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雪那 由多

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集まれ緑風荘 7

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 しのさんが植木の整え方を教えてくれたのでそれを思い出しながら、そして時々勧められた動画を見ながら植木を整えてみた。
「初心者にしてはなかなか」
 そんな自画自賛。

「とりあえず背の高い木とかはまた別の日に俺が切るから安全な所で練習しててね」

 なんて言うしのさんの優しさ。
 命大事にだからねと無茶な事をするなと最寄り駅まで送っていく間に何度も念を押されてしまった。
 そんなに信頼がないのだろうか……
 まあ、俺が知る限りずっと巨木で古木な庭の木々。中々の風格に流石に手入れの自信はないけど、ご近所さんの家にも迷惑をかけているようなので何とかしたいと思っている。だからこそ手を出すなと言われたんだけどね。
「下手に切ると枝が隣の家に落ちて窓を割ったり屋根を壊したり、塀も壊しちゃうから手を出さないようにね」
 なんて結構真剣な顔で話しをしてくれて内容も理解しているんだけど、その顔がかわいくってついニヤニヤしてしまうそんな俺の癒し。
 男に癒しを求めてどうすると言われるけど、癒されるものは仕方がないと開き直っておく。
 その結果次回植木の手入れに来た時はエビチリを作る約束をさせられたけどそれで許されるのならお安いものだ。
 そんなふうにお婆ちゃんの部屋を片付けたり庭の草を抜いたりとまだ寒い季節なので虫がいないうちにと頑張っていれば

「大家さんいますかー?」

 離れの方から聞こえた声に

「今行きまーす」

 とにかく広い敷地、大きな声での呼びかけは必須なので頑張って声を張り上げて草刈り鎌を持って急いで向かえば

「う、うわーっ、ちょ、修司さんそれマズイって!!!」
「あ……」

 頭からタオルをかぶり、しっかりマスクも装備して草の汁を付けた草刈り鎌を握りしめて全力で走ってくる俺、どれだけヤバいんだよとタオルとマスクを外すくらいには冷静になれた所で大きなカバンを持ってやってきた学生さんの姿に

「ああ、瑞己か。お帰り。
 って、今日帰ってくる日だっけ?」
「お婆ちゃんが亡くなったって連絡来て慌ててきたんだよ。
 まあ、葬式とかは間に合わないけど親父たちがね」
 そっとお香典を俺に差し出してくれた。
「大学入ってすごくお世話になった人なんだから挨拶は早いうちに行けって」
 俺は草刈り鎌を置き、軍手を外して
「そうか。悪いな、忙しい時に」
 ありがたく受け取る。
 あとお土産も。
 お香典は親父たちに連絡だ。
「気にしないでください。家の手伝いよりこっちでバイトの方が小遣い溜まるんで」
「だけどいいのか?」
「親が行けって言ったんだから良いに決まってるじゃないですか。
 それに社会人になってここを出た後の為の資金も貯めないといけないし、就職活動もしないといけないからね」
 なんてまだとれてない単位もある瑞己だけど前期中に単位は取れる見込みはついているので問題は無いと言う。
「バイトもいいけどちゃんと卒業して就職しろよ」
「そこは大丈夫。今まで苦しんでる先輩たちを見てきたから対策はしてきました。
あとここに来るまでに野田さんの所にも顔を出して今日からバイトの再開をお願いしてきました」
 ニカリと笑う瑞己だけど、ちゃんとしてる奴なら3年で単位は全部取ってるだろうと突っ込みたかったけどそこは瑞己の問題だからあえて口にはしない。
「そういや訃報のはがきをもらった後封筒も届いたけど修司さんここの大家さんやるんだって?」
「まあ、お婆ちゃんの遺言でお前たちをちゃんと送り出せって話だし、それにそれなりの資金ももらったからなあ……
 飯ぐらいついでにいくらでも作ってやるぞ」
「あざーっす! 修司さんのご飯大好きだから楽しみにしてます!」
 なんてにこやかな顔。
「そうだった。あと二人も今日中にはつくはずだから」
「あー、飯が足らんな。って言うか帰ってくるなら連絡をよこせよ」
「すんません。俺達修司さんの連絡先知らないので」
 そうだったと自分のうっかりに情けないと思いながらも
「悪いけどLIMEの登録頼むわ」
「お願いします。あとルーム作るんで全体連絡はそっちでよろしく」
 言いながらさくさく連絡先の登録完了。
「じゃあ、あとの二人には俺の方から連絡を入れておきます」
「悪いな。ついでに到着時間聞いといてくれ」
 なんて香典と一緒もらったお土産を掲げ
「その前にお茶でも飲もうか」
「でしたら一度荷物置いてくるので鍵開けてください」
「でした」
 一度家の中に上がってから鍵付きのキーボックスの中から鍵を取り出して

「改めて、緑風荘にお帰りなさい」
「はいただ今帰りました新大家さん」

 そんな挨拶にそうか、俺大家さんって呼ばれるんだと分かっていたけどなんか新鮮な呼ばれ方に頑張ろうと瑞己の見えてない場所で気合を入れるのだった。


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