21 / 98
21 自分自身に言い訳を
しおりを挟む呆然としてスクエアの去っていったほうを眺めていると、リズのそばに馬車が駆け寄ってきて停止する。ホースが乗る馬車だった。
「お待たせいたしました、リーゼロッテ様。どうぞ、こちらへ」
御者台から降りて、ホースが馬車のドアを開ける。そんな彼をリズは見るともなしに見つめていた。
……もう少し若かったら……。
ホースを見つめて、リズはついそう思ってしまっていた。ホースの見た目は壮年であり、リズとは一回りも二回りも年が離れている。
確かに彼は真面目すぎるきらいはあるが、もし自分と同じくらい若ければ……と。さすがに自分の父親と同じくらいの年齢の人と……親子くらい年が離れている人と、恋愛関係になるのは難しかった。
(もし仮にそうなったとしても、ホースさんとは買い物には行きたくないけど……はっ……!?)
思ったあとに、リズは首をぶんぶんと振った。なんでそんなことを思ったのだろうかと、自分を疑ってしまう。そんな関係になることも、そんな感情を抱くことも、あるはずがないのに。
「リーゼロッテ様? いかがなされましたか?」
はたから見れば、リズのいまの様子は奇異に映ったのだろう、ホースは不思議そうな、心配そうな顔と声で聞いてきた。リズは慌てて答える。
「い、いえ、なんでもありません。いま乗りますね」
ドアまで続く階段状の足場を上って、リズはそのなかへと入っていく。まだ少し不思議そうな顔をしながらもホースはドアを閉めて……そして馬車は走り出した。今度こそリズの自宅アパートへと向かって……。
…………。
リズの自宅アパートに到着して、馬車から降りた彼女にホースが言ってきた。
「部屋までお送りします」
「だ、大丈夫ですっ、もうすぐそこですからっ。一人で帰れますっ」
「そうですか?」
「そうなんですっ。じゃ、さよならっ」
「ではまた明日。朝にお迎えにあがります」
彼に背中を向けて部屋に行こうとしていたリズが、まるでバレエのターンでもするかのように、くるりと一回転するようにして再び彼へと向く。
「む、迎えに来なくて大丈夫ですからっ」
「しかし、スクエア様の婚約者様であるリーゼロッテ様を学園まで送り届けなくては……」
「だから大丈夫ですっ、登校くらい一人でできますっ。とにかく迎えには来なくていいですからっ」
「……かしこまりました。それでは私は失礼致します」
リズに強く拒否されたからだろう、ホースは素直に引き下がって、馬車に乗るとヴォクス家へと帰っていった。最後に見たその顔が少し寂しそうに、心底残念そうに見えてしまって、リズは、
(……ちょっと強く言いすぎたかな……)
そう少し後悔しそうになる。けれどすぐに思い直して首をぶんぶんと振った。
「い、言いすぎてなんかないしっ。朝にお迎えに来られたら困るのはほんとだしっ。わたしなんかが馬車で学園に行ったら目立ちまくって恥ずかしすぎるしっ」
べつに誰も聞いているわけでもないのに、リズは声に出してそんなことを言ってしまう。まるで自分自身に言い訳をしているようだった。
「と、とにかく、晩ご飯食べて、お風呂入って、明日の準備して……あ、あと寝る前に予習と復習もしなくちゃ……」
そんな一人言をつぶやきながら、リズはアパートの自室へと帰宅していくのだった。
○
11
あなたにおすすめの小説
【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで
禅
恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」
男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。
ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。
それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。
クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。
そんなルドに振り回されるクリス。
こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。
※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます
※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません
※一部変更&数話追加してます(11/24現在)
※※小説家になろうで完結まで掲載
改稿して投稿していきます
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます
さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。
生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。
「君の草は、人を救う力を持っている」
そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。
不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。
華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、
薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。
町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる