51 / 73
結末2
しおりを挟む「オルティス! 貴様がこのことを仕組んだのか?! くだらぬでっち上げで、王妃の生家である東部を陥れる気か!!」
再び足音がして叫び声が聞こえた。第四王子だ。
どうやら副団長が指示した通り、第四王子とオターニョ伯、その他数人の関係者がここに呼び出され、無事拘束がされたらしい。その中にはあの女官もいる。
団長の腕の中から辺りを見回すと、全員が集合しているのが見えた。
王子が喚くので、私も正しく訂正をさせてもらう。
「いえ、こちらはそちらにいらっしゃる宰相補佐のオターニョ伯と、殿下の護衛である近衛騎士のファロナダ様から、隣国への密売分であるとうかがっております。お怒りになるようでしたら、国を裏切っているオターニョ伯と近衛騎士殿へ向けるのがよろしいかと存じます。……まさかとは存じますが、殿下は反逆者を庇われるのですか……?」
「……っ」
突然の事態に思考が追いついていない王子が、わなわなと震えている。なるほど、やはり王子もこの件は知っているらしい。
が、誰がどう関わっているかなど、私が暴くことではない。直接私を陥れようとしたこの四人がとりあえず処分されるならそれでいい。お互い下っ端のつらいところですね、と、心の中で、同情心の欠片もない同情を向ける。この密輸の罪が王妃や東部をおさめる伯爵まで届くかは微妙かもしれないが、多少なり釘を刺すことはできるだろう。
まあ、密輸をひとまず根絶し、王妃と伯爵の力を一時的にでもそげれば上出来といったところか。
諦めきれない王子が一矢報いるかのように声を張り上げた。
「お前は、私の護衛と恋仲だろう! 見捨てるのか!」
そんな半月前後顔を合わせた程度で、恋仲認定はどうかと思う。
「あの、本人の前では、大変言いづらいのですが……、彼は、私の好みではないのです」
「……は?」
お互い様だとは思うけどね。
「せめて、婚約者の団長よりいい男でないと意味がないかと……」
困った私の声に王子はとうとう黙った。件の近衛の方は、目を向けないようにした。
団長が私をぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
この変態に勝るのは簡単そうに思えるのに、世の中は不思議に満ちている。
間もなくして、この場の検分にあたりは更に慌ただしくなったけれど、私は魔術騎士団の分所に戻ることになった。
「……よく、あの場所がわかりましたね」
私がどこでなにをするつもりか、副団長を呼び出したときには伝えられなかったのに。やってきた団長は状況すら把握できているように見えた。
「……君が持っていた監視用の魔術具は、あの近衛騎士から渡された物だけではなかったということだ」
団長から渡されていた魔術具があるということ?
何かあっただろうかと考え込んでいると、トン、と胸元を弾かれた。そこには団長からプレゼントされた万年筆がはいっているポケットが。
さすが、あの近衛とはやることの格が違う。
全く魔術具とは気付かなかった。万年筆というだけで高級なのに、更に一見してどころか、今あらためて見ても魔術具とは気付かせない細工。いや、ホント、どこにそんな機能を埋め込んでいるの? 値段を聞くのが恐ろしすぎる代物だ。捨てたくても、捨てられそうにない。最低だ。
「……頼むから捨てないでくれ。せめて、君の身の安全が確立されるまでは。それに一定以上離れると関知できないから、安心してくれ」
それは、ほんとうに、安心要素なの……?
知りたくなかった。そしたら気にせず持っていられたのに。
いや、でも、知らずに監視されるのもいやだな……。
状況考えると、追跡と盗聴と両方入っていることない?
じとりと団長を見ると、「頼む」と、もう一度懇願された。
しばらく考えて、まあ、仕事中に持ってるだけなら問題ないということで納得することにした。
ついでに、ごまかさずに自己申告したので怒らないであげることにした。ここで激情にまかせて怒ろう物なら、変態が降臨しそうだ。
「君の心の広さには、時々心配になる」
自分で頼んだ癖に、ひどい言い草である。私だって、普通ならこんな事了承しない。ただ相手が団長だから不都合がないだけなのに。
仕事中の会話は誰に聞かれてもいいように話せばいいだけだし、仕事中に場所を特定されても、別に困ることもない。むしろ、団長から用事があるのなら便利で良いと思う。
更には普段から考えていることが筒抜けなのだから、それに比べれば会話ぐらい聞かれても今更……という感情しかわかない。
私がそんなことを考えていると、「そうか」と団長が苦笑した。
思うんだけれども、盗聴よりも、普段から考え読んでることを思い知らせるがごとく思考に返事するのをやめるのが先じゃないかと。
団長が、はは……と苦笑した。
だから、それですよ、それ。
17
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
【全16話+後日談5話:日月水金20:00更新】
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます
りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。
初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。
それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。
時はアンバー女王の時代。
アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。
どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。
なぜなら、ローズウッドだけが
自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。
ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。
アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。
なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。
ローズウッドは、現在14才。
誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。
ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。
ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。
その石はストーン国からしか採れない。
そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。
しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。
しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。
そして。
異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。
ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。
ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる