裏信長記 (少しぐらい歴史に強くたって現実は厳しいんです)

ろくさん

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六十一話 最後の旅の始まり(その二)

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「爺ちゃん、何だよ突然?…と、当然、と、と、友達の一人や二人、い、いるに、決まってルダロ…」


しどろもどろの智の返答をニヤニヤとゆっくりと頷きながらも何も応えない智の爺さま才蔵である。


「な、な、何だよ爺ちゃん、ほ、本当だぞ…」


「誰も嘘だなどと言っておらんじゃろ」


ニヤっと細い目を更に細めた才蔵は、それまでとは明らかに違う雰囲気を醸し出したあと、ゆっくりとまるで物語を読み上げるように智に語り始めるのだった。









「ところで智くんや、いつになったら今回の旅をすることになった目的を教えてくれるんだね?」


「ああ、すまんすまん、あまりの混雑ぶりにすっかり頭からな抜け落ちていた」


混み合う車両のなかようやくのこと指定席にまで辿り着き一息ついた間もなく重治は、当初から疑問となっている話題をくちにした。


「…まあ、目的と言うか何というか‥、始まりは今年の冬休みに親父の実家に里帰りを付き合った事からなんだ」


「ほう、実家ねぇ‥」


重治は、以前、親友と呼べる程の友人関係になっている智から聞いていたその場所を頭に浮かべていた。
その場所は、北陸地方にあるF県、頭文字など使う必要など無い戦国時代、栄華を誇った朝倉一族ゆかりの福井県である。そう、重治が過去へのトリップを成功?させた地でもある。


「あのなぁ、重治。ほんとに胡散臭な、どこからどう見てもうそくさい話しではあるんだが、‥実は俺のご先祖さまは、どうやら織田家、それも織田信長ゆかりの家臣だったらしい…」


「…」

『ドクン』と重治の心臓が大きく跳ねた。
その心臓の音は、本来なら決して他人に聞こえ筈のない音にも関わらず、今、すぐ隣の席に座る、智にさえ届くのではないかと思われる程の大きな音に感じられた。

智のその言葉は、重治に大きな驚きと、どこか『ああ、やっぱりな』そんな感慨を重治に湧き上がらせていた。

高校で初めて出会ったにも関わらず、どちらかと言えば人見知りとさえ言える重治の親友の地位へと早々と登りつめた、その智の声やその容姿は、重治が戦国時代に絶対的信頼を置いた人物、伊蔵の面影を彷彿とさせていたのである。



「それで?」


重治は、焦る気持ちを抑えつつも次の智の言葉を催促せずにはいられなかった。


「…うん、そこからが正月の話、本題へと続くんだが」


『グゥ~』


その大きな雑音は、重治の極度に高まる緊張を一気に解消させる強力なパワーを秘めていた。


「は、は、は、は♪‥いや、すまんすまん」


智は、苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。

早朝、名古屋駅を出発することになった若い二人が、早起きをしてまで朝食を食べることなどあろう筈はない。
それは当然、駅にさえ着けば、朝食=キヨスクの存在が頭に浮かんでいることは容易に想像できた。


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