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夏を迎える前のアレ 6
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お盆が終わりみんな緑風荘に帰ってきた。
渉は妹さんのお土産をいっぱい買って帰ったので見送るほうとしては本人の好みも聞かずに大丈夫かと思ったけど、帰ってきた時はニコニコとした顔で戻って来たので喜んでもらえたのだろうとほっとした。
そしてあまりほっとできないのが颯也の方だった。
「やっぱりあのクソ親竜也を虐待してやがってて即行警察に連絡してやった」
ふくれっ面で怒っていた颯也は
「家庭内だからとか言って介入するのはどうかとか言いやがったから病院行って病院の方から通報してもらった」
そこであきらめなかった事を盛大に誉めてあげたい。
「マジ?で、竜也大丈夫なのかよ」
颯也の横で瑞己が心配して聞けば
「このくっそ熱い中エアコンのない納屋に押し込めて飯も碌に食べさせてなくて。
体中もあざだらけで……
今は近所に住んでる叔父さんの所で引き取ってもらってる。叔父さんのところ子供がいないからやっと堂々と引き取ることが出来て大喜びでさ。俺にも良くしてくれて生まれる親を間違えたってぐらいいい人でさ……」
きっと二人の苦しさを、特に竜也の理不尽さを理解してくれている人なのだろうと想像は付く。
「良かったな。叔父さんの所に引き取ってもらえて……」
簡単に良かったと言っていいのかと思うも颯也は強く頷いていて
「あいつらが竜也を虐待してるのはみんな知ってるから前から叔父さんがうちに引き取ろうかって言ってくれてて。
だけどあいつらがうちの子を奪うとか大騒ぎして仕方なく近くで目を光らせていたらしいけど、さすがに家の中の事までは見えないから。
特に外に出る機会の少ない夏休みになると」
なんてすごく悔しそうな顔をしている颯也に
「だけどこれで一歩進んでよくなったじゃないか」
「っす。
婆ちゃんには良い孫の顔で捕まりたくなかったら病院に行って検査してもらって診断書をもって警察に言えば大丈夫だからってそそのかせば案の定アルツハイマー何とかって言うの?が結構進んでいたみたいでそのまま入院してもらいました。きっともう二度と出てこれないだろうって叔父さん言ってましたし、あの二人も結構余罪とかあったかとかで親権はく奪してもらいます。
弁護士とか挟んで……
ええと、叔父さんが万が一の時の事を考えて前もって相談したり実績作って準備していたのですぐに動いてもらえました」
きっと今回颯也が動かなくても時間の問題だったのだろうことは想像がついた。
とはいえ少しでも早くこの世の地獄が終わるほうが大切だけど、確実な何かが欲しかったところなのだろう。
「あとしのさんに連絡しなくちゃ。
しのさんからもらったをプリント竜也に渡しちゃったんです。
あれわかりやすい説明もついていて勉強が遅れがちな竜也でも理解できたって喜んでたからこれで勉強しろって……」
この様子だと自分の分も置いてきたのだろうと呆れてしまうも
「しのさんはそんなことで怒る人じゃないぞ。むしろあのプリントが必要な人に渡って喜んでくれるぞ」
まるで布教活動のようだと思うのは実は俺もやらされた覚えがあるので確実だと思っている。
「とりあえず第三者の俺達からは良かったなって言う言葉しかない。
だけどその叔父さん達信用していいのか?」
人の家庭に突っ込んで聞いていいのかと思うも聞かずにはいられなくて口にすれば颯也はにっこりと笑い
「物心ついたころからかわいがってくれた人たちなんだ。
特にあいつらの虐待が発覚してからは逃げ込み先になってて。
だけど大きくなるにつれていつまでも甘えるのはって思うようになったらしくて俺が大学に入ってからは馬鹿な事に我慢したんだって。
とりあえず救急車とパトカーが集まってご近所さんもがっつり集まってくれたからもう恥ずかしくて家に帰りたくないって言いだしたけどそもそも家に帰れない事になってるから……
家に帰ったその日のイベントからこっちに戻って来るまで家の中を必死になって整理してきた」
きりっとわけのわからない事を言う颯也にどういうことかとみんな意味不明な笑顔に顔を引きつらせていれば
「高校の時の友達たちにヘルプ頼んで家の中の整理整頓をしたんだ。
婆ちゃんは帰って来れないって話にしてもらったから婆ちゃんの物で金目のある物以外全部処分して、あの二人も当分帰って来れないから婆ちゃんの入院費をあの人たちからの通帳からがっつり払っておいたし」
さっぱりとした笑顔を浮かべる颯也に思わず無言。
「家の中の要らないものも片付けたしね。
俺も竜也も二度と帰るつもりはないから私物は全部処分してきたんだ。
趣味の釣りのルアーのコレクションなんて一番のゴミじゃん。環境にも良くないから釣具屋さんに引き取ってもらったんだ。一緒に釣り竿も。
結構いい値段になってお疲れ会のご飯代にはなったよ。
あとうちのエアコン15年物とかそんな年代物なんだって。省エネになりそうもないから取っ払ってもらったんだ。
冷蔵庫の中身も処分して、ついでに冷蔵庫と洗濯機も当分使わないからジ〇ティーで処分してテレビは欲しいっていう奴がいたからあげたし、ちょうど衣類の廃品があったからゴミ袋に全部詰めてやった。
軽トラ持ってきてくれた友人もいたからゴミ処分場まで往復してもらったし、掃除が苦手な人たちだったからゴミでいっぱいだった家の中がすっきりしたんだ」
忙しかったーと満足げに笑みを浮かべる颯也の躊躇いのなさに恐怖を覚える。
だいたいお婆さんを帰って来れないって話にしてもらったという時点から颯也がまともな精神じゃないことに気付けと数分前の俺に言ってやりたい。
「ありがたい事にあいつらも当分帰ってこないからご近所様に迷惑はかけるわけにいかないでしょ? 雨戸を閉めた所でカーテンもいらないんじゃね?って話をして処分して……
田んぼは良い感じに稲が育っているけど収穫する人いなくてもったいないからご近所さんにそのうち稲を刈りとってもらうのをお願いしてきたし」
「うわー、これで一年の収入はパァか」
「悔しい事に他の野菜からの収入があるからそんな事は無いんだけど」
ガチ農家な事を理解したが
「それでも大ダメージだな」
「いえ、もともと竜也にはお金をかけてなかったし、俺もこの大学時代の生活費自分で賄ってたし」
言いながらにこやかな顔で
「帰ってくる前にスマホ変えたんだ。
あ、番号も変えたから後で登録よろしく!」
思い切ったな。
すがすがしいまでにやり切ったという顔の颯也に苦笑しながら俺達はスマホを取り出して颯也の番号を登録し直すのだった。
*********************************
前話をダブって投稿してしまいご迷惑おかけしました。
ご連絡くださって本当にありがとうございました。
こりずにこれからもよろしくお願いします。
渉は妹さんのお土産をいっぱい買って帰ったので見送るほうとしては本人の好みも聞かずに大丈夫かと思ったけど、帰ってきた時はニコニコとした顔で戻って来たので喜んでもらえたのだろうとほっとした。
そしてあまりほっとできないのが颯也の方だった。
「やっぱりあのクソ親竜也を虐待してやがってて即行警察に連絡してやった」
ふくれっ面で怒っていた颯也は
「家庭内だからとか言って介入するのはどうかとか言いやがったから病院行って病院の方から通報してもらった」
そこであきらめなかった事を盛大に誉めてあげたい。
「マジ?で、竜也大丈夫なのかよ」
颯也の横で瑞己が心配して聞けば
「このくっそ熱い中エアコンのない納屋に押し込めて飯も碌に食べさせてなくて。
体中もあざだらけで……
今は近所に住んでる叔父さんの所で引き取ってもらってる。叔父さんのところ子供がいないからやっと堂々と引き取ることが出来て大喜びでさ。俺にも良くしてくれて生まれる親を間違えたってぐらいいい人でさ……」
きっと二人の苦しさを、特に竜也の理不尽さを理解してくれている人なのだろうと想像は付く。
「良かったな。叔父さんの所に引き取ってもらえて……」
簡単に良かったと言っていいのかと思うも颯也は強く頷いていて
「あいつらが竜也を虐待してるのはみんな知ってるから前から叔父さんがうちに引き取ろうかって言ってくれてて。
だけどあいつらがうちの子を奪うとか大騒ぎして仕方なく近くで目を光らせていたらしいけど、さすがに家の中の事までは見えないから。
特に外に出る機会の少ない夏休みになると」
なんてすごく悔しそうな顔をしている颯也に
「だけどこれで一歩進んでよくなったじゃないか」
「っす。
婆ちゃんには良い孫の顔で捕まりたくなかったら病院に行って検査してもらって診断書をもって警察に言えば大丈夫だからってそそのかせば案の定アルツハイマー何とかって言うの?が結構進んでいたみたいでそのまま入院してもらいました。きっともう二度と出てこれないだろうって叔父さん言ってましたし、あの二人も結構余罪とかあったかとかで親権はく奪してもらいます。
弁護士とか挟んで……
ええと、叔父さんが万が一の時の事を考えて前もって相談したり実績作って準備していたのですぐに動いてもらえました」
きっと今回颯也が動かなくても時間の問題だったのだろうことは想像がついた。
とはいえ少しでも早くこの世の地獄が終わるほうが大切だけど、確実な何かが欲しかったところなのだろう。
「あとしのさんに連絡しなくちゃ。
しのさんからもらったをプリント竜也に渡しちゃったんです。
あれわかりやすい説明もついていて勉強が遅れがちな竜也でも理解できたって喜んでたからこれで勉強しろって……」
この様子だと自分の分も置いてきたのだろうと呆れてしまうも
「しのさんはそんなことで怒る人じゃないぞ。むしろあのプリントが必要な人に渡って喜んでくれるぞ」
まるで布教活動のようだと思うのは実は俺もやらされた覚えがあるので確実だと思っている。
「とりあえず第三者の俺達からは良かったなって言う言葉しかない。
だけどその叔父さん達信用していいのか?」
人の家庭に突っ込んで聞いていいのかと思うも聞かずにはいられなくて口にすれば颯也はにっこりと笑い
「物心ついたころからかわいがってくれた人たちなんだ。
特にあいつらの虐待が発覚してからは逃げ込み先になってて。
だけど大きくなるにつれていつまでも甘えるのはって思うようになったらしくて俺が大学に入ってからは馬鹿な事に我慢したんだって。
とりあえず救急車とパトカーが集まってご近所さんもがっつり集まってくれたからもう恥ずかしくて家に帰りたくないって言いだしたけどそもそも家に帰れない事になってるから……
家に帰ったその日のイベントからこっちに戻って来るまで家の中を必死になって整理してきた」
きりっとわけのわからない事を言う颯也にどういうことかとみんな意味不明な笑顔に顔を引きつらせていれば
「高校の時の友達たちにヘルプ頼んで家の中の整理整頓をしたんだ。
婆ちゃんは帰って来れないって話にしてもらったから婆ちゃんの物で金目のある物以外全部処分して、あの二人も当分帰って来れないから婆ちゃんの入院費をあの人たちからの通帳からがっつり払っておいたし」
さっぱりとした笑顔を浮かべる颯也に思わず無言。
「家の中の要らないものも片付けたしね。
俺も竜也も二度と帰るつもりはないから私物は全部処分してきたんだ。
趣味の釣りのルアーのコレクションなんて一番のゴミじゃん。環境にも良くないから釣具屋さんに引き取ってもらったんだ。一緒に釣り竿も。
結構いい値段になってお疲れ会のご飯代にはなったよ。
あとうちのエアコン15年物とかそんな年代物なんだって。省エネになりそうもないから取っ払ってもらったんだ。
冷蔵庫の中身も処分して、ついでに冷蔵庫と洗濯機も当分使わないからジ〇ティーで処分してテレビは欲しいっていう奴がいたからあげたし、ちょうど衣類の廃品があったからゴミ袋に全部詰めてやった。
軽トラ持ってきてくれた友人もいたからゴミ処分場まで往復してもらったし、掃除が苦手な人たちだったからゴミでいっぱいだった家の中がすっきりしたんだ」
忙しかったーと満足げに笑みを浮かべる颯也の躊躇いのなさに恐怖を覚える。
だいたいお婆さんを帰って来れないって話にしてもらったという時点から颯也がまともな精神じゃないことに気付けと数分前の俺に言ってやりたい。
「ありがたい事にあいつらも当分帰ってこないからご近所様に迷惑はかけるわけにいかないでしょ? 雨戸を閉めた所でカーテンもいらないんじゃね?って話をして処分して……
田んぼは良い感じに稲が育っているけど収穫する人いなくてもったいないからご近所さんにそのうち稲を刈りとってもらうのをお願いしてきたし」
「うわー、これで一年の収入はパァか」
「悔しい事に他の野菜からの収入があるからそんな事は無いんだけど」
ガチ農家な事を理解したが
「それでも大ダメージだな」
「いえ、もともと竜也にはお金をかけてなかったし、俺もこの大学時代の生活費自分で賄ってたし」
言いながらにこやかな顔で
「帰ってくる前にスマホ変えたんだ。
あ、番号も変えたから後で登録よろしく!」
思い切ったな。
すがすがしいまでにやり切ったという顔の颯也に苦笑しながら俺達はスマホを取り出して颯也の番号を登録し直すのだった。
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ご連絡くださって本当にありがとうございました。
こりずにこれからもよろしくお願いします。
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