9 / 30
第三章
第三話
しおりを挟む
調理器具が揃っているかと周囲を確認して、包丁やまな板、ボウルを見つけると俺は、もう一度手を洗って、包丁を握った。
二口コンロがあって良かったなと思う、俺はほうれん草をゆがいて、その間に大根をイチョウ切りにする。
「慣れてるね」
「うおっ」
集中していたら、いつの間にか隣に紫ノくんが立っていた。少し布のよれた麻のシャツを着た紫ノくんは、何を着ていてもかっこいい。
「……メガネ」
「うん。コンタクト外してきた。嫌いだから」
「いつから目、悪くなったの」
「中学生の成長期の頃から」
「あー、目、悪くなるらしいね。急激に伸びると」
それにしても。
メガネもよく似合ってるなあ。
「似合ってるね、メガネ」
素直に口にすれば、紫ノくんは目を瞬かせた。
「ずっとこれが良い?」
「ええ? 好きにしてくれたらいいよ。つけてもつけてなくてもかっこいいと思うよ」
俺がそう付け足せば、紫ノくんは満更でもない顔をする。俺は小さく笑った。紫ノくんは、結構わかりやすい。そんなこと言うの、俺だけらしいけど、ちゃんと見てたらわかる。
キッチンの左側には冷蔵庫があって、その上にレンジが置かれている。
紫ノくんはそこらへんに立って、俺の邪魔にならないように、でも俺の料理姿は見たいらしい。じっとしていた。
俺は湯がいていたほうれん草を冷水で冷やして、フライパンで大根を炒める。
「水、捨てといてもいい?」
「あ、ありがと。やけど気をつけて」
そして紫ノくんはさっさと鍋に取っ手をつけて、お湯を流してくれた。俺は豚バラ大根の素を入れて、肉を切ってその中に入れる。そして肉に火が通って、大根に刺し箸をした。大丈夫。
俺は豚バラ大根を皿に乗せると、フライパンをすぐ洗って、水を切る。
「紫ノくん」
「うん?」
「卵焼き、丸くてもいい? だし巻きなんだけど」
「気にしない」
「オッケー」
卵を溶いて、白だしを入れて、味を整えると俺は卵液をフライパンに流した。
その間に手早くほうれん草を切って、皿に持って醤油をかける。そしてカツオ節を散らして、完成。
「紫ノくん、ほうれん草と豚バラ完成したから、味見しておいて。多分大丈夫だと思うんだけど」
「わかった」
紫ノくんは俺の言った通りに座卓に料理を運んでくれる。
俺はなんとか卵焼きをフライ返しすると、無事にでき上がったそれを皿に乗せた。
同時に、炊飯器が音を鳴らす。どうやら白米が炊き上がったらしい。
「紫ノくん、大盛りでいいよね?」
「うん」
「はーい」
俺は食器棚から茶碗を探した。一つしかない。
どうしようかと迷っていると、隣に紫ノくんが立つ。
「俺のご飯、その青いどんぶりに入れて」
「え?」
「いつもそれで食べてる。普通の茶碗じゃ間に合わない」
「そっか。わかった」
本当に大食漢だ。俺は言われた通りどんぶりに米を盛って、自分の分はその茶碗に入れた。
おかず、足りるだろうか。もっと大量に作ったほうがいいんじゃなかっただろうか。俺はドキドキした。
そして二人して正座をして、手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
俺が先に言って、紫ノくんが続くように言った。
紫ノくんは箸を手に取ると、一番に豚バラ大根に手を伸ばす。
俺はなんと言われるかわからなくて、じっと感想を待った。
紫ノくんの口に、俺の作った料理が入る。
紫ノくんは無言でご飯をかき込んだ。俺にとっては手に汗握る光景だった。どうだ、どうなんだ。
「……美味しい」
「ほんと!?」
俺は前のめりに聞く。紫ノくんはまた豚バラ大根を箸でつついて、頷いた。
「美味しいよ。自分で作ったのより美味しい」
「いや、それは褒めすぎだよ」
「褒めすぎてないよ」
そうはっきり言ってくれるから。俺ははにかんだ。
「それは良かった」
俺は自分の作った料理に手を伸ばして、確かに、味は大丈夫だなと確認する。調理中もするけど、やっぱり目の前に初めて自分の料理を食べてくれる人がいると、緊張するものだ。
「紫ノくん、中学生の頃、図書委員だったんだよね」
「うん」
「なんの仕事してたの?」
緊張を誤魔化すため、話題を出したら、紫ノくんは必ず口の物を全部飲み込んでから話をする。上品だなと思った。俺、誰かとご飯食べてる時、ちゃんと口の中空にしてるかな。
「教室の図書の管理と図書室の本の貸し、返却受付とか、新刊何を入れるか司書の先生と相談したりしてた」
「え、すご、新刊にも口出せるの?」
「俺は司書の先生と仲良かったから、いつの間にか、口出してた」
「へえ……」
俺はうんうん頷きながらご飯を食べる。本を読む中学生の紫ノくんか。見て見たかったなと思った。
「中学生の時、トランペット吹いてたんでしょ? 高校は?」
「ああ、俺、高校の時生徒会入ってたんだ。だから、部活はしてない」
「そう。生徒会で何してたの?」
「うーん、行事の中心には結構立たされてたかな。体育祭、文化祭、他にも色々してたけど、校則の見直し、とか」
二口コンロがあって良かったなと思う、俺はほうれん草をゆがいて、その間に大根をイチョウ切りにする。
「慣れてるね」
「うおっ」
集中していたら、いつの間にか隣に紫ノくんが立っていた。少し布のよれた麻のシャツを着た紫ノくんは、何を着ていてもかっこいい。
「……メガネ」
「うん。コンタクト外してきた。嫌いだから」
「いつから目、悪くなったの」
「中学生の成長期の頃から」
「あー、目、悪くなるらしいね。急激に伸びると」
それにしても。
メガネもよく似合ってるなあ。
「似合ってるね、メガネ」
素直に口にすれば、紫ノくんは目を瞬かせた。
「ずっとこれが良い?」
「ええ? 好きにしてくれたらいいよ。つけてもつけてなくてもかっこいいと思うよ」
俺がそう付け足せば、紫ノくんは満更でもない顔をする。俺は小さく笑った。紫ノくんは、結構わかりやすい。そんなこと言うの、俺だけらしいけど、ちゃんと見てたらわかる。
キッチンの左側には冷蔵庫があって、その上にレンジが置かれている。
紫ノくんはそこらへんに立って、俺の邪魔にならないように、でも俺の料理姿は見たいらしい。じっとしていた。
俺は湯がいていたほうれん草を冷水で冷やして、フライパンで大根を炒める。
「水、捨てといてもいい?」
「あ、ありがと。やけど気をつけて」
そして紫ノくんはさっさと鍋に取っ手をつけて、お湯を流してくれた。俺は豚バラ大根の素を入れて、肉を切ってその中に入れる。そして肉に火が通って、大根に刺し箸をした。大丈夫。
俺は豚バラ大根を皿に乗せると、フライパンをすぐ洗って、水を切る。
「紫ノくん」
「うん?」
「卵焼き、丸くてもいい? だし巻きなんだけど」
「気にしない」
「オッケー」
卵を溶いて、白だしを入れて、味を整えると俺は卵液をフライパンに流した。
その間に手早くほうれん草を切って、皿に持って醤油をかける。そしてカツオ節を散らして、完成。
「紫ノくん、ほうれん草と豚バラ完成したから、味見しておいて。多分大丈夫だと思うんだけど」
「わかった」
紫ノくんは俺の言った通りに座卓に料理を運んでくれる。
俺はなんとか卵焼きをフライ返しすると、無事にでき上がったそれを皿に乗せた。
同時に、炊飯器が音を鳴らす。どうやら白米が炊き上がったらしい。
「紫ノくん、大盛りでいいよね?」
「うん」
「はーい」
俺は食器棚から茶碗を探した。一つしかない。
どうしようかと迷っていると、隣に紫ノくんが立つ。
「俺のご飯、その青いどんぶりに入れて」
「え?」
「いつもそれで食べてる。普通の茶碗じゃ間に合わない」
「そっか。わかった」
本当に大食漢だ。俺は言われた通りどんぶりに米を盛って、自分の分はその茶碗に入れた。
おかず、足りるだろうか。もっと大量に作ったほうがいいんじゃなかっただろうか。俺はドキドキした。
そして二人して正座をして、手を合わせる。
「いただきます」
「いただきます」
俺が先に言って、紫ノくんが続くように言った。
紫ノくんは箸を手に取ると、一番に豚バラ大根に手を伸ばす。
俺はなんと言われるかわからなくて、じっと感想を待った。
紫ノくんの口に、俺の作った料理が入る。
紫ノくんは無言でご飯をかき込んだ。俺にとっては手に汗握る光景だった。どうだ、どうなんだ。
「……美味しい」
「ほんと!?」
俺は前のめりに聞く。紫ノくんはまた豚バラ大根を箸でつついて、頷いた。
「美味しいよ。自分で作ったのより美味しい」
「いや、それは褒めすぎだよ」
「褒めすぎてないよ」
そうはっきり言ってくれるから。俺ははにかんだ。
「それは良かった」
俺は自分の作った料理に手を伸ばして、確かに、味は大丈夫だなと確認する。調理中もするけど、やっぱり目の前に初めて自分の料理を食べてくれる人がいると、緊張するものだ。
「紫ノくん、中学生の頃、図書委員だったんだよね」
「うん」
「なんの仕事してたの?」
緊張を誤魔化すため、話題を出したら、紫ノくんは必ず口の物を全部飲み込んでから話をする。上品だなと思った。俺、誰かとご飯食べてる時、ちゃんと口の中空にしてるかな。
「教室の図書の管理と図書室の本の貸し、返却受付とか、新刊何を入れるか司書の先生と相談したりしてた」
「え、すご、新刊にも口出せるの?」
「俺は司書の先生と仲良かったから、いつの間にか、口出してた」
「へえ……」
俺はうんうん頷きながらご飯を食べる。本を読む中学生の紫ノくんか。見て見たかったなと思った。
「中学生の時、トランペット吹いてたんでしょ? 高校は?」
「ああ、俺、高校の時生徒会入ってたんだ。だから、部活はしてない」
「そう。生徒会で何してたの?」
「うーん、行事の中心には結構立たされてたかな。体育祭、文化祭、他にも色々してたけど、校則の見直し、とか」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
推し変なんて絶対しない!
toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。
それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。
太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。
➤➤➤
読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。
推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。
【2025/11/15追記】
一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
囲いの中で
すずかけあおい
BL
幼馴染の衛介の作った囲いの中で生きてきた尚紀にとっては、衛介の言うことが普通だった。それは成長して大学生になってもそのままで―――。
〔攻め〕椎名 衛介(しいな えいすけ)20歳 大学生
〔受け〕小井 尚紀(こい なおき)19歳→20歳 大学生
外部サイトでも同作品を投稿しています。
百合豚、男子校に入る。
揺
BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。
母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは――
男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。
この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。
それでも眞辺は決意する。
生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。
立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。
さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。
百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる