15 / 32
第十五話(マルサス視点)
しおりを挟む
「くぅおのぅッッ!! 大バカ者がァァァァァァァ!!」
「ぎゃピッッッッッ――!」
父上は鬼になった。
顔は熟れたトマトよりも赤く、目は血走っており、年甲斐もなく上げた声は部屋中が揺れるくらい大きかった。
顔面に鼻がヘコむくらいのグーパンチを父上からお見舞いされる。
父上は幼少の頃から世界中のあらゆる武術を習っており、今でも筋骨隆々だ。
武術を習っていたのは、パントマイムの名人だった祖父の影響だったらしい。
とにかく、そんな父上に殺気を込められた拳でガンガンやられると痛い……!
僕も普段から鍛えているけど、確実に人体の急所を狙って殴りかかる父上には戦慄した。
「ぼ、僕を、こ、殺す気ですか!? 父上!?」
「……当たり前だ。テスラー家の恥晒しめ! ワシのこの拳で成敗してくれる!」
「げふぅぅぅぅぅッッ!」
痛い……!
何回、父上の拳を体に受けたか分からないけど、今日の拳はいつもよりも痛かった。
ルティア、これが試練なんだね。僕は君のために痛い思いをするよ。
そう、愛とは痛みを伴うものだから……!
僕は受け入れる。すべての痛みを愛のために――!
「ふふ、愛のために……」
「な、殴られながら笑っとるだと……!? ちと、頭を殴りすぎたか」
「旦那様、若様は割といつもこんな感じですよ」
父上からの拳の弾幕も僕は試練として乗り越えた。
口の中が血の味しかしないが、愛のためだと思えばこれくらい美味しく飲み込むさ。
身体中の傷もすべて男の勲章ってやつなのだ……。
「5050万エルド使ったそうだな」
「はい! ルティアのことを愛していますから! 完璧なプロポーズの為にはこれくらいしないと!」
演出家も一流の舞台をいくつも手掛けている、あの世界のアルバート・ブラックマン氏にお願いしたし。
演者も世界で活躍するの人材を寄りすぐった。オーディションも開いたしね。
で、僕の振り付けを担当したのは、あのピーター・マグナス先生。かつて一世風靡した“ゲリラーダンス”、それを創ったのが彼である。
さらにサプライズパーティーには一流のシェフたちを用意した。
若くしてミッシェランで三ツ星を貰った鬼才フランソワ・パールズに監修をお願いして、最高の料理をケータリングで振る舞うことを可能にしたのである……!
「ワシは侯爵家に5200万エルドの慰謝料を支払った」
「ありがとうございます! 父上には感謝しかありません!」
それと同等の金額を慰謝料として払ったのは知っている。
プロポーズの為の費用は返してもらった慰謝料から充当しようと思ったのだが、これは計算違いだ……!
父上、何とか頑張ってくれ。請求はそろそろ来るはずだから。
「5050万エルド、お前が払え……!」
「ぽえっ!?」
「ぽえっ!?ではないッッッッッ! お前が払えと言っておる!! それが出来ぬのなら、お前は勘当だ!!」
えーーーーーっ!?
わ、笑えない冗談は止めてくださいよ、父上。
ぼ、僕にそんな大金払えるはずがないじゃありませんか……!
しかし、逆を返せば5050万払いきったら勘当を免れることが出来る!?
愛というのは乗り越える試練が大きければ、大きいほど、実ったときの幸福感は増幅されるみたいだし……。
「よし、やるか……!」
「やるか、じゃありませんよ。バカ……、じゃなかった。若様の得意の土下座を今しないでどうするんですか?」
「ぎゃピッッッッッ――!」
父上は鬼になった。
顔は熟れたトマトよりも赤く、目は血走っており、年甲斐もなく上げた声は部屋中が揺れるくらい大きかった。
顔面に鼻がヘコむくらいのグーパンチを父上からお見舞いされる。
父上は幼少の頃から世界中のあらゆる武術を習っており、今でも筋骨隆々だ。
武術を習っていたのは、パントマイムの名人だった祖父の影響だったらしい。
とにかく、そんな父上に殺気を込められた拳でガンガンやられると痛い……!
僕も普段から鍛えているけど、確実に人体の急所を狙って殴りかかる父上には戦慄した。
「ぼ、僕を、こ、殺す気ですか!? 父上!?」
「……当たり前だ。テスラー家の恥晒しめ! ワシのこの拳で成敗してくれる!」
「げふぅぅぅぅぅッッ!」
痛い……!
何回、父上の拳を体に受けたか分からないけど、今日の拳はいつもよりも痛かった。
ルティア、これが試練なんだね。僕は君のために痛い思いをするよ。
そう、愛とは痛みを伴うものだから……!
僕は受け入れる。すべての痛みを愛のために――!
「ふふ、愛のために……」
「な、殴られながら笑っとるだと……!? ちと、頭を殴りすぎたか」
「旦那様、若様は割といつもこんな感じですよ」
父上からの拳の弾幕も僕は試練として乗り越えた。
口の中が血の味しかしないが、愛のためだと思えばこれくらい美味しく飲み込むさ。
身体中の傷もすべて男の勲章ってやつなのだ……。
「5050万エルド使ったそうだな」
「はい! ルティアのことを愛していますから! 完璧なプロポーズの為にはこれくらいしないと!」
演出家も一流の舞台をいくつも手掛けている、あの世界のアルバート・ブラックマン氏にお願いしたし。
演者も世界で活躍するの人材を寄りすぐった。オーディションも開いたしね。
で、僕の振り付けを担当したのは、あのピーター・マグナス先生。かつて一世風靡した“ゲリラーダンス”、それを創ったのが彼である。
さらにサプライズパーティーには一流のシェフたちを用意した。
若くしてミッシェランで三ツ星を貰った鬼才フランソワ・パールズに監修をお願いして、最高の料理をケータリングで振る舞うことを可能にしたのである……!
「ワシは侯爵家に5200万エルドの慰謝料を支払った」
「ありがとうございます! 父上には感謝しかありません!」
それと同等の金額を慰謝料として払ったのは知っている。
プロポーズの為の費用は返してもらった慰謝料から充当しようと思ったのだが、これは計算違いだ……!
父上、何とか頑張ってくれ。請求はそろそろ来るはずだから。
「5050万エルド、お前が払え……!」
「ぽえっ!?」
「ぽえっ!?ではないッッッッッ! お前が払えと言っておる!! それが出来ぬのなら、お前は勘当だ!!」
えーーーーーっ!?
わ、笑えない冗談は止めてくださいよ、父上。
ぼ、僕にそんな大金払えるはずがないじゃありませんか……!
しかし、逆を返せば5050万払いきったら勘当を免れることが出来る!?
愛というのは乗り越える試練が大きければ、大きいほど、実ったときの幸福感は増幅されるみたいだし……。
「よし、やるか……!」
「やるか、じゃありませんよ。バカ……、じゃなかった。若様の得意の土下座を今しないでどうするんですか?」
56
あなたにおすすめの小説
絶縁状をお受け取りくださいませ旦那様。~離縁の果てに私を待っていたのは初恋の人に溺愛される幸せな異国ライフでした
松ノ木るな
恋愛
アリンガム侯爵家夫人ルシールは離婚手続きが進むさなかの夜、これから世話になる留学先の知人に手紙をしたためていた。
もう書き終えるかという頃、扉をノックする音が聞こえる。その訪ね人は、薄暗い取引で長年侯爵家に出入りしていた、美しい男性であった。
地味だからいらないと婚約者を捨てた友人。だけど私と付き合いだしてから素敵な男性になると今更返せと言ってきました。ええ、返すつもりはありません
亜綺羅もも
恋愛
エリーゼ・ルンフォルムにはカリーナ・エドレインという友人がいた。
そしてカリーナには、エリック・カーマインという婚約者がいた。
カリーナはエリックが地味で根暗なのが気に入らないらしく、愚痴をこぼす毎日。
そんなある日のこと、カリーナはセシル・ボルボックスという男性を連れて来て、エリックとの婚約を解消してしまう。
落ち込むエリックであったが、エリーゼの優しさに包まれ、そして彼女に好意を抱き素敵な男性に変身していく。
カリーナは変わったエリックを見て、よりを戻してあげるなどと言い出したのだが、エリックの答えはノーだった。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
婚約者を奪っていった彼女は私が羨ましいそうです。こちらはあなたのことなど記憶の片隅にもございませんが。
松ノ木るな
恋愛
ハルネス侯爵家令嬢シルヴィアは、将来を嘱望された魔道の研究員。
不運なことに、親に決められた婚約者は無類の女好きであった。
研究で忙しい彼女は、女遊びもほどほどであれば目をつむるつもりであったが……
挙式一月前というのに、婚約者が口の軽い彼女を作ってしまった。
「これは三人で、あくまで平和的に、話し合いですね。修羅場は私が制してみせます」
※7千字の短いお話です。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます
天宮有
恋愛
水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。
それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。
私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。
それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。
家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。
お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。
私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。
【完結】どうぞお気遣いなく。婚約破棄はこちらから致しますので。婚約者の従姉妹がポンコツすぎて泣けてきます
との
恋愛
「一体何があったのかしら」
あったかって? ええ、ありましたとも。
婚約者のギルバートは従姉妹のサンドラと大の仲良し。
サンドラは乙女ゲームのヒロインとして、悪役令嬢の私にせっせと罪を着せようと日夜努力を重ねてる。
(えーっ、あれが噂の階段落ち?)
(マジか・・超期待してたのに)
想像以上のポンコツぶりに、なんだか気分が盛り下がってきそうですわ。
最後のお楽しみは、卒業パーティーの断罪&婚約破棄。
思いっきりやらせて頂きます。
ーーーーーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる