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夏休みは夏が終わってからが本番だ 4
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「俗にいう庶民的一般な事はたぶんしのさんが教えこんだと思う。しのさんの一般的知識はほとんど俺達と変わらないから見ていても安心できるしね。あとバイト先からたくさんの情報を学習しているのもわかるし……」
「自宅でバイト先メニューを再現するあたり一般的とは違うとおもいまーす」
ビールやジュース片手に栄螺や牡蛎を網の上に置いてふつふつと温まっていく様子を眺めながら陽人は唸る。
「そもそもバイトしていただけで店のメニューが作れるとかありえんだろ」
「頭付きのエビチリないですよねー、ヤバウマー」
「アジフライも揚げるだけの状態の奴じゃなくて内臓付きのアジからだったし」
「そういや前にスルメイカを山ほど買ってきてイカフライ作ってくれたけどその裏で自分の肴ように塩辛作ってたし」
「むしろそれが目当てのようにも見えたな」
俺の言葉に颯也も唸る。
因みに後で知った事だが塩辛の作り方を伝授していたのはしのさんだったらしい。
何やらお世話になってる人から教えてもらったとか……
おこぼれをもらったけど臭みもなく旨味がギュッと詰まった塩辛に歓喜したのは当時○○歳。
あの時いた先輩も巻き込んでこっそりお酒をもらったのは修司さんの知らない内緒の話。
いい思い出だ。
思い出に浸る合間にも牡蛎の殻がパカッと開く。
栄螺もくつくつと煮だってお酒と醤油をたらりと垂らす。
トングでとりわけながら軍手をした手で栄螺を持ち蓋を外してつま楊枝を身にさしてぐるりと回すように殻から身を外す。
「よっしゃ!内臓ごと綺麗に取れた!」
謎の達成感。とはいえ
「これ、どこまで食べれるんだろ」
渉が全部食べていいものかと聞いてきたけどお店のおばちゃんがちょうど通りかかって俺達の盛り上がりを耳にしたようで
「基本全部食べれますよ。だけど苦いのが苦手でしたら身の部分にしたほうがいいよ。
通な人だととぐろ部分を醤油と混ぜて肝醤油にしてからめて食べるけど…… お勧めよ」
なるほどとまずは全部食べてみる事にして……
「うーん、砂?じゃりじゃりいう?」
「苦い……」
颯也と竜也の兄弟が真っ先に試したのを聞いて俺は試す前に割りばしを駆使しておばちゃんの言う所を口にする。
「ぐるぐるの所はほろ苦いと言うか、魚の内臓を食べるよりはましか?」
「試しに肝醤油…… 醤油多すぎた。醤油の味しかしない」
俺も試してしょっぱいと言えば陽人が自分の分の肝を俺の皿に入れれば渉も入れて俺が混ぜてからそれに栄螺をつけて食べて……
「大人の味すぎて俺には判らん」
「まあ、栄螺初心者の俺達だからな。難易度上げる前に普通に食べるか」
「お酒を少し入れれば生臭さとか消えそうだけど……」
お料理のできる渉の言葉にお酒を冷で一つ頼んで少しだけ垂らして再度食べれば苦みより生臭さが抑えられたけど……
「通な食べ方、初心者に難しいです」
肝醤油を箸先につけて舐める渉の言葉に俺達は盛大に頷くしかなかった。
そんな事をしているうちに牡蛎も焼けてレモンをきゅっと絞っていただく。
「すごい贅沢!」
箸で持ち上げてフーフーしながら食べるそんな贅沢。
だけどそれ以上の贅沢が帰れば待っている事を知っているから簡単に済ませて店を後にした。
「あー、なんかすごく旅行を満喫してる!」
「夏休みって感じだな!」
残った缶ビールやペットボトルのジュースを片手に俺達は小さな町を探索しながら夜のデザートにコンビニプリンではない地元のお店のプリンを購入して修司さんのお土産にすることにした。
「お帰りー。丁度いいタイミング。連絡もらった時間から逆算しただけあったな」
栄螺のつぼ焼きを満喫した俺達は行とは違い帰り道全部上り坂と言うハードモードな道程をこなして別荘へと戻ればすでに一眠りして元気になった修司さんはウキウキ顔でバーベキューの準備をしながらビールを飲んでいた。
そうでした。
地獄の坂道を上った先で天国が待っていたなんて…… の前に。
「一人でこんなに準備してたなんて!」
「手伝います!」
「じゃあ牡蛎ご飯炊いたからまぜておにぎりにしてくれ。あとでここで焼きおにぎりにするからまかせた」
「他に何か持ってきますか?!」
「それよりその食材どうやって調理するつもりですか?!」
暢気に遊んでいた俺達は軽くパニックになって一気に走り回った。
散々食べて来たのにまだ食べるのかなんて言うなかれ。
そんなものとっくに坂道で消費してきた。
街中の坂道と違って山の坂道はほんとつらかった。
角度がバグってる。
だけど漂ってきた香ばしい匂いに別腹が発生。
とりあえずマイトングと渡されて
「バーベキューは丸焼きが基本だろ?気を遣わなくていいぞー」
俺達の姿を見てから伊勢海老をどんどんと並べる勇者だった。
「各自自己責任で火加減に注意しながら食べろよ」
天の声は正義の言葉。
バーベキューの火加減の見分方は主にしのさんに学んだけど……
そこは学びの師を同じとする徒弟。
いろんなことを準備しているうちに焼き上がった伊勢海老は修司さんの手によって頭と胴体を持ってへし折り、腹側の殻にハサミを入れれば綺麗に身が取れそのままぶつ切りにする。頭の方は味噌がたっぷり詰まっていて、頭の部分をバーベキューコンロの縁に置いて少しのお酒を加えて味噌をよく混ぜて
「味噌付けて食べるとうまいぞ」
そんな魅惑的な呪文にとびかからないわけがない。
「竜也もしっかり食べろよ」
なんて良い所をたべさせてくれた。颯也もしっかり食べろよと竜也にあれこれお世話する様子が微笑ましい。
その間にもさっき食べた牡蛎を修司さんは並べてくれた。
さっきのよりも大きな岩牡蠣にびっくりしつつも
「さて、岩牡蠣に何をかける?
ポン酢、レモン、タバスコ、サルサソース、ガーリックバター、チーズもあるぞ」
「揃いすぎでしょ」
修二さんの気合に渉は顔を引きつらせているけど
「それだけあるってことは全部楽しまないとな!」
そう言って楽しみだす俺は猛者だった。
というか全部が美味しそうで
「陽人、お前もちゃんと楽しめよ」
「しっかり楽しんでます!」
軍手片手にポン酢をかけた牡蛎をハフハフしながら真剣に食べる俺達に修司さんは目を細めて満足そうに笑う顔を俺達はこの日を絶対忘れない思い出にすることに決めた。
絶対忘れるなんてできないそんな俺達の夏休みだ。
「自宅でバイト先メニューを再現するあたり一般的とは違うとおもいまーす」
ビールやジュース片手に栄螺や牡蛎を網の上に置いてふつふつと温まっていく様子を眺めながら陽人は唸る。
「そもそもバイトしていただけで店のメニューが作れるとかありえんだろ」
「頭付きのエビチリないですよねー、ヤバウマー」
「アジフライも揚げるだけの状態の奴じゃなくて内臓付きのアジからだったし」
「そういや前にスルメイカを山ほど買ってきてイカフライ作ってくれたけどその裏で自分の肴ように塩辛作ってたし」
「むしろそれが目当てのようにも見えたな」
俺の言葉に颯也も唸る。
因みに後で知った事だが塩辛の作り方を伝授していたのはしのさんだったらしい。
何やらお世話になってる人から教えてもらったとか……
おこぼれをもらったけど臭みもなく旨味がギュッと詰まった塩辛に歓喜したのは当時○○歳。
あの時いた先輩も巻き込んでこっそりお酒をもらったのは修司さんの知らない内緒の話。
いい思い出だ。
思い出に浸る合間にも牡蛎の殻がパカッと開く。
栄螺もくつくつと煮だってお酒と醤油をたらりと垂らす。
トングでとりわけながら軍手をした手で栄螺を持ち蓋を外してつま楊枝を身にさしてぐるりと回すように殻から身を外す。
「よっしゃ!内臓ごと綺麗に取れた!」
謎の達成感。とはいえ
「これ、どこまで食べれるんだろ」
渉が全部食べていいものかと聞いてきたけどお店のおばちゃんがちょうど通りかかって俺達の盛り上がりを耳にしたようで
「基本全部食べれますよ。だけど苦いのが苦手でしたら身の部分にしたほうがいいよ。
通な人だととぐろ部分を醤油と混ぜて肝醤油にしてからめて食べるけど…… お勧めよ」
なるほどとまずは全部食べてみる事にして……
「うーん、砂?じゃりじゃりいう?」
「苦い……」
颯也と竜也の兄弟が真っ先に試したのを聞いて俺は試す前に割りばしを駆使しておばちゃんの言う所を口にする。
「ぐるぐるの所はほろ苦いと言うか、魚の内臓を食べるよりはましか?」
「試しに肝醤油…… 醤油多すぎた。醤油の味しかしない」
俺も試してしょっぱいと言えば陽人が自分の分の肝を俺の皿に入れれば渉も入れて俺が混ぜてからそれに栄螺をつけて食べて……
「大人の味すぎて俺には判らん」
「まあ、栄螺初心者の俺達だからな。難易度上げる前に普通に食べるか」
「お酒を少し入れれば生臭さとか消えそうだけど……」
お料理のできる渉の言葉にお酒を冷で一つ頼んで少しだけ垂らして再度食べれば苦みより生臭さが抑えられたけど……
「通な食べ方、初心者に難しいです」
肝醤油を箸先につけて舐める渉の言葉に俺達は盛大に頷くしかなかった。
そんな事をしているうちに牡蛎も焼けてレモンをきゅっと絞っていただく。
「すごい贅沢!」
箸で持ち上げてフーフーしながら食べるそんな贅沢。
だけどそれ以上の贅沢が帰れば待っている事を知っているから簡単に済ませて店を後にした。
「あー、なんかすごく旅行を満喫してる!」
「夏休みって感じだな!」
残った缶ビールやペットボトルのジュースを片手に俺達は小さな町を探索しながら夜のデザートにコンビニプリンではない地元のお店のプリンを購入して修司さんのお土産にすることにした。
「お帰りー。丁度いいタイミング。連絡もらった時間から逆算しただけあったな」
栄螺のつぼ焼きを満喫した俺達は行とは違い帰り道全部上り坂と言うハードモードな道程をこなして別荘へと戻ればすでに一眠りして元気になった修司さんはウキウキ顔でバーベキューの準備をしながらビールを飲んでいた。
そうでした。
地獄の坂道を上った先で天国が待っていたなんて…… の前に。
「一人でこんなに準備してたなんて!」
「手伝います!」
「じゃあ牡蛎ご飯炊いたからまぜておにぎりにしてくれ。あとでここで焼きおにぎりにするからまかせた」
「他に何か持ってきますか?!」
「それよりその食材どうやって調理するつもりですか?!」
暢気に遊んでいた俺達は軽くパニックになって一気に走り回った。
散々食べて来たのにまだ食べるのかなんて言うなかれ。
そんなものとっくに坂道で消費してきた。
街中の坂道と違って山の坂道はほんとつらかった。
角度がバグってる。
だけど漂ってきた香ばしい匂いに別腹が発生。
とりあえずマイトングと渡されて
「バーベキューは丸焼きが基本だろ?気を遣わなくていいぞー」
俺達の姿を見てから伊勢海老をどんどんと並べる勇者だった。
「各自自己責任で火加減に注意しながら食べろよ」
天の声は正義の言葉。
バーベキューの火加減の見分方は主にしのさんに学んだけど……
そこは学びの師を同じとする徒弟。
いろんなことを準備しているうちに焼き上がった伊勢海老は修司さんの手によって頭と胴体を持ってへし折り、腹側の殻にハサミを入れれば綺麗に身が取れそのままぶつ切りにする。頭の方は味噌がたっぷり詰まっていて、頭の部分をバーベキューコンロの縁に置いて少しのお酒を加えて味噌をよく混ぜて
「味噌付けて食べるとうまいぞ」
そんな魅惑的な呪文にとびかからないわけがない。
「竜也もしっかり食べろよ」
なんて良い所をたべさせてくれた。颯也もしっかり食べろよと竜也にあれこれお世話する様子が微笑ましい。
その間にもさっき食べた牡蛎を修司さんは並べてくれた。
さっきのよりも大きな岩牡蠣にびっくりしつつも
「さて、岩牡蠣に何をかける?
ポン酢、レモン、タバスコ、サルサソース、ガーリックバター、チーズもあるぞ」
「揃いすぎでしょ」
修二さんの気合に渉は顔を引きつらせているけど
「それだけあるってことは全部楽しまないとな!」
そう言って楽しみだす俺は猛者だった。
というか全部が美味しそうで
「陽人、お前もちゃんと楽しめよ」
「しっかり楽しんでます!」
軍手片手にポン酢をかけた牡蛎をハフハフしながら真剣に食べる俺達に修司さんは目を細めて満足そうに笑う顔を俺達はこの日を絶対忘れない思い出にすることに決めた。
絶対忘れるなんてできないそんな俺達の夏休みだ。
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