変態が紳士~憧れの堅物団長から「罵ってくれ」と迫られています〜

水瀬かずか

文字の大きさ
24 / 73

帰りたい

しおりを挟む


 あれからも、何度か王子に言い寄られている。
 いいかげんに、この人、飽きないのだろうか。ずっと話は通じないし、ノリノリで高らかと自分の素晴らしさを垂れ流しているので、もはや下手な演劇を見ている気分にもなりかけているが、相変わらずきもちわるいし、向こうも向こうで、私に話が通じないと感じているのか、たまにイラッとしている様子がある。
 相手は王子なので、不穏な空気は避けたい。でもこっちもイラついているから、王子に気付かれないよう、こっそりと嫌味を混ぜて返してしまう。また団長に怒られそうだと思うものの、どうせ言葉を返すのなら、王子には気付かれなくても、ちょっとした嫌味ぐらい言わせて欲しい。

 今日もまた団長に助け出されたりなんかしつつなんとかやり過ごしたのだけれど、今日は本当に最悪だった。
 王子に腕をつかまれて、最高にきもちわるかったのだから。ふりほどこうとしたけれど、思ったより王子の手の力は強く、離れることができなかった。
 その時に団長が来て、ようやく解放されたのだけれど。そのせいでまた団長に小言をいただいた。
 王子のせいで私が叱られるとか納得いかない。いい迷惑だ。
 私だって好きで王子に遭遇してるわけじゃない。私に言ったって仕方がないと思うのだけれど、団長はもう少し上手く距離を取れという。
 私だって、取りたいです。
 顔には出さないようにしているけれど、ちょっと疲れていた。
 最近、王妃様からの呼び出しも多い。そして団長は相変わらず変態だ。
 そして帰る家は、団長の屋敷である。
 私の平穏がどこにもなかった。

 騎士団と魔術師団に行ってるときはまだましかな……と、思いかけて、いや、どちらも脳筋と陰険との間に譲れぬ戦いが勃発するので、そう平和でもなかった。王妃宮の要求もわかるけど、軍務の方でもそうホイホイと融通きかせられるわけがないのはわかるので、挟まれる方はつらいのだ。
 早く帰りたい……。
 足早に家路についた。




 帰りたかった家は、イマジナリーホームである。
 どれだけ帰りたいと思っても、頭の中にしかない安らぎのおうちは、私を出迎えてはくれなかった。

 そして帰ってきた家は団長のお屋敷だ。気が重い。といっても使用人の皆さんは話しやすい方ばかりだ。住み心地はすこぶるいい。王宮の宿舎より部屋は綺麗だし広いし設備は比べものにならないし、食事もおいしい。
 ただ、家には、団長がいるのよね。今はまだいないけど、そのうち帰ってくる。
 朝晩、時間が合えば団長と食事を共にしているし、部屋から出ると顔を合わせることもある。
 不本意な注意をされた後だと、なんとも居づらい。顔を合わせると、どれだけ取り繕っていても私が不本意なのがバレるのがいたたまれない。隠したい感情が筒抜けなのは、互いによくない。つらい。

 とりあえず、意識的になにも考えないようにして乗り切ることを決意する。私だって別に団長を責めたいわけじゃないから。
 感情剥き出しの自分を知られるのは本意じゃない。それが苛立ちだったり怒りだったり負の感情だったら尚更。自分のこうありたいって姿を台無しにされるのは、私も団長も、互いに悲しいことだ。
 今日は、別々の食事にしてもらおうかな……。
 団長が帰るのが遅いときは、よくそうしてもらっている。部屋で取ることも少なくない。
 そうしてもらおう!
 決意して相談に向かったところで、団長に遭遇してしまった。

「……おかえりなさい」
「ああ、ただいま。君に出迎えてもらえるとは、うれしいね」

 いえ、出迎えたわけではないです。

 私の計画も虚しく、逃げようとした私の手を取った彼はにっこり笑って私を食事に誘った。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...