!」
理不尽な言い掛かりと共に、無法者達が次々とゾルアに襲い掛かる。魔導帝国の猛威の影響もあり、異形の存在とみなされる者は人々から畏怖される傾向にある。
「俺は……こんなバケモノを育てていたのか。お前のようなバケモノを、俺が……」
ゾルアを片腕として育てたアッシュまでも敵意を向けていた。
「ぐ……やめろ……」
次の瞬間、ゾルアは激しい鼓動に襲われ、全身が熱くなるのを感じる。魔獣に変化していくゾルアの姿。この日、魔獣グレアウロとなったゾルアによってガドランはこの世から完全に消滅してしまった。グレアウロと化したゾルアは各地を彷徨っていたが、荒野の中で人間の姿に戻り、倒れた。


――そんな記憶が今蘇り、夢の中で再現された。


「目覚めたか。来い。魔人王様がお呼びだ」
夢から覚めたゾルアは魔人兵に呼び出され、痛む頭を抑えながら立ち上がる。そして魔人兵の案内で、バアルがいる謁見の間へ向かう。まさか今のが、俺の過去だというのか? 俺は人の子として生まれたのか? 俺の中にいるバケモノ――グレアウロは生まれた頃から存在していたのか? だが、今までになかったはずの記憶が俺の頭の中に存在している。何故記憶が蘇った? まさか、奴が……。
「来たか」
謁見の間には、バアルがいた。
「……勝敗は、どうなった。途中で奴が邪魔をしたせいで、俺は結果を知らない」
グレアウロの覚醒によって意識を失ったゾルアはバアルとの戦いによる勝敗を知らずにいた。
「普段の貴様の時は私の勝ちだ。グレアウロが目覚めた時は……引き分けに終わった」
バアルが勝敗を伝え、更に言葉を続ける。
「だが……グレアウロの姿を持つ身でありながらも、人として戦い続ける貴様の強さは色々興味深い」
注がれたグラスの酒を一口飲むバアル。
「いいだろう。教えてやる。貴様の正体を。ゾルアよ……貴様はデビスト族と呼ばれる存在」
デビスト族――人と魔獣の二つの姿を持つ禁忌の種族。太古の時代にて、人間の中にはあらゆる存在を超越する大いなる力を求めし者達が魔界との契約で『異獣核』と呼ばれるものを手にした。異獣核は年月が経つに連れて契約者に宿る魔獣の源と化し、人間と魔獣の二つの姿を持つようになる。それをデビスト族と呼んでいた。しかしそれは神々の間では禁忌とされており、神の怒りに触れる結果となって裁きを受け、デビスト族は絶滅してしまったが、異獣核はデビスト族の遠い子孫に受け継がれていた。それがゾルアであった。そして皇帝ゼファルドも魔導帝国時代での契約で異獣核を手にしており、ゾルアの中に存在する異獣核は契約ではなく、隔世遺伝によるものであった。契約で異獣核を与えた者は、ダルクノーア。伝説上では大魔王と呼ばれている魔界の支配者だ。ゾルアの遠い先祖と共存していたグレアウロは魔族を震撼させる存在であり、バアルの父ゼパルを葬った存在でもあった。ゼパルは栄誉ある闘士の魔王と呼ばれる者で、魔獣との壮絶な死闘は魔族の間で古の時代から語り継がれている。そして、ゾルアの中に宿るグレアウロは、受け継がれた魔の遺伝子より生まれ変わったグレアウロ。
「どうだ、ゾルアよ。己の正体を知った気分は」
バアルの問いにゾルアは表情を変えず、ただ見据えるばかりだ。
「……やはり俺はバケモノだったか、としか言いようがない。アンタは……そのうち奴を俺の命ごと奪うのか?」
ゾルアが問い返すと、バアルはグラスに注がれた酒を口にする。
「仇討ちといった事に興味は無い。この私が魔人を束ねし王の座を得る為、父は我が手で滅ぼされる運命だった。父は、グレアウロに討たれる前から私を後継者に選んでいたのだからな」
ゼパルは太古の時代から地上に住んでいた魔族であり、千年近くの年月を重ねた事で肉体は既に老いていた。魔族にも寿命がある。グレアウロとの死闘を繰り広げた時のゼパルは、既に寿命が近くなっていたのだ。息子のバアルを後継者として選んだ時、ゼパルはバアルに討たれる事を望んでいた。ゼパルを葬れる程の力を付けた時に、グレアウロはゼパルの命を奪っていたのだ。
「私は貴様の強さが気に入った。我が私兵として仕える資格がある」
バアルの一言に、ゾルアは「くだらん」と一蹴する。その時、一人の傷付いた魔人兵が駆け付けた。
「魔人王様! 契約の魔洞に得体の知れぬ者どもが……!」
契約の魔洞とは、魔界の支配者ダルクノーアとの契約を交わす場所である。太古の時代では魔界に繋がる場所となっていたが、現在では魔界への入り口は封鎖されている。
「……まさか」
妙な予感を覚えたバアルが立ち上がる。その時、三人の戦士が姿を現した。魔人将バルバルス、魔闘将ハウラス、魔騎将アヌドラス。暗黒の闘技場でゾルアと戦った精鋭の戦士達だ。三人ともゾルアとの戦いで負った傷は完全に回復している。
「契約の魔洞に現れた者どもはデルモンド王国を襲撃した魔物の主……我々の手で葬るべきです」
アヌドラスが進言する。現れたのは悪魔王ルシーナと協力関係にあるジョーカーズの者。そう確信したバアルはゾルアに視線を向ける。
「貴様が我々と共にすれば良い戦力になるが……」
ゾルアは興味がない、と内心呟いた瞬間、激しい頭痛に襲われる。そして、グレアウロの姿が浮かび上がる。


――奴ラハオマエヲ狙ッテイタ目障リナ奴ラダ。今ノウチニ潰ス。奴ラハイズレオマエヲ再ビ狙ウゾ……。


チッ、いちいち五月蝿い奴だ。黙ってろ。


グレアウロに抗いつつも、ゾルアは口を開く。
「……いいだろう。アンタと共にしてやる。俺の中の奴が五月蝿いもんでな」
バアルはふむ、と思いつつもグレアウロの力を感じ取っていた。
「魔人王様、まさかこの男まで戦力として迎えるというのですか?」
「この男は決してただの人間ではありませぬ。いずれ魔人王様に害を及ぼすかもしれませんぞ」
バルバルスとハウラスが言うと、バアルは目を見開かせる。
「愚か者どもが。この男の事は既に存じている。貴様らは無駄口叩かず、我が戌として動け」
バアルの一喝で黙るバルバルスとハウラス。ゾルアを私兵として迎え入れたバアルは精鋭の戦士と共に、契約の魔洞へ向かう。場所はデルモンド王国から少し離れたところに位置する。


契約の魔洞――暗黒大陸の中心部に聳え立つ巨大な岩山に設けられた大洞窟。最深部には古代呪法によって閉ざされた扉と巨大な祭壇の間がある。扉の向こうは魔界へと繋がっている。祭壇の間には、タロスがいた。バキラ、クロト、ミラーシェ、ダグ、そしてジョーカーの精神体もいる。破壊されたダグの甲冑と兜はたちまち修復されていく。ジョーカーの力によるものだった。
「まさか君程の者がこんな手傷を負うとはね。グレアウロを少し侮ったようですね」
ジョーカーの一言に、ダグは無言で応じる。
「でもそれもここまでじゃない? タロスが創造主になれば、グレアウロだろうと赤子同然じゃないかなぁ」
バキラが言うと、タロスはニヤリと笑う。
「それだけではない。創造主とならば、全て我が物となる。何者であろうとな」
タロスは祭壇に設けられた魔法陣の上に立ち、古代言語による詠唱を始める。


――またも力を求めし者が現れたか――


祭壇を囲む燭台に、黒い炎が灯っていく。響き渡る声の主は、魔界の支配者ダルクノーア。その時、ファントムアイが飛んでくる。バアル率いる魔人の部隊が契約の魔洞に来たという報告に現れたのだ。
「……タロス様の邪魔はさせぬ。行くぞ」
「やれやれ、しょうがないなぁ」
ダグ、バキラ、クロト、ミラーシェはバアル達を迎え撃つ為、その場から去る。タロスは自身の血を捧げ、ダルクノーアと契約を交わしていた。そう、創造主になる為の力を得る契約を。


一方、グライン達はヴァルキネスとの戦いでボロボロになっていた。ヴァルキネスの正体がリルモではないかという考えがどうしても頭から離れようとせず、本気で攻撃を仕掛けられないグライン。恐るべき槍捌きと闇の魔力が込められた数々の雷、水魔法の組み合わせによる攻撃に圧倒されるリフ、キオ、ガザニア。更にグラインの頭の中はマラクトの正体がフィドールではないかという考えまで浮かんでいた。
「何とも他愛のない。期待させておいてこのザマだなんてガッカリだわ」
物足りないと言わんばかりの表情で酒を口にするルシーナ。ヴァルキネスの全身が闇のオーラに包まれ、グラインを狙おうとしている。グラインは心を静める。あいつはリルモかもしれないけど、リルモではない。リルモであるはずがない。恐れるな。忘れたのか? 望まぬ運命を恐れてはいけないという事を。かつてヘルメノンによって変わり果てた姿になったバージルとラウラの事でも、救われなかった運命が降りかかるかもしれないけど、決してそれを恐れてはいけない事を言い聞かせていた。今、このヴァルキネスという敵がリルモであっても。元のリルモに戻れない可能性もあるとしても、それを恐れずに戦わなくてはならない。


全ての災いと運命に立ち向かう勇気を、忘れてはならない――。


ヴァルキネスが雷を纏った槍の一撃をグラインに向けて繰り出す。だがグラインはヘパイストロッドでヴァルキネスの槍を受け止める。強烈な電撃がグラインの全身を襲うが、グラインは動じない。
「……お前の正体がリルモであろうと、お前は僕の敵だ」
グラインの赤い目が光る。そして勇者の力を呼び起こし、炎と風の魔力を放出させる。
「ブレイジング・テンペスト!」
劫火の嵐がヴァルキネスを襲う。炎に包まれながら吹っ飛ばされていくヴァルキネスに、キオの炎気砲が次々と襲い掛かる。
「オラァ! そう易々とくたばりやしねぇぜ」
傷だらけの姿のキオが吼える。ダメージを受けたヴァルキネスは全身を黒い水煙で覆う。ヴァルキネスの周囲に黒い水の塊が次々と浮かび上がる。
「あれハ……みんな、気を付けテ!」
グライン達が身構えると、無数の黒い水の塊が弾丸のように飛んで行く。水の塊には黒い電撃が帯びていた。
「ぐうあああ!」
水の塊を受けると同時に電撃が襲い掛かる。水と雷の複合、そして闇の魔力が付加されたアクエリアボルトであった。
「今のはリルモの魔法アクエリアボルト……やはりお前は……!」
ますます正体がリルモである確信が強まるグラインは、反撃に転じようとヘパイストロッドを握る。
「グライン。奴は……元々あなたの仲間なの?」
リフがグラインに問う。
「……うん。リルモっていう、僕の先輩でもある仲間。信じたくないけど、ヴァルキネスの正体がリルモじゃないかって思うんだ。それに、もう一人も……」
グラインの話にリフがふと考える。
「邪悪な力に操られているというのなら……ルミナリオの聖光で元に戻せるかもしれない」
聖剣ルミナリオを両手で構えるリフ。刀身は僅かに光を放っていた。
「……可能ならば頼む。僕はもう、仲間を失いたくないんだ」
グラインの頼みにリフは黙って頷く。ヴァルキネスは闇の雷を纏う槍を掲げる。次の攻撃が来る! 全員が身構えると、ヴァルキネスは槍を地面に突き立てる。次々とせり上がる黒い雷の柱。広範囲に渡って電撃の波動が襲い掛かる。
「うわあああああ!」
攻撃を受けるグライン達。
「チッ、いつまでも調子乗ってんじゃないわよ」
ガザニアが種を投げる。種からは巨大な食虫植物が現れ、棘の生えた極太の蔦が伸びていく。蔦はヴァルキネスを捉えようとした瞬間、ガザニアが更に花粉付きの花弁を撒く。自然魔法で翻弄させる事で反撃のチャンスを伺うという作戦だった。
「聖剣ルミナリオよ……聖光となりて輝け!」
ルミナリオを振りかざすリフ。刀身が光り輝き、眩い光が辺りを包む。
「う……ぐっ! おお……ああぁっ……」
ヴァルキネスの動きが止まると、その場で槍を落として身震いさせ、頭を抱えながら蹲る。同時にマラクトも光によって身震いしていた。
「クッ、この光……あの人間の小娘……!」
ルシーナは忌々しげな表情を浮かべ、手元に赤い大鎌を出す。
「リフ、気を付けテ! ルシーナが!」
ティムの一言に思わず飛び退いたリフ。ルシーナが一瞬、大鎌でリフの首を狙おうと近くに現れたのだ。
「あんた……聖光の勇者を受け継ぐ者だというの?」
どういう事だとリフが問うと、ルシーナは大鎌でリフを攻撃する。だがリフは大鎌の一撃を剣で受け止める。
「……奴はイスキルと手を組んでこの私を倒した忌々しい人間よ」
ルシーナにとって聖光の勇者ティリアムは因縁深い存在であった。闇のエレメントを司り、自分に匹敵する力を持つ陰影の勇者イスキルがティリアムと共に自分を討った過去がある。イスキルは魔人に育てられた人間の勇者であり、未来の魔人の頂点に立つ者として鍛えられ、同属の脅威となる者を排除する為にティリアムと手を組んでいた。脅威となる存在の一つは魔人と対立関係にあったルシーナ率いる悪魔軍。もう一つは魔導帝国。脅威との戦いの末、魔道帝国は滅びたものの、ルシーナは辛うじて生き延び、悪魔軍が全ての魔族、全ての世界を支配する時代をもたらす為、眠りに就いた。眠りから覚めたルシーナは悪魔兵を結集し、ジョーカーズと協力関係を結んで復讐を誓う。忌まわしき者どもは必ず消す、と。
「気が変わったわ。今から私の手でこの女を消す。ヴァルキネス、さっさと動きなさい」
ルシーナの妨害によって眩い聖光は収まっていき、リフは大鎌を構えるルシーナを前に剣を構える。
「何だ、親玉が相手かよ?」
キオが攻撃態勢に入った時、激しい地鳴りが起きる。
「うわあ! な、何が起きたんだ?」
地鳴りは止まらない。ルシーナはクックックッと笑い始める。
「これは……タロスの奴、魔界の支配者と契約したのかしら?」
ルシーナの言葉にグラインは驚く。
「魔界の支配者? 契約だと……?」
不敵に笑い続けるルシーナ。地鳴りが起きる中、壁に拘束されたイーヴァの身体がピクリと小刻みに動いた。


契約の魔洞に潜入したバアル達は、バキラが放った凶悪な魔物の群れと、傀儡の呪術によって操られた多くの魔人兵と激しい戦いを繰り広げていた。地鳴りが鳴り響いても戦いは収まる事なく、次々と魔物を倒していくバアル達。
「何だこの地鳴りは……」
洞窟全体に伝わる地鳴りに、アヌドラスは只ならない予感を覚えつつも大剣で魔物を次々と叩き斬っていく。
「これはただの地鳴りではない」
「こいつは……何か途轍もない力を感じる」
バルバルスとハウラスが同時に魔物を撃退していくと、けたたましい笑い声が聞こえてくる。バキラの笑い声だ。
「アハハハハ、とうとう覚醒したよ。今、新たなる世界の創造主が目覚めた」
空中に浮かんだまま、バアル達を見下ろすバキラ。
「創造主……だと?」
バアルがカラミティアックスを構える。バキラは動じずに不敵な笑みを浮かべると、奥から黒光りする禍々しいオーラを放ったタロスがゆっくりと歩み寄る形でやって来る。傍らにはダグ、クロト、ミラーシェもいた。
「クックック……これで私は完全なる主となった。完全なる闇が支配する暗黒の楽園……我が理想郷の始まりとなるのだ」
タロスが魔力を放出すると、周囲に凄まじい衝撃が襲い掛かる。衝撃から感じる威圧感はバアル、ゾルア、そして精鋭の戦士三人も震撼させる程だ。
「そうか、地鳴りの正体はこやつが……」
アヌドラスは大剣を掲げ、タロスに挑もうとする。
「理想郷だと? ふざけた事を」
バルバルスとハウラスが戦闘態勢に入る。
「む、待て」
バアルの制止を聞かず、精鋭の戦士三人がタロスに挑む。ハウラスの飛び上がっての爪による攻撃がタロスを襲う。だがタロスはニヤリと笑い、腕の一振りでハウラスの身体に深い傷を刻み、更に次々と身体に無数の傷を刻んでいく。
「グオアアア!」
血が舞う中、ハウラスが苦悶の叫び声を上げる。
「おのれぇっ!」
バルバルスが拳を振り上げるものの、タロスは指から五つの光球を放つ。光球は上に飛んで行き、バルバルス目掛けて落下していくと、次々と爆発が起きる。
「ガアアアアアア!」
爆発の破壊力は凄まじく、バルバルスの肉体を一瞬でズタズタにしていた。
「貴様ぁっ!」
アヌドラスが大剣による必殺技を次々と繰り出す。タロスはアヌドラスの技を軽く受け止め、アヌドラスの身体に光球を取り付ける。すると、取り付けられた光球は大爆発を起こす。
「ウガアアアアアアア!」
まるで内部から破裂したかの如く、アヌドラスの身体は傷穴だらけになっていた。
「フム……この程度でもこれ程の威力とはな。軽く放ったつもりだが」
ダルクノーアとの契約で手にした力について面白い、と感想を漏らすタロス。契約で手にしたものは『破壊と創造の力』で、完全なる超越者としての創造主となったのだ。



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