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夏休みは夏が終わってからが本番だ 2
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車をレンタルして叔父さんが相続した海の見える別荘へと向かった。
子供の頃は夏になると毎年遊びに来て従弟妹たちと会うのを楽しみにしていた場所だ。
出発前日には颯也の弟の竜也が来て、緑風荘で歓迎会をしてからの出発。
久しぶりの旅行楽しみでしたという竜也の言葉に修学旅行はどうした?とはとてもじゃないが聞けなかった。
昨日緑風荘で歓迎会をしてから気が付いたけど、颯也が家を出てからかなりの抑圧を受けていたのだろう。
理想的な子供と言う挨拶や行動、それ以前に個と言う表現を押さえつけられて育てられた、そんな言動に痛々しさを覚えつつも
「修司さんが親戚の別荘に招待してくれるんだって。
俺も初めてだから良く知らないけどプールとかジャグジーとかあるんだって。
ジャグジー初めてだから楽しみだな!」
颯也が自分も知らない事をしっかりと伝えて、それを楽しみにしている事。そして
「俺、大学に行ってからずっとバイトづくめだったから初めて海に遊びに行くんだ。竜也と一緒に行けるって楽しみしかないだろ!」
心の底から喜ぶ言葉に少しだけ理解できないと言うように呆けた顔をしていたけど、次第に理解が出来れば嬉しくて、照れくさしい、そんな真っ赤になった顔。
「俺も楽しみ……」
小さい声だけど確かに期待を込めた言葉。
そんな様子に少しずつでいい。颯也と一緒にたくさんの事を体験できればいいなと思ったのが昨日。
夜が明けて車を飛ばし、途中休み休みサービスエリアの売店でご当地色の強い料理を食べる。
「おかしいな。なんで俺ソフトクリームばっかり食べてるんだろ。
っていうかサービスエリアごとにご当地ソフトクリームってどんな罠だよ!
ご当地なくてもスジャー〇のソフトクリームのバラエティ多すぎだろ!」
瑞己の同情のできない叫び声に
「腹を壊してでも一つでも多くのサービスエリアに足止めさせるためじゃね?」
呆れたように俺達はへっちゃらだけどと言う陽人が竜也と肩を組んで全く情けないと言うように言う。
その様子をハラハラして見守る渉も面白いが
「レンタカー汚すなよ」
「さすがに汚しません!」
逆切れする瑞己が笑えるーって笑う颯也はご当地フランクフルト派で遠慮しがちな竜也と半分こするブラコンだった。
そしてたどり着いた叔父の別荘。
行く事は伝えてあったから管理人の人が掃除をして食料も用意してもらっている。
BBQやりたいからってことも伝えてあったからか用意してもらったぞと連絡ももらった。
さすがにご飯までは作ってくださいとは言えなかったしね。
至れり尽くせりの叔父の親切さに仕事をもうちょっと早く終わらせて提出しようとしばらくはやたらと仲の良い親父たち三兄弟の要請にはなるべく応える決意をした。
こうやってコントロールされていくんだろうな俺と言う点にも悩みつつも充実している日々に別に嫌だとは思ってない。これは本当に困った話だ。
ともあれ、ガレージに車を置いて荷物をもって別荘に入れば
「んなとこに突っ立ってないで。
荷物は二階のベッドルームで良いよな?」
ついてこーいと言いながら二階に上がる階段を昇れば慌ててついてくる瑞己たち。
「俺は親父たちが主に使っていた部屋使うから。いろいろ私物も置いてあるし。
後は適当に部屋割りしろよ」
運転疲れたーとぼやきながらもそれ以上にサービスエリアの食べ歩きで疲れた腹をさすりながら
「とりあえず少し休んでいい?
その間家の中とか周辺とか探検してきていいよ。
麓には海の家はもうないけど観光地になっているから夕方までに帰ってこればいいから。
夜はBBQのつもりだからある程度腹を空かせておけ」
言えば借りた猫のように妙におとなしかった瑞己たちは俺がベッドに寝そべる姿を見て
「じゃあ、お言葉に甘えて近所を散歩してくる。
あと、ひょっとしたらプール使ってもいい?」
「使えー。海はクラゲがいるからおすすめしないぞー」
言いながらも半分眠りかけている俺は早く眠らせてくれと言うように枕を抱きしめて本格的に眠る体制になっていた。
まあ、瑞己たちはしっかり休んでねと言うようにカーテンを閉めてくれたけど。
とりあえずエアコンも付けて行ってくれたから俺はなけなしの体力でスマホの目覚まし時計をセットして今度こそ眠るために瞼を閉ざすのだった。
「兄ちゃん、修司さんてお金持ちなの?」
「いや、会社運営している一族だとは聞いているけど、そんな一族それなりにいるし……」
「寮は古いのに……」
「修司さんのおばあさん、前の大家さんがあの寮になる前の家に思い出がたくさんあって処分できないのを俺達みたいな訳ありな奴らに貸してくれてるんだ」
だから古いとか金持ちとかそういう話じゃないんだと言えばまだ納得できないのはたぶん家での不遇な自分の生い立ちに比べて修司さんの生活が華やかに見えるからだろう。
だから
「修司さんはそういう家の生まれだから。
俺達が一生懸命した勉強以上の事をたくさん勉強しててさ。
この間修司さんの仕事の一部が見えたけど全部英語で書いてあったんだ。
修司さん英語ペラペラなんですねー、なんて言ったらこれはフランス語だ。それぐらい見分けろって怒られたしw」
「……」
瑞己の言葉に言葉を失う竜也に俺はそっと頭に手を置いて撫でてやる。
「金持ちには金持ちの苦労があるんだ。
俺、英語凄く苦手で、今更だけど英語を1から勉強し直している。
この年齢になるとある程度基礎知識があって勉強に向き合えるけど、修司さんひらがなを覚える年齢から英語も勉強して。
必死になって遊ぶ暇もないくらい塾通いして顔色の悪い友人がいたけど、たぶんそれ以上に頑張って来たんだよな。
いつか会社とか、親が残してくれた家とかをちゃんと引き継げるようにとか。
きっと友達が遊ぶ約束とか寄り道したりとかそう言う話を羨ましそうに眺めながら小さいころから親の期待を背負って頑張って来たんだろうね。
そうして頑張った挙句に周囲から羨ましがられて修司さんと言う人物を見ずにその背負っているものの恩恵をまるで自分の物のように奪おうとする人、そういう人たちに囲まれてきたんだろうね」
竜也はしばらくの間何を言っているのか分からない顔をしたけど、ゆっくりと時間をかけて頭の中で理解していったのだろう。
きっと華やかだった修司さんの生活の中で修司さんが友人と呼ぶ人物の少なさにそういう事だと俺達は想像してしまう。
その点しのさんは修司さんとうまく付き合っていて、今回のこの旅行に一緒に来れなかったことを残念に思いながらもあの二人ならこれからもずっと機会があるだろうから気にする必要はないと俺達は思っている。
子供の頃は夏になると毎年遊びに来て従弟妹たちと会うのを楽しみにしていた場所だ。
出発前日には颯也の弟の竜也が来て、緑風荘で歓迎会をしてからの出発。
久しぶりの旅行楽しみでしたという竜也の言葉に修学旅行はどうした?とはとてもじゃないが聞けなかった。
昨日緑風荘で歓迎会をしてから気が付いたけど、颯也が家を出てからかなりの抑圧を受けていたのだろう。
理想的な子供と言う挨拶や行動、それ以前に個と言う表現を押さえつけられて育てられた、そんな言動に痛々しさを覚えつつも
「修司さんが親戚の別荘に招待してくれるんだって。
俺も初めてだから良く知らないけどプールとかジャグジーとかあるんだって。
ジャグジー初めてだから楽しみだな!」
颯也が自分も知らない事をしっかりと伝えて、それを楽しみにしている事。そして
「俺、大学に行ってからずっとバイトづくめだったから初めて海に遊びに行くんだ。竜也と一緒に行けるって楽しみしかないだろ!」
心の底から喜ぶ言葉に少しだけ理解できないと言うように呆けた顔をしていたけど、次第に理解が出来れば嬉しくて、照れくさしい、そんな真っ赤になった顔。
「俺も楽しみ……」
小さい声だけど確かに期待を込めた言葉。
そんな様子に少しずつでいい。颯也と一緒にたくさんの事を体験できればいいなと思ったのが昨日。
夜が明けて車を飛ばし、途中休み休みサービスエリアの売店でご当地色の強い料理を食べる。
「おかしいな。なんで俺ソフトクリームばっかり食べてるんだろ。
っていうかサービスエリアごとにご当地ソフトクリームってどんな罠だよ!
ご当地なくてもスジャー〇のソフトクリームのバラエティ多すぎだろ!」
瑞己の同情のできない叫び声に
「腹を壊してでも一つでも多くのサービスエリアに足止めさせるためじゃね?」
呆れたように俺達はへっちゃらだけどと言う陽人が竜也と肩を組んで全く情けないと言うように言う。
その様子をハラハラして見守る渉も面白いが
「レンタカー汚すなよ」
「さすがに汚しません!」
逆切れする瑞己が笑えるーって笑う颯也はご当地フランクフルト派で遠慮しがちな竜也と半分こするブラコンだった。
そしてたどり着いた叔父の別荘。
行く事は伝えてあったから管理人の人が掃除をして食料も用意してもらっている。
BBQやりたいからってことも伝えてあったからか用意してもらったぞと連絡ももらった。
さすがにご飯までは作ってくださいとは言えなかったしね。
至れり尽くせりの叔父の親切さに仕事をもうちょっと早く終わらせて提出しようとしばらくはやたらと仲の良い親父たち三兄弟の要請にはなるべく応える決意をした。
こうやってコントロールされていくんだろうな俺と言う点にも悩みつつも充実している日々に別に嫌だとは思ってない。これは本当に困った話だ。
ともあれ、ガレージに車を置いて荷物をもって別荘に入れば
「んなとこに突っ立ってないで。
荷物は二階のベッドルームで良いよな?」
ついてこーいと言いながら二階に上がる階段を昇れば慌ててついてくる瑞己たち。
「俺は親父たちが主に使っていた部屋使うから。いろいろ私物も置いてあるし。
後は適当に部屋割りしろよ」
運転疲れたーとぼやきながらもそれ以上にサービスエリアの食べ歩きで疲れた腹をさすりながら
「とりあえず少し休んでいい?
その間家の中とか周辺とか探検してきていいよ。
麓には海の家はもうないけど観光地になっているから夕方までに帰ってこればいいから。
夜はBBQのつもりだからある程度腹を空かせておけ」
言えば借りた猫のように妙におとなしかった瑞己たちは俺がベッドに寝そべる姿を見て
「じゃあ、お言葉に甘えて近所を散歩してくる。
あと、ひょっとしたらプール使ってもいい?」
「使えー。海はクラゲがいるからおすすめしないぞー」
言いながらも半分眠りかけている俺は早く眠らせてくれと言うように枕を抱きしめて本格的に眠る体制になっていた。
まあ、瑞己たちはしっかり休んでねと言うようにカーテンを閉めてくれたけど。
とりあえずエアコンも付けて行ってくれたから俺はなけなしの体力でスマホの目覚まし時計をセットして今度こそ眠るために瞼を閉ざすのだった。
「兄ちゃん、修司さんてお金持ちなの?」
「いや、会社運営している一族だとは聞いているけど、そんな一族それなりにいるし……」
「寮は古いのに……」
「修司さんのおばあさん、前の大家さんがあの寮になる前の家に思い出がたくさんあって処分できないのを俺達みたいな訳ありな奴らに貸してくれてるんだ」
だから古いとか金持ちとかそういう話じゃないんだと言えばまだ納得できないのはたぶん家での不遇な自分の生い立ちに比べて修司さんの生活が華やかに見えるからだろう。
だから
「修司さんはそういう家の生まれだから。
俺達が一生懸命した勉強以上の事をたくさん勉強しててさ。
この間修司さんの仕事の一部が見えたけど全部英語で書いてあったんだ。
修司さん英語ペラペラなんですねー、なんて言ったらこれはフランス語だ。それぐらい見分けろって怒られたしw」
「……」
瑞己の言葉に言葉を失う竜也に俺はそっと頭に手を置いて撫でてやる。
「金持ちには金持ちの苦労があるんだ。
俺、英語凄く苦手で、今更だけど英語を1から勉強し直している。
この年齢になるとある程度基礎知識があって勉強に向き合えるけど、修司さんひらがなを覚える年齢から英語も勉強して。
必死になって遊ぶ暇もないくらい塾通いして顔色の悪い友人がいたけど、たぶんそれ以上に頑張って来たんだよな。
いつか会社とか、親が残してくれた家とかをちゃんと引き継げるようにとか。
きっと友達が遊ぶ約束とか寄り道したりとかそう言う話を羨ましそうに眺めながら小さいころから親の期待を背負って頑張って来たんだろうね。
そうして頑張った挙句に周囲から羨ましがられて修司さんと言う人物を見ずにその背負っているものの恩恵をまるで自分の物のように奪おうとする人、そういう人たちに囲まれてきたんだろうね」
竜也はしばらくの間何を言っているのか分からない顔をしたけど、ゆっくりと時間をかけて頭の中で理解していったのだろう。
きっと華やかだった修司さんの生活の中で修司さんが友人と呼ぶ人物の少なさにそういう事だと俺達は想像してしまう。
その点しのさんは修司さんとうまく付き合っていて、今回のこの旅行に一緒に来れなかったことを残念に思いながらもあの二人ならこれからもずっと機会があるだろうから気にする必要はないと俺達は思っている。
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