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17 食料品店
しおりを挟む時刻は午後六時ごろ、すでに太陽は西の彼方に沈みつつあり、街には魔法具の一種である外灯の明かりが灯っていた。その暗くなった道を馬車に揺られながら、リズはとあることを思い出した。
(あ……今日の夕飯……)
白米自体は昨日炊いた残りが、まだ収納魔法具のなかに残っている。問題はおかずだった。昨日の時点では学園の帰りに買おうと思っていて、それで今日いろいろとどたばたしていたので、すっかり忘れていたのだ。
リズは馬車にある小窓をノックしてから開けると、馬の手綱を握っている御者のホースへと声をかける。
「あの……」
「どうかしましたか?」
ホースは前を向いて手綱を操りながら、器用にリズと会話する。普段からスクエアを始めとしたヴォクス家の者とこのように会話しているから、慣れているのだろう。
「近くの食料品店に寄ってもらえることってできますか?」
「構いませんが……」
「今晩のおかずを買いに行きたいんです。夕方以降だと値引きしてますから」
「ねびき……?」
「とにかくお願いします」
「かしこまりました」
小窓を閉めながら、リズは少しの恥ずかしさを覚えてしまっていた。いつもホースが乗せている貴族ならば、このような頼みごとはまずしないし、夕方以降の値引き品を狙うことなどありえないと思ったからだ。
そんな庶民的な自分の習慣が、貴族の使用人を戸惑わせてしまったことを恥ずかしく思ってしまったのだった。
(は、恥ずかしー)
思わず火照った顔を隠すように、手で顔を覆う。穴があったら入りたい気持ちだった。
(……やっぱり、貴族はそういう場所、行かないよね……)
また同時に、貴族ってやっぱりすごいとも思ってしまう。お金に困ることもなく、大きな屋敷に住み、使用人を何人も雇っている。
(…………、……でも、わたしは……)
転生前の人生のときから、金持ちに憧れたことはある。お金をいっぱい持つことができれば、食費や光熱費などを気にかけることもなく、もっと自由に好きなものを好きなだけ買えるのだと。
しかし、それでも……スクエアのことを好きになることはできなかった。少なくとも現時点では。何人もの女性に浮気して、婚約者を片っ端から作っていくような人には、好意を持つことは難しかった。
がらがらと走っていた馬車が停止する。どうやら食料品店に到着したらしく、少ししてドアが開いて、ホースが声をかけてきた。
「到着いたしました」
「あ、ありがとうございます」
「お手をどうぞ」
「あ、どうも……」
差し出された手を取って、リズは外に出る。貴族家の馬車がわざわざ食料品店に立ち寄ったからだろう、通行人の何人かは物珍しそうにリズ達のことを見ていた。
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