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雪那 由多

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集まれ緑風荘 6

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 容赦なくしのさんのおねだりにいろいろなものを買わされました。
 まあ、お婆ちゃんが存命の間は草刈り鎌やのこぎりでこの庭の整理をさせられたのだからお婆ちゃん亡き後は俺と言う遠慮のいらないスポンサーがいるため今まで腰を痛めながら刈っていた草を効率よく刈るために投資をすることになりました。
 一応使い方を教えてもらいながらやり方を見せてもらったり勉強させてもらったりしている。
 そして電気のこぎり、略して電のこ。
 これってすごく便利だね。
 木の枝を切るための小さな電のこなんだけど今までの苦労は何だったんだというくらい楽に枝を切ることが出来てかなり感動だった。
「うわ、これもっと早くから知りたかった」
「筋肉痛は軽減されるからね」
「それ! もう、一週間ぐらい体がバッキバキでほんとしんどかったのに忘れたころ定期的に草刈させられて……」
 涙ぐみながら電源を入れては切ったりとまだ小さな枝だけ切らせてもらっただけだけどそのくらいの感動だった。
「とりあえず電動ばさみも使い方覚えたと思うから怪我には気を付けてね」
「ここから先は俺の責任になりますので」
 こんな危険物の取扱怖いなと少し怯えながらも次は家の中へと入っていく。
 そして今度は電動工具を手にしてからの

「じゃあ、扉支えていてね!」

 そう言って蝶番を一つ一つ取り除いて新しい物へと変えていく。
 そしてドアノブも回転式からハンドレバー式へと変えていく。
 さらに、部屋の電気のスイッチも変えてくれた挙句に建付けの悪い木製の窓も鉋で削ってくれた。
 ガタガタといびつな音も立てずにからりと開く窓。もちろんせっかくだからと滑車も変更してくれた。
あまりにも手慣れた流れるような作業に
「すげー。本職かっけー」
「誉めてる暇があるならお掃除お願いね」
 誉めたのに半眼で睨まれて掃除機を手にしながら
「しのさん結構人使い荒いんだから」
 なんてぼやいてしまうも
「これでも出張費込で一万円くらいの仕事してるんだけど?」
 しかも格安価格でと笑うしのさん。
「後ほどお茶とお菓子を持ってきます」
 これ以上怒らせてはいけないとちゃちゃっと掃除機をかけていれば
「買ってきたペットボトルのお茶を冷たくしてもらえれば十分だよ」
 のほほんとした笑みを浮かべているけど買って来たばかりのお茶はまだぬるく、だけど冷蔵庫にしっかりと冷えた麦茶がある事は知っているようでそっちをよこせと容赦なく言う。
 いや、それぐらい別にいいんだけどね。
 そのくらいのサービスはいくらでもやりますよという様にきっともう喉が渇いているのだろうと踏んですぐさま隣の離れへ取りに行って差し出せばすぐに口に付けてはーっ、とまるで仕事の後のビールを飲むように一気に飲む様子に俺もペットボトルのお茶に口をつける。
「あー、うまっ……」
 ペットボトルのお茶なんてめったに口にしないけど、庭掃除のレクチャーを受けてドアの修繕や窓の修繕をしている間に喉が渇いていたと見えて半分ほど一気に飲んでしまった。
「脱水症状には気を付けてよ」
「ああ、うん。ありがとう」
 言った所で買い物袋の中にあった塩分タブレットを取り出して俺へと投げるようにして渡してくれた。
「水分をとったら塩分もね?」
「ですねー」
 そう言いながらぼりぼりとかみ砕いてまたお茶を飲み
「じゃあ、次行こうか」
 休憩タイムはもう終わりのようだ。
 ひょろりと伸びた身長に薄く筋肉が付いたという体つきなのに何処にそんなにも体力があるのかぜひ聞きたい。
 次行くよーなんて言いながら空き部屋をどんどん修繕をしていき……

「悪い、簡単なものだけど食べて行ってくれ」
「ちょっと楽しみにしてたんだ」

 そう言って俺は炒飯と中華コーンスープ、黒酢ソースかけの鶏の唐揚げ、牛肉とピーマンの細切り炒めを机の上に並べていく。
 途端にしのさんは目をキラキラとさせて
「いい匂い!
 中華って同じように作ったつもりでも味付けで全然変わるから。
 修司の中華ってほんと美味しいから楽しみだったんだ」
 なんて喜んでくれる様子を見れば幾らでも作りますよと取り皿に取り分けて
「こんなのでよかったらたくさん食べて行けよ」
「そこに家の手入れを手伝ってくれたらって言葉が付くのが怖いんだけどね」
 言いながらも
「これだけの腕があるのに料理人の道には進まないなんてもったいないのに」
「見よう見まねで作れるようになっただけだから。あと賄いの当番の時に料理長が色々教えてくれたのもあるし……
 やっぱりお婆ちゃんが料理作るの好きでいつも隣で見ていたのもあるのかな?」
 なんて笑いながら思い出すのは一緒にジャガイモとニンジンの皮をむいて作ったカレーライス。お袋は普通に料理を作ってくれるけど教えてくれたりと言うのはなかったからこういったお婆ちゃんの教えがただ嬉しかった。
 そんな思い出……

「修司?」

 呼ばれて顔を上げれば
「あ」
 目元に熱い物が流れて行った。
「ティッシュ、使う?」
 少し困惑気に、だけど分かってるからと言う優しい視線のしのさんからティッシュを受け取り
「ごめん。
 ちょっと昔を思い出してただけで」
 言えばしのさんはスプーンでそっと炒飯をすくいあげ
「お婆さんに教えてもらったんだね。
 そう言えば修司の炒飯、お婆さん好きだったね」
 まだ温かな、ついこの間のような思い出をしのさんは俺から引きずり出した。
 ティッシュで目元を押さえていたのにもう一枚追加する事となり
「まだまだいっぱい思い出せるときにたくさん思い出そう?
 修司の中のお婆さんが元気な姿、たくさん思い出してさ。
 たぶんそれも一つの弔いの仕方だと思うんだ」
 簡単に忘れる事の出来る相手じゃないだろう? ならしっかり覚えておこうよと厳しい事を言うしのさん。
 ちらりとしのさんを見れば目を真っ赤にして炒飯を、どこか歪むような口元で食べる様子にしのさんも今テーブルに居ないお婆ちゃんの事を思い出しているのかと気が付いた。

 確かに簡単に忘れたくない思い出だと俺は一つだけ頷けば、葬儀の時でも泣けなかった俺がやっと今泣いている事に気付くのだった。



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